人とモノ・コトとの関係を客観的に捉え、人の認知や意思決定に基づいて、よりよい体験を設計するための方法を研究しています。
- 人間中心設計
- 視線計測・認知分析
- 意思決定過程
- 興味・意図推定
- 適応型インタラクション
研究紹介
ヒューマンセンタードデザイン研究室では、人が製品、情報、空間、サービスと関わるときに生じる認知や行動を捉え、その理解を人間中心の設計へ結び付けることを目指しています。主観的な印象だけでは把握しにくい体験の過程を、視線、行動、課題達成時間などの客観的な指標と、利用者自身による評価を組み合わせて分析します。
研究の対象は、完成した製品やコンテンツの評価に限りません。人が情報を探索し、比較し、関心を持ち、判断する過程を明らかにすることで、利用者の状態や意図に応じて情報や操作方法を変化させるインタフェースの設計にも取り組んでいます。評価、分析、設計を相互に結び付けることにより、人間中心設計を実践するための知見と方法論を構築します。
人とものとの関係を解明する
人がものを美しい、わかりやすい、使いやすいと感じるとき、デザインのどのような要素が作用し、人がどのように認知し、行動するのかを明らかにする必要があります。本研究室では、直感や経験だけに依存せず、人とものとの相互作用を生理的・認知的・行動的な側面から分析することで、デザインに活用できる原則を導き出すことを目指しています。
評価には質問紙やインタビューなどの主観評価も用いますが、課題の成否、達成時間、操作行動、眼球運動などの客観的指標を重視しています。複数の指標を関連付けて検討することにより、利用者が言葉では十分に説明できない迷いや関心の変化を含め、体験が形成される過程を捉えます。
デザイン方法論を確立する
実際のデザイン業務では、制作時間やコストが限られる中で、一定の品質を保ちながら効率的に設計を進めることが求められます。そのためには、個人の経験や感覚に依存するだけでなく、利用者の特性と利用状況を捉え、調査、設計、評価、改善をつなぐ方法論が必要です。
本研究室では、ユーザエクスペリエンス、ユーザビリティ、アクセシビリティを人間中心設計の観点から捉え、評価結果を設計へ還元するためのプロセスと方法を研究しています。評価手法そのものの改善に加え、評価によって得られた知見を、情報構造、画面構成、インタラクション、コンテンツ表現の設計指針へ展開することを重視しています。
人間中心設計の実現のために
人間中心設計を実現するには、利用者が何を見て、どこで迷い、どの情報を手掛かりに行動したのかを、利用の過程に沿って理解する必要があります。アイトラッキングは、眼球運動を計測し、利用者が注視した対象や視線の移動を把握する技術です。本研究室では、アイトラッキングを単に視線の位置を記録する装置としてではなく、人の認知や意思決定の過程を分析し、設計を支えるための基盤技術として位置付けています。
視線データを操作行動、課題成績、発話、主観評価などと組み合わせることで、結果だけでは把握しにくい利用者の探索や判断の過程を検討します。そこから得られた知見を、製品、Web、情報提示システム、XRなどの評価と改善に活用し、さらに利用者の状態に応じたインタラクションの設計へつなげます。
視線計測研究の展開
本研究室では、視線計測を人間中心設計のための評価手段として用いるとともに、人の認知、意思決定、興味、意図を理解するための研究へ展開しています。得られた理解を、利用者に適した情報提示やインタラクションの設計へ結び付けることを目指しています。
アイトラッキングを用いたユーザビリティ評価
利用者がどこを見ながら操作し、必要な情報をどのように探し、どこで迷ったのかを視線から分析します。操作結果や所要時間だけでは説明できない行動の過程を可視化し、問題の原因を特定することで、より効率的で再現性のあるユーザビリティ評価方法の確立を目指しています。
「視線を用いた使いやすさの検討」研究紹介動画(ヒューマンセンタードデザイン研究室)【約1分10秒】
関連する研究課題として、「アイカメラを用いた注視物解析による効率的ユーザビリティ評価方法の研究」および「視対象の情報構造に基づく眼球運動分析方法の開発」に取り組みました。

アイトラッキングを用いた認知・意思決定過程の分析
人は、目的を達成するまでに情報を探索し、候補を比較し、必要な情報を選択しながら意思決定を行います。本研究室では、視線の停留や移動、瞳孔、瞬目などの眼球運動に関する情報を手掛かりとして、体験中の認知と意思決定の過程を分析しています。
とりわけ、利用者がどの対象に関心を向け、その関心がどのように行動へ表れるのかを検討しています。視線と行動の関係を捉えることにより、人の興味に配慮したコンテンツデザインや、利用者の状態を考慮した情報提示を支える知見の獲得を目指します。

アイトラッキングを活用した適応型インタフェース
視線計測から得られる情報は、利用後の評価だけでなく、利用中の支援にも活用できます。本研究室では、利用者が注目している対象や、探索、比較、選択といった行動の状況を捉え、提示する情報や操作方法を適応的に変化させるインタフェース・システムを研究しています。
一律に同じ情報を提示するのではなく、利用者の関心や意図、行動の文脈に応じて、必要な情報を適切な時点と表現で提供することを目指します。こうした適応型情報提示と適応型インタラクションについて、システムの有効性だけでなく、利用者がどのように受け止め、どのような体験を形成するのかというUXの観点から評価します。
研究紹介動画「眼球運動から人の興味を把握し情報をデザインする」(ヒューマンセンタードデザイン研究室)【約3分30秒】
マルチモーダルな意図推定
人の関心や意図は、視線だけに表れるとは限りません。対象を見る行動に加え、頭部運動、手の動作、姿勢や操作など、複数の行動情報を組み合わせることで、利用者の状態をより的確に捉えられる可能性があります。
本研究室では、視線を中心としながら複数の情報を統合し、興味や意図を推定する方法を研究しています。推定結果を適応型UIや情報提示へ活用し、利用者の行動を妨げずに支援するインタラクションの設計と、そのUX評価に取り組みます。
博物館などにおいて、来場者の行動から関心を捉え、解説コンテンツの提示に活用するシステムを応用事例の一つとして検討しています。
マルチモーダル意図推定に基づく適応型インタラクションの設計とUX評価(科研)

応用事例
視線計測、認知・意思決定過程の分析、興味・意図推定、適応型インタラクションに関する研究成果を、さまざまな場面の評価とシステム設計へ応用しています。以下は研究の中心を個別に分けたものではなく、研究によって得られた方法と知見を検証・活用する対象です。
XR・VR
XR・VR環境では、利用者の身体や視点の動きが体験と密接に関係します。視線計測装置付きのVR用ヘッドセットを用い、コンテンツ体験中の視線や行動を分析する評価システムを開発しています。また、体験中に利用者の状態が変化した箇所を提示し、体験後のインタビューを支援する方法を検討しています。
人間中心設計推進機構の2020年度冬季HCD研究発表会において、学部4年の鈴木君が「眼球運動に基づくVRコンテンツ評価支援ツールの提案」というタイトルで成果を発表し、優秀講演賞を受賞しました。

博物館展示
展示を鑑賞する来場者は、関心を持つ対象や必要とする解説がそれぞれ異なります。展示空間における視線、頭部運動、手の動作などを捉え、来場者の興味や意図に応じた解説コンテンツを提示する仕組みを検討しています。博物館展示は、実空間とデジタル情報を結び付ける適応型情報提示の応用事例として位置付けています。
情報提示システム
利用者の関心や行動の文脈に応じて、情報の内容、詳細度、提示時点、提示方法を変化させるシステムを検討しています。情報を増やすだけではなく、必要な情報を必要な場面で提示し、利用者自身の探索や判断を尊重することを重視しています。
Web
Webページにおける情報探索や閲覧行動を視線から分析し、情報構造、コンテンツ配置、操作要素のわかりやすさを評価します。変化の速いWeb開発の現場でも活用可能な評価方法と、分析結果を設計改善へつなげる方法を検討しています。
これまでの研究テーマ
本研究室では、人間中心設計の観点から、視線計測を中心とする現在の研究へつながるさまざまなテーマに取り組んできました。以下の研究成果や知見は、現在の評価・分析・設計方法の基盤となっています。
携帯端末のユーザインタフェース
スマートフォンなどの携帯端末を対象に、限られた画面と操作環境におけるユーザインタフェースについて研究しました。
医療現場における利用者適応型多言語間コミュニケーション支援のための基盤技術の研究開発(戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE))
医療機関において外国人患者と医療従事者のコミュニケーションを支援するための技術の研究開発に取り組み、仕様設計、ユーザビリティの評価と改善を担当しました。
(社会活動)組込み機器のユーザビリティ(EIS-Cluster)(2006年度実施)
情報のユニバーサルデザイン
高齢者や障害者に限らず、多様な利用者がさまざまな機器を通して情報を入手し、サービスを利用できるようにするための情報設計に取り組みました。
Webアクセシビリティ
誰にでも情報が伝わるためには、さまざまなブラウザや機器で情報を利用できるように設計する必要があります。HTML5とJavaScriptを利用したRIAを含むWebアクセシビリティについて研究しました。
VPA(Virtual Personal Assistant)とVUI
VPAを通してWebやアプリケーションの情報を利用する方法、音声対話と画面を併用する方法など、音声ユーザインタフェースの設計に取り組みました。
Webデザインチェックリスト
わかりやすく、ストレスの少ないWebページを実現するためのチェックリストを作成しました。
(社会活動)体験のデザイン(2014年度実施)
和歌山市民を対象に、ユーザエクスペリエンスデザインをわかりやすく解説しました。
(社会活動)ユニバーサルデザインを考慮したWEBページの構築技法研究交流会(2004年度実施)
(社会活動)商用現場で用いるブログ等CMS研究会(2005年度実施)
企業プロジェクト
共同研究・受託研究を紹介しているページにあるように、これまで多数の企業とのプロジェクトを実施してきました。共同研究以外にも、研究グループをはじめ、クリエデザインプロジェクトの学生を交えた提案などもご相談いただければ対応可能です。企業・団体の皆さまからの研究・技術・デザインに関するご相談については、「企業・団体の方へ」をご覧ください。
目視検査者の支援
製品の外観品質のチェックを行う目視検査者の訓練システムを開発しました.本研究は共同研究の成果によるものです。
ヒューマンインタフェースシンポジウム2017(6Td3-7)
平成30年度人間工学会関西支部大会(B3-1)
において成果発表を行いました.
また、目視検査者の行動を把握して支援を行うシステムについて
平成30年度人間工学会関西支部大会(B3-2)
において成果発表を行いました.
研究紹介のイベント
学会発表以外に,下記のイベントで研究紹介を行っています.興味のある方はお気軽にご参加ください.
オープンキャンパス
当研究室では毎年オープンキャンパス時に教育・研究の紹介をしています.興味のある方はぜひご来場ください.
配属希望の方へ
本学学生の方へのご案内(領域・メジャー配属,研究室配属 [学内限定])
