2. 有機EL用材料の開発

 ディスプレイといえば、今なおブラウン管(CRT:Cathode Ray Tube)が主流ですが、近年情報処理の発展に伴う大画面ディスプレイの需要と必要性が高まっており、各メーカーはCRTの大画面化にしのぎを削ることを余儀なくされています。しかし、CRTは大画面化にともない体積・重量ともに大きくなり動作電圧も高くなります。

 そこで、CRTに変わる薄くて軽いフラットパネルディスプレイの必要性が高まっており、この一例として、液晶表示ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)があります。しかしLCDは自発光ではなく、バックライトと印加電圧による液晶の光学現象を利用し、明暗のコントラストを作り、情報を表示するものです。そのため、LCDは視野角が狭い(横から見たら暗い)などの欠点があり、また大画面化にもあまり適していません。また、反応速度がそれほど速くはないため、動画表示に難があります。
 近年、これらの欠点はかなり解決してきていますが、自発光型ではないという本質的な事実から、薄さには限界があります(バックライトのため)。

 これらの欠点を補えるのが有機ELデバイスです。有機ELは自発光型フラットパネルディスプレイで高輝度・低電圧駆動・フルカラーといった利点を持っています。自発光型であるので視野角依存性もありません(これは横からでも見やすい)。しかし、有機材料の不安定さから、結晶化や凝縮に伴う素子劣化によって生じる寿命の短さが欠点となっています。また、発光効率(消費電力に対する明るさ)という点でも、まだまだ改善の余地があると考えられています。そこでこれらの欠点を克服できたとき、CRTやLCDをもしのぐ次世代のディスプレイとしての地位を占めるのではないかと考えられます。しかし、有機ELの実用化には、発光機構・寿命・劣化機構などのさまざまな不明な点を解明することが必要です。

 われわれは、このEL素子の発光層に用いる化合物の合成開発を行っています。

研究の簡単な流れ

○語句説明

EL:Electroluminescenceの略。

  ◎特徴は、高精細・大表示容量、高コントラスト、高速応答、広い視野角、軽量・薄型、低消費電力です。

  ◎用途は、各種OA機器のディスプレイなどです。

  ◎今後の展望としては大幅な用途拡大が期待されているELですが、今後はディスプレイとした多様な情報を表示できるよう、マルチカラー化、及びフルカラー化が強く要望されています。現段階ではCVD法による高輝度の新規発光層作成技術の開発とフィルターの採用により、緑、赤、黄色の発光色を持つ、多色ELパネルが試作されています。これにより、ELディスプレイのカラー化が実用化レベルまでに達し、近い将来高精細のフルカラーELディスプレイの実現が期待されています。