- 論文の概要
- 災害対策に地理空間情報の利活用は欠かせない. 「逃げ地図」は,「時間避難距離地図」を正式名称とする. 逃げ地図の制作イベントでは,参加者らが色ペンなどを用いて地図上の道路を塗り分けることで, 地域住民が避難までに要する時間を,わかりやすく楽しく可視化する. 逃げ地図制作の現場では,汎用的な地理実用データの創出よりも, 実践過程で形成される参加者間のリスク・コミュニケーションを重要視している. しかし,紙地図による制作手法では,情報の信頼性や統一性が確保されない点, 局所的な防災ノウハウが地域全体に拡散されにくい点が課題として考えられる. 「逃げ」視点から具体的な構想を巡らせる逃げ地図制作は, 地域住民に潜在する防災志向な情報を効率よく引き出せる可能性がある. こうして得られた局所的情報は,地域住民以外の人々を含む多人数で共有されることで, ノウハウの循環や行政の施行を含む多くの応用可能性が考えられる. そこで我々は,デジタル上の逃げ地図作成を目的としたWebシステム「逃げシルベ」を開発した. 従来の逃げ地図が,1つの紙地図を多人数で囲いながら制作を実施することに対し, 本研究では,PC利用者を対象とした個人向けの逃げ地図の利活用を目指す. Webを利用できる誰もが,遠隔で情報の提供やデータの整備に努めることで, デジタル上の新しい逃げ地図制作の在り方を検討する. 本稿では,アナログ手法とデジタル手法の双方の制作実験から得られた考察から, デジタル上の逃げ地図に期待される設計要件についてまとめる.
- 提案手法の概要
- 発表時の様子
- 受賞時の様子
支部大会奨励賞:谷岡 遼太さん(大学院博士後期2年)
論文名:「避難時間を可視化する防災マップ作成Webシステムの開発」
学会名等:2017年度 情報処理学会関西支部 支部大会
2017年9月26日