1 背景と目的

近年のソーシャルメディアの普及に伴い,口コミやグルメサイトなどが広く利用されています.しかし,これらのサービスによる提供情報は万人に対して必ずしも有益な情報とはならず,場合によっては,閲覧者に不満や不快感を与えてしまう可能性も考えられます.これらの点から,消費者の「おいしい」「美味い」などといったポジティブな感情だけでなく,「おいしくない」「不味い」といったネガティブな感情にも着目する必要があると考えられます.

そこで,本研究では,飲食物に関連する内容を含むテキストとしてツイートデータと口コミデータの否定的感情に着目することで,それらに含まれている否定的感情を表現する単語の特徴についての分析を行いました.

2 分析内容

分析対象となる飲食物に関連するテキストデータとしては,Twitterデータと口コミデータを使用しております.

(1) アンチシズルワードの定義と抽出

ツイートデータから否定的感情が含まれているテキストのみを抽出します.それらのテキストデータから特徴的な表現や単語を「アンチシズルワード」と定義し,各系統への分類を行いました.

表1.抽出・分類したアンチシズルワード
分野
アンチシズルワード
味覚系
(27語)
ムラがある,脂っこい,はっきりしない,マズ味,不味すぎ,激マズ,無味無臭,飽きる,
クリーミーすぎ,味がしない,野菜味,塩分キツイ,スパイシーすぎ,味わいたくない,
旨味がない,後味の悪い,ビター気味,あっさりしすぎ,クセになる不味さ,濃すぎ,
薄味,くどすぎ,独特の風味,雑味,異臭,水気,こってり
食感系
(39語)
パサパサ,ボソボソ,シャキシャキ,シャバシャバ,ドロドロ,もっさり,バリバリ,固すぎ,
ベタベタ,ブヨブヨ,ガリガリ,ベチャベチャ,キンキン,ネバネバ,生温かい,溶けない,
飲みづらい,冷めすぎ,じゃりじゃり,シャモシャモ,粘土みたい,ガムのよう,ぬるっと,
ゼミーみたい,スポンジみたい,ねちゃねちゃ,ゴムみたい,コリコリ,噛み切れない,
モソモソ,ジャキジャキ,ホクホク,ゴリゴリ,ネチョネチョ,存在感がない,柔らかくない,
ほぐれにくい,口に残る,ダマになって
情報系
(26語)
クソ,絶望的,変,染みこんでない,生,笑っちゃうほど,吐き気,泣きそう,苦痛,ヤバい,
コンビニ飯,不快,異常に,少ない,小さい,つらい,ゼロ,糖質高い,腹痛い,壊滅的,
得意じゃない,ショック,物足りない,値段相応,口に合わない,拒絶感
その他
(8語)
ゲテモノ,マイナス,ハリボテ,獣臭い,青臭い,生臭い,薬臭い,虚無

(2) 口コミデータに関する分析

口コミサイトである「もぐナビ」からレビューデータを収集し,飲料同士で比較することで,使用されている否定的感情表現に対してどのような差が見られるのかについて分析を行いました.今回抽出した口コミデータは,以下の条件を満たすものを収集しました.

  • 口コミ評価が☆1または☆2
  • 「コーヒー・カフェオレ」と「お酒」に関する飲食物の口コミデータ
  • 変数重要度
    図1.ワードクラウドによる飲料同士の頻出数単語の比較

    分析結果として,同じ飲料である「コーヒー・カフェオレ」と「お酒」に対する口コミで使用されている形容詞を比較することで,様々な飲食物に対して使用されている「薄い」という表現の頻出数に差があるということが判明しました.

    発表

    1. 下津 拓未,平林(宮部) 真衣,吉野 孝:否定的感情に着目した飲食物に関するテキストの分析,情報処理学会関西支部支部大会講演論文集,G-29,pp.1-3(2021)

    連絡先

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