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背景と目的

 食品ロスとは,食べることができるのに,廃棄されてしまう食品のことであり, 使用・提供されずに廃棄される「直接破棄」「食べ残し」,調理の際に皮やヘタを必要以上に捨ててしまう「過剰除去」の3種類に分類することができる. 直接破棄が出る原因としては,食品の消費・賞味期限切れや買いすぎてしまい消費できないことなどが挙げられる.

本研究では,買いすぎてしまい消費できない原因は,消費者が予定のない食品の購入していることではないかと考え,「見切商品」に注目した. 見切り商品とは,消費・賞味期限が近づいてきたことにより,通常の価格より値段を下げて販売している食品のことである. 我々は,値段を下げた販売が,消費者の予定外の食品の購入につながり食品ロスの増加の要因になっているのではないかと考えた. そこで,本研究では「食品の見切りが,消費者の予定のない購入につながり,家庭の食品ロスが増加する」という仮説を立て,食品ロスの減少の可能性を見つけることを目的とし,消費者の見切り商品の購入に着目し実際のPOSデータの分析を行った.

分析内容

分析には,実際に株式会社オークワで収集されたデータを使用しています.

(1)1時間ごとの見切数量についての分析

分析の対象店舗と同じ店舗でアンケートを取った結果,見切で購入する商品では水産部門が最も多いという結果が出ました. そこで,水産部門の中でもロス率の多かった「盛合せ」について,1時間ごとの製造数・売上数量・見切数量について調べました.

盛合せの製造数・売上数量・見切数量
図1.盛合せの製造数・売上数量・見切数量

製造数の総計が売上数量の総計と比較して多いことが分かった.また,任意の1週間について1日後との製造数・売上数量・見切数量 を調べたところ,製造数に対して見切しても売り切れておらず,最終的に廃棄が増加している日もあることが分かった.

(2)消費者が見切で購入する頻度の高い商品分類

消費者を分類するために,月々の購入金額で5つのランクに分類した. それぞれのランクで見切での購入が多い商品分類について調べました. 表1は,各ランクの中で見切での購入が多い分類を2つ抽出したものです.

表1.各ランクの見切での購入が多い商品分類
ランク1 ランク2 ランク3 ランク4 ランク5
菓子パン 菓子パン 菓子パン 菓子パン 菓子パン
バナナ バナナ バナナ バナナ

このように購入金額に関係なく見切で購入されている商品の種類にほとんど違いはありませんでした. 菓子パンとバナナについて調べると,どちらも見切りではなく通常の値段で売れている割合が高く,日常的に購入している商品であるという共通点がありました. 特に,バナナの消費量は国内で和歌山県が1位で22.124gでした.

この2つ以外の商品分類を見てみると,巻きずしや食パン,カット野菜などの調理の手間がかからない商品が多くを占めていた.

口頭発表

  1. 吉田結花,吉野孝,松山浩士,貴志 祥江,大西 剛:食品ロスの削減を目的としたPOSデータを用いた見切販売の分析,情報処理学会第81回全国大会,77ZE-05,pp.1-2(2019).
  2. 吉田結花,吉野孝,松山浩士,貴志祥江,大西剛:1時間ごとの商品の見切りを対象としたPOSデータの分析,マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2019論文集,pp.1778--1783(2019).

連絡先

  • 吉田 結花:s206298 at center.wakayama-u.ac.jp
  • 吉野 孝:yoshino at sys.wakayama-u.ac.jp

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