1 背景と目的
多忙な医療現場では.インシデント・アクシデント,医療事故などが発生しやすく,多くの医療施設ではその原因を調査,共有することで,インシデント・アクシデント,医療事故を防ぐ取り組みをしています.しかし,医療行為をする際に,注意すべき事項を常に意識できるとは限りません.特に医療行為において少人数で行われる検査や手技は,現場の医療従事者による即時の判断が必要であり,不安定な心身状態などにより判断を間違えることは重大な医療事故につながります.
そこで本研究は,医療安全の向上を支援する事を目的とし,医療従事者の負担軽減を考慮し,軽量かつ手技視野を妨げない拡張現実を利用できるスマートグラスを装着し,スマートグラスより取得した映像を用いて,医療機器の認識を行い,認識結果から特定した医療行為に関して,その手技の注意喚起情報をスマートグラスに表示するシステムを提案します.
2 システム構成
本システムは,スマートグラスで撮影した画像について,サーバ内で医療機器を認識し,医療行為を特定,その手技の注意喚起情報を表示することによる医療安全向上支援システムです.図1にシステム構成を示します.
図1.システム構成図 |
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(1) 撮影した画像をサーバに送信
医療従事者が装着したスマートグラスで自動的に撮影された画像がサーバに送信されます.
使用する医療従事者の設定(手技の経験度等)が終わり次第撮影が開始されます.
(2) 医療機器の認識と認識結果の送信
サーバに送信されてきた画像から医療機器認識モデルにより,画像内の医療機器を認識します.
認識結果となる医療機器名をスマートグラスに送信します.
(3) 医療行為の特定と注意喚起情報の表示
認識結果として受信した医療機器名から,実施する手技である医療行為を特定します.
特定した医療行為に関する注意喚起情報をスマートグラスのディスプレイに表示します.
3 医療機器認識モデルの学習
医療機器を認識する物体検出アルゴリズムはYOLOv3を用いています.
学習データには,和歌山県立医科大学医師の協力のもと撮影させていただいた動画データから抽出した画像データを使用しています.この画像データ内の医療機器の場所を数値化(アノテーション)し,モデルに学習させることで医療機器認識モデルを作成しています,誤検出減少を考慮し.医療機器の特徴的な部分の学習をさせています.
特徴的な部分のみを学習させた医療機器の認識結果例を図2に示します.
図2.認識結果例:中心静脈カテーテル |
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4 システム画面のイメージ
本システムの画面のイメージを図3に示します.
認識された医療機器から特定した医療行為名,それに関する注意喚起情報と重要度としてのレベルがディスプレイに表示されます
図3.システム画面のイメージ |
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発表
- 外山 怜,吉野 孝,西川 彰則:スマートグラスを用いた注意喚起情報表示機能を持つ医療安全向上支援システムの提案,情報処理学会,第83回全国大会講演論文集,5ZA-04 (2021).
連絡先
- 外山 怜 :s236187[at]wakayama-u.ac.jp
- 吉野 孝 :yoshino[at]wakayama-u.ac.jp