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No.14  和歌山における地場産業の実態と将来動向に関する研究会

代表研究者 川端 保至(和歌山大学経済学部教授)
2007年3月発行  A4判/70ページ

 現在我が国の政策課題の1つは地域の活性化である。世界的に活躍する企業が3大都市圏を中心に業績好調で推移する一方で、地方の諸都市では若者の人口減少や少子高齢化などにともなって活力を失っている。
 本研究会は、そのような状況に対して、和歌山県の地場産業である(海南市、海草郡紀美野町を中心にした)「日用家庭用品」産業を取り上げて研究した。研究対象とした理由は、和歌山の伝統的な地場産業である家庭日用品産業の業績がめざましく、地域経済活性化の模範として位置づけられると考えたからである。
 上記地域は江戸時代にはしゅろ棕櫚を使った製品を製造し、明治時代には棕櫚縄やロープ、ほうき箒、たわし束子など東京を中心に全国的に販売網を展開していた。現在はキッチン、トイレタリー、バス用品などさまざまな日用品を扱っている。競争力を維持するために中国等労働力の安価なアジア諸国に製造拠点を拡げている。
 日用家庭用品産業を研究してわかったことは、地方には地方独特の風土や伝統を活かした産業が脈々と根付いているということ、地場産業を通じて地域経済を活性化するためには、地域の風土や生活に根ざした伝統を活かす「創意と工夫」、そしてなによりも地域内での各企業の「競争」(多様性を持った競争)が地域での産業発展の鍵となる、ということであった。
 地域の強みと弱みを認識することが地場産業活性化のスタートとなる。その上で各企業が自社にとって競争上優位に立てる商品は何かを考え、開発していくことによって、各企業の発展を通じて地域の産業ないし地域経済の活性化に貢献できると考える。