- 論文の概要
- 観光庁が発表した,旅行・観光産業の経済効果に関する調査研究によると,2018年の日本人国内延べ旅行者数は約5億6200万人であり,毎年多くの人が日本を観光していることが分かる. また,日本人だけではなく外国からも多くの人が,日本に観光に訪れている.2018年に日本を訪れた外国人観光客は約3200万人であり,前年と比較すると8.7%増加している. このように,日本は観光業が盛んな国ではあるが,一方で地震や台風などの自然災害が発生しやすい国という側面も持っている. 観光客が観光中に被災した場合,土地勘がなく避難すべき場所がわからない,その土地の災害特性の知識が乏しい,などの要因から被害が大きくなる可能性が高い. しかし,観光客の防災意識を調査した研究から,観光前に防災情報を自発的に調べ,災害に備えている人が少ないことが分かる. 防災に対する関心が低い観光客が,防災支援システムを能動的に利用し,防災情報を得る可能性は低いと考えられる. そこで我々は先行研究として,観光客を対象としたWeb閲覧時に防災情報にさらすシステム「Di-sarasu」を開発し,評価を行った. 「防災情報にさらす」とは,ユーザが防災情報を得るための行動をせずとも,防災情報を受動的に取得できる状態を指す. 「Di-sarasu」はユーザがWebページ上で観光情報を閲覧する際に,手軽に防災情報まで一緒に閲覧することができるシステムである. ユーザが観光に行く準備として,観光情報を調べる際に,観光地の最寄りの避難場所の名前や位置などの防災情報を観光情報に付加することで,ユーザに防災情報を提供する. 受動的に防災情報を取得させることで,自発的に防災情報を調べない人にも防災情報を提供することを目的としたシステムである. 本システムをWebブラウザに組み込む,という能動的な行動が最初に必要ではあるが,それ以降は受動的に防災情報を取得することができる. 「Di-sarasu」を用いた評価実験を行った結果,本システムはユーザのWebページ閲覧を妨げることなく,ユーザに防災情報を届けられる可能性があることが分かった.しかし,「観光地に行くまで記憶していないと意味がないと思った」といった意見が得られた. そこで我々は,Di-sarasuの新機能として,観光地の場所とそれぞれの観光地の最寄りの避難場所が1つにまとまった観光防災地図を手軽に作成できる機能を開発した.
- 提案手法の概要
- 発表時の様子
- 受賞時の様子
支部大会奨励賞:坂本真輝さん(大学院1年)
論文名:「観光客を対象とした防災情報提示システムにおける観光防災地図作り機能の開発」
学会名等:2019年度 情報処理学会関西支部 支部大会
受賞日:2019年9月23日