Prof. Toshio IRINO
「音の世界」:これは、私が担当していた教養科目の講義名です。しかし、単
なる講義名としてだけではなく、広がりのあるイメージを持って名付けました。
聞こえない音としての超音波や地震から、常に囲まれている身近な音である音
声・音楽・鳴声・環境音・騒音・・・。
このような音を聞く(知覚する)ためには、人間の聴覚系にどのような機能が
備わっていれば良いのでしょうか? さらに、なぜそのような機能が遺伝ある
いは学習により獲得されてきたのでしょうか。この解明のために、人間の聴覚
機能を数理的なモデルとして捉え、コンピュータ上で同じ機能が実現できるレ
ベルの理解を得るという「計算論アプローチ」を取って、研究を進めています。
もちろん、基本的な生理学・心理学・脳計測等の実験データに基づかない、う
わべだけの物真似では理解は進みません。(例えば、物理学では、理論と実験
が車の両輪となってはじめて理解が進んだのです。)そこで、聴覚心理実験や
fMRI装置を用いたイメージング実験を通して、人間の聴覚機能を観測すること
も行っています。さらに、世の中に役立つ技術として、得られた知見を工学的
にたとえばソフトウェアとして実現し、人に優しい「音のデザイン」を可能と
する基盤を提供することも行っています。
これらの実践を通して、(「世界のケンブリッジ」とはなれずとも)「 音の世界に和歌山あり 」と称されるように活動を進め
ています。
- オフィースアワー: 火曜日3コマ目 (A712かS606) : 事前e-mail希望
- 担当講義科目
- メディア情報数理(前期)
- 音響設計論(前期)
- メディアデザインセミナー(3年次対象、年間・分担)-->
- システム工学入門セミナー(前期・分担)
- システム工学講究 (大ゼミ、大学院生対象・年間)
- システム工学研究 + 卒論・研究指導 (小ゼミ、研究室内・年間)
- 講義資料ページ(学内のみ)
- 卒論 / 修論 / D論
- 2024年度卒論テーマ案 (学内限定)
- テーマ例:
- 聴覚フィルタの周波数特性と圧縮特性の同時適合
→ 40才を過ぎると誰でも高い周波数の音が聞こえなくなってきます。
通常、難聴とは呼びませんが、これは事実!
その特性を正確に把握して、
高齢者にもわけ隔てなく豊かな音環境を提供するための研究です。
「音のユニバーサルデザイン/インクルーシブデザイン」を推進します。
- どれくらい劣化したら音声と聞こえない?
→ 難聴の人の音の聞こえを健聴者が体験できる「模擬難聴」実現を目
指した研究。高齢者、難聴者をも含めた「音のユニバーサルデザイン」の
ための基礎データとなります。
- 巨人と赤ちゃんのおしゃべりは同じ言葉に聞こえる?
→ 音声から、声道寸法情報(話し手の体の大きさの情報)と声道形状情
報(どの母音かの情報)の分離抽出を行う聴覚機能の解明。人間の特性を
把握するための心理学的なアプローチ。
- 対話における口振りや身振りの役割
→対話は音声だけで行わず、身振りも伴います。より良い対話のために、
口振りと身振りの協調を調べます。
- 成果発表: 国内はもとより、世界トップレベルの国際会議で、学生自ら発表しています。がんばれば出せます!
- 研究の一部の内容は: 研究資料ページ(学内限定)
- トピック
- 2025年3月14日 最終講義を行います。 [情報・資料]
- 2024年8月7日、「高齢者は怒りと喜びの区別が難しい?」音声感情知覚に関して年齢や聴力との関係に迫る意外な知見の論文がScientific Reports に掲載されました。 [ダイジェスト]
- 2023年11月23日、聴覚研究会で招待講演を行いました。
"音声情報抽出に有効な聴覚表現: 理論・測定・推定・応用,"
- 共著の著書、"
聴覚 (音響学講座5)" (古川編著,
コロナ社, 東京 , 2021.)が出版されました。第2章を分担しています。
-
毎日放送 News ミント【特集】「限りなく本人に近い『AI音声』 進化する"合成音声"技術が難病患者を手助け」の取材を受けました。(2020年07月02日(木)放送 --> Youtube)
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米国音響学会(ASA) Spring meeting 2014 (5-9 May 2014),
Special session:"Cambridge Contributions to Auditory Science: Moore-Patterson Legacy" において招待講演を行いました。
- 米国音響学会(Acoustical Society of America,
ASA )
から栄誉あるフェローの称号を
授与されました(2010/11/17授与式)。このASAは、
1929年に創設された世界的に最も実績のある音響学の学会です。
[ JASA page ]
*
- 共著の著書、"
聴覚モデル " (森,香田編著,
コロナ社, 東京 , 2011.)が出版されました。第4章、第7章を分担しています。
- 研究活動
- 研究紹介(一部)
- 模擬難聴システムWHIS (Wadai Hearing Impairment Simulator)
- ソフトウェア[Githubで公開]
- 聴覚フィルタとその測定法
- 入野俊夫,"はじめての聴覚フィルタ,"
日本音響学会誌,
66巻10号, pp. 506-512, Oct. 2010.
[ PDF ]
- デモで利用する
ソフトウェアはGitHubから (2020-, MATLAB/Octave両対応版)
- 入野俊夫,
"はじめての聴覚フィルタ ー 心理物理実験デモで学ぶ聴覚フィルタ特性 ー,"
日本音響学会:秋季研究発表会講演論文集, pp.1347 - 1348,
関西大学, 大阪, 2010年9月14日~16日 (発表日 9月16日).
[ PDF ]
- Pythonでも学習可能に: Pythonで学ぶはじめての聴覚フィルタ(やさしい?解説)by 山本克彦
- 科学&ものづくり
- 聴覚メディア研究室:作品ページ
- 簡易音圧確認治具: ChomeJig (ちょめじぐ)」
- 小型スピーカー: ChomeCube (ちょめキューブ)」「ChomeBar(ちょめばー)」
- その他 : 触覚バーチャルリアリティのデモ機/うなづきセンサー/EMObar
Last modified: 2025/03/12 12:39, by IRINO T.