背景と目的

現在,感染症拡大防止のため,対面でのプレゼンテーションの機会が減少し,遠隔プレゼンテーションの機会が増加しています. 遠隔プレゼンテーションでは,遠隔会議システムを多く利用し,発表者が発表スライドを画面共有してプレゼンテーションを行います. このような場合,発表者は画面端に小さく顔だけ映っているか,発表者の姿を表示していないことが多いです. また,対面時のように発表者は体の動きや目線の動きを用いて強調や参照を行うことができなくなってしまう.

それらのことから,遠隔プレゼンテーションは,対面のプレゼンテーションに比べて,発表者の姿や動作が見えないため,発表者の強調・参照が伝わりづらいです. そのため,発表者と聴講者の間で認識のずれが起こり,発表者の意図が正しく伝わらない等の問題が発生しやすいです.

そこで本研究では,遠隔プレゼンテーションにおいて発表者の意図を反映可能なプレゼンテーションシステムを開発しました. 本システムは,発表者の動作をポインタに反映することで,強調表現とスライド操作を行い,発表者の姿をスライド上に表示します. ジェスチャによる直感的な操作によって強調表現を行い,発表者の姿を表示することでプレゼンテーションに親近感を持ってもらうことを目的としています.

システム構成

図1に本システムのシステム構成を示します.

システム構成
図1. システム構成

(1) 発表者の動きの表示

本システムは発表者の姿を表示することで,発表者がどのような動作をしているかを聴講者に伝えます. Kinect v2(図1(b))を用いてプレゼンテーション中の発表者の姿を撮影し,上半身を発表PC(図1(c))のスライド上に表示します.

(2) 発表者の動きによる操作

本システムは発表者が行う直感的な両手の動きによって操作を行います. 発表者の両手の動きと状態をKinect v2(図1(b))を用いて取得します. システムは両手の状態を判別し,動きに対応した表現や操作を行います.

システム機能

本システムは,遠隔プレゼンテーションにおける発表者の強調表現の手助けを行うことをコンセプトとしています.

本システムの機能は以下の4つです.

(1) 発表者の姿の表示

本システムでは,プレゼンテーション中の発表者の様子を聴講者に伝えるために発表者の姿を表示します. 表示する発表者の姿は,プレゼンテーション中の発表者の上半身です. 発表スライド中の文字や図と被らないように,表示位置は空白になることの多い発表スライドの右下(図2(a))に固定しています.

(2) ポインタ操作

本システムでは,プレゼンテーション中の発表者の右手の動きと状態を取得して,プレゼンテーションのポインタ操作を行います. 発表者は直感的な操作を行うために,右手の形状を指し棒を持っているかのように握りしめた状態で,参照箇所を指し示すように動かします. システムは右手の座標を取得して発表スライド上の指の形をしたポインタ(図2(b))の位置に反映させて追従します. そのため,従来のマウスポインタや指し棒のような直感的な動作でポインタ操作を行うことができます.

(3) 強調表現

本システムでは,発表者の強調意図をより伝えるためにポインタを用いた強調表現を可能とします.


1.ポインタの軌跡の表示

強調箇所を早くなぞることによって,ポインタの軌跡に時間が経つと消えるエフェクト(図2(c))を表示します. 軌跡にエフェクトを表示することによって,ポインタがただ動くだけよりも強調されます. また,軌跡に表示することで発表者がどこを強調しようとしてポインタでなぞったのかがわかりやすくなります. このエフェクトは時間が経つごとに小さくなり,消えるので,発表スライドの邪魔をする可能性は低いです.


2.ペンツール

右手をチョキの状態にして参照・強調箇所で動かしたときにペイントによる強調表現を行います. この動作は特に強調したいときに行う表現で,ポインタを動かした軌跡にペンのように赤い線(図 2(d))を描くことができます. この強調表現は,スライド操作を行うまで表示されており,スライド操作をすると消えます. また,左手を動かさずに握った状態から開くことで,スライド操作が行われることなくペイントを消すことができます.

(4) スライド操作

本システムでは,プレゼンテーション中の発表者の左手の動きを取得して,対応したスライド操作を行います. 発表者が左手を開いた状態で大きく右から左に動かしたとき,スライドが次のページへ進みます. ポインタ動作とスライド操作を区別するために,ポインタ操作を行う手と逆の左手を用いてスライド操作を行います.


図2にプレゼンテーション中のシステム画面を示します.
アイコンタクト
図2. プレゼンテーション中のシステム画面

デモムービー

システムを利用してプレゼンテーションしているムービーです.

発表

  1. 寺尾侑莉, 吉野孝 :ユーザの意図を反映可能なアバターを用いたプレゼンテーション手法の提案, 情報処理学会第83回全国大会,4ZA-08(2021-03).

連絡先

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