研究テーマ

大雨による都市型水害と外水氾濫の研究

近年増加する大雨により、都市の排水能力の不足から生じる内水氾濫と、河川堤防の越水・破堤から生じる外水氾濫の被災を予測する研究を行っています。こうした予測を行うためには、対象とする地域をGIS(地理情報システム)によりモデル化し、各地に降った雨がどのように河川に集まり、流下するかといった水の挙動を数値的に解く必要があります。このGISのモデル化技術の向上と、数値シミュレータの現実世界への適用を行っています。解析モデルとしては、内水氾濫には東京都立大学の河村・天口らが開発した Tokyo Storm Runoff(TSR)モデルを、外水氾濫には土木研究所が開発したRRIモデルを使用しています。本研究を進め、様々な雨の振り方をした際に、どのように氾濫が発生するかについて、事前に予測できるようにすることを目指しています。

災害廃棄物の適正・迅速処分を情報技術で支援する

河川氾濫や地震・津波災害により、同時多発的に膨大な量が発生する災害廃棄物について、どのように輸送・分別・処分すれば良いかについて、情報技術によるアプローチで最適案を自動案出する研究を行っています。地理情報システムと物質輸送・変化の数値モデリング技術、人工知能(AI)を組み合わせたシステム開発研究です。この研究は、災害外力(洪水氾濫や地震の揺れ、津波の浸水深さなど)から災害廃棄物の発生量・組成・発生場所を瞬時に予測する災害廃棄物推計システム、廃棄物の発生場所から集積所、仮置場、焼却施設や処分場、リサイクル施設を選出、輸送経路網を構築する廃棄物フローモデル自動構築システム、及びに収集運搬車両や分別破砕機器の最適配置を自動案出する最適化システムの3要素で構成されます。本研究を進めることで、被災直後に瞬時に災害廃棄物処理の詳細な実行計画を立てることが可能になり、復旧復興の初動に要する時間と労力を大幅に軽減できるようになります。本研究は、名古屋大学・京都大学・明治大学・大阪大学・(株)奥村組・(株)ハイドロ総合技術研究所との共同研究です。詳細はAI 等の活用による災害廃棄物処理プロセスの最適化と処理計画・処理実行計画の作成支援システムの構築をご覧ください。

豪雨が環境にもたらす影響を評価する

大雨は河川の氾濫や内水氾濫などの災害をもたらすだけではなく、水域の環境にも大きな影響を与えます。大雨の際には雨が土壌にしみこみ切れずに地表面を流れ、こうした地表面流は晴天時に表面にたまったチリや農耕地にまかれた肥料などを河川に直接押し流してしまいます。また、古くから下水道管路が設置されている地域の一部では、雨水の排水管と汚水の配水管が合流式と呼ばれる一つの管となっています。普段は雨水と汚水の両方を汚水処理場に送って浄化処理していますが、大雨の際には汚水処理場の処理能力を超える水が一気に流入することを避けるため、雨水と汚水の混濁水を処理せず河川の放流します。こうしたことが要因で、降雨(特に大雨)の直後に、河川の水質が急激に悪化するファーストフラッシュと呼ばれる現象が発生します。こうした現象の環境への影響を評価するため、スウェーデン気象学・水文学研究所と共同で研究を行っています。また、大雨による増水時の河川水質データが不足していますので、自ら水のサンプリングと分析も行って、現象究明を目指しています。

情報技術と教育理論を統合した効果的な津波避難訓練プログラムの開発

特に津波発生時に迅速かつ適切に避難できる技術の習得を目指し、新たな津波避難訓練プログラムの開発に取り組んでいます。具体的には、京都大学防災研究所が開発した避難訓練「逃げトレ」の「指導者がいない状況で、誰でもどこでも避難訓練ができる」という考え方と、アクティブラーニングの「学習者が自分で興味をもち、自らどんどん学習を進める」というコンセプトを融合することで、誰でも、どんな場所にいても津波襲来時に命を守るために全力を尽くせるようにしようとしています。この研究は正確な津波の陸上遡上シミュレーション、トレーニングのための専用アプリ開発、及びに効果的な学習プログラム(回数や頻度、難易度など)の提案の3軸で構成されています。本研究は和歌山大学田内研、同大学災害科学レジリエンス協創センタ-後誠介客員教授、及びに徳島大学馬研究室の間での共同研究です。

3Dモデリング技術を用いた新しい地質観察システムの開発

2024年より開始した新しい研究です。最近ではiPadやiPhoneにも搭載されているLidarとよばれる3Dモデル生成機器を用いて、従来は地質学者が現地に赴き、現地で調査していた露頭を手早く撮影、帰宅後にじっくりと観察できる機能の開発を行っています。iPhoneの利用に加え、近年利用が急拡大するUAV(ドローン)に搭載できる機器の使用も視野に入れ、研究を進めています。

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