背景と目的

室内の家具類は,地震発生時に多くの危険をもたらします.東京消防庁が実施した近年の地震被害調査では,怪我をした人の原因は, 約30~50%の人が家具類の転倒・移動・落下によるものでした.これらから身を守るためには,家具類の転倒・落下・移動防止対策が非常に大切であるとされています.

しかし,地震対策をしなければならない家具類は非常に多く,対策方法も複数存在するため,防災意識が高い人でも十分に対策できていない可能性があります. 地震対策を行っていない家具は,地震発生時に怪我や避難の原因になってしまいます.

しかし,室内の家具を全て対策するには,室内の家具が地震対策をすべきかどうかを調べ,適した地震対策器具を調査・設置する必要があります.

そこで私たちは,360度カメラで室内を撮影し,撮影した画像内に写っている家具を一覧で表示し,その家具の地震対策に関する情報を提示することで,利用者の防災に対する知識不足を 補い,かつ地震対策が手軽になるシステムを開発しています.

システムの概要

本システムは利用者が室内を360度カメラで撮影し,画像から家具や家電などを検出を行い,検出した箇所を防災知識と併せて利用者に提示するシステムです.

図1は本システムの構成です.本システムは,ブラウザ,Webサーバ,画像処理システム,データベースから構成されます. 画像内の地震対策箇所を取得する際,まずブラウザからWebサーバへ画像を送信します(図1(1)).次に画像を受信したWebサーバは,画像処理システムへ画像を送信します(図1(2)). そして画像を受信した画像処理システムは,画像内の地震対策箇所を抽出し,抽出した箇所についての名称と座標をデータベースに保存します(図1(3)).

Webサーバは,データベースから画像内の地震対策箇所の情報および防災情報データの取得を行います(図1(4)).取得を完了すると,ブラウザへデータを送信し,ブラウザ上でリスト表示されます(図1(5)).

システム構成図
図1. システム構成

防災情報

(1) 地震時の挙動・対策優先度

地震対策を行っていない場合の地震時の挙動をイラストと説明文を交えて紹介します.それに加え,転倒・移動する恐れのある震度も紹介しています.

また,ユーザがどの家具から対策すべきか迷ってしまう可能性を考慮し,地震対策の優先度を提示することで,ユーザに対して地震対策の補助を行っています.

動作画面例1
図2. 地震時の挙動・対策優先度の表示

(2) 地震対策器具

対象に最も適した地震対策器具と,それに関した商品ページのリンクを紹介している.基本的に耐震効果が高い器具を優先的に紹介しています.

しかし,家具や壁に傷が付くことを避けたいと考えている人も少なからず存在しています.そのため,耐震効果は劣るものの傷が付くことがない器具も併せて紹介しています.

動作画面例2
図3. 地震対策器具の表示

デモムービー

参考文献・発表

  1. 山中永遠,吉野孝: 360度カメラを用いた地震対策箇所提示システム, 情報処理学会 第85回全国大会,6ZE-05,(2023).

連絡先

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