1背景と目的

近年,発育・発達の重要な時期にありながら,栄養素摂取の偏りなどの偏食に関する問題が多様化,深刻化しています.この偏食の原因として好き嫌いが挙げられ,小中学生の食事状況調査では,学校給食を残す理由の約 6 割が「きらいなものがあるから」と回答していることからも好き嫌いは大きな問題だとわかります.また,極端な偏食は一般的に,発育不全,免疫力 低下,便秘,肥満や生活習慣病,怒りやすくなるといった精神面の悪影響が考えられます.

そこで本研究では,スマートグラスを活用することで,好き嫌いの対策を目的とし,苦手食材の克服を支援するシステムを提案します.

2システムの概要

(1) 心理学的観点

人間の脳は,実際に体験したことと頭の中でイメージしたことを明確に区別できないといわれています.つまり,目標達成している自分の姿をイメージすると,自分は本当に目標達成できる人間であると脳が錯覚し,目標達成への苦手意識が消えていくと考えられます.

本研究では,自身に苦手な食べ物を食べている姿を見せることで,克服できるのではないかと錯覚させ,自発的な行動を促します.

(2) 想定環境

使用想定図を図1に示します.本システムでは想定するユーザを,老若男女問わず好き嫌いを克服したい意志のある一般人とし,また,小学生以下の子どもを対象として,親が子どもに嫌いなものを食べさせたいとき,学校での食育指導の一環として授業で扱うなどの場面も想定しています.

使用想定図
図1. 使用想定図

3システム構成

システムの流れを図2に示します.

はじめに,ユーザは好きな食べ物を食べている姿を自撮りします.

自撮りした動画を本システムにインポートすることで,撮影時の食べ物を苦手な食べ物に置き換えます.

置き換え後の動画をミラーリングでスマートグラスに投影し,苦手な食べ物を食べるときに着用します.

システムの構成
図2. システム構成

4実験の様子

実験概要

事前に「からあげのレタス巻」の食事姿を撮影しました.

実験の際には,食べたことのある苦手な食べ物と食べたことのない(食わず嫌いしている)苦手な食べ物を提供し,それぞれの克服意思の有無を回答してもらいました.

実験の様子
図3. 実験に使用した画像(イメージ)
  

Adobe After Effectsで編集しています

  

口頭発表

  1. 磯部貴翔,吉野孝:スマートグラスを用いた苦手食材克服システムの提案,情報処理学会第85回全国大会,2ZG-09.

連絡先

  • 磯部 貴翔:s256019 at sys.wakayama-u.ac.jp
  • 吉野 孝:yoshino at sys.wakayama-u.ac.jp

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