背景と目的

近年,ソーシャルメディアが普及し,情報の発信や検索をする上で重要なツールになっています. ソーシャルメディアでは,誰でも気軽に情報を投稿したり共有したりできるため,正しい情報だけでなく「流言」が広がってしまうという問題があります.

流言とは,十分な根拠がなく正しいかどうかわからない,または人々がその正しさを疑っているような情報のことです. 似たような言葉としては「うわさ」や「デマ」などがあります. 誤った医療知識や災害情報など,流言には人命に関わるものも存在するため,私たちは日ごろから受け取る情報に注意をする必要があります.

そこで本研究では,流言の注意喚起を行うボット「ちるも」を開発しています. ちるもは,LINE上で利用できるチャットボットです. 本研究では,ちるもを通じて流言の注意喚起をしたり,流言に関するクイズを提供したりすることで, ユーザが日ごろ目にする情報を疑ったり,その情報が正しいかどうか確かめたりすることをうながすのを目的としています.

ちるものシステム構成

ちるもLINE上で動作するチャットボットです. ユーザは自信のスマートフォンやPCのLINE上で,ちるもを「友だち追加」することで利用を始められます.

システムの構成図を図1に示します. ユーザから入力があった場合,(a)流言情報確認機能で入力内容の解析と応答メッセージの作成を行います. ユーザの入力に「〇〇は本当?」や「〇〇らしいね」といった流言を確認するキーワードが含まれる場合, (c)流言情報取得機能でキーワードに関連する流言情報を取得してユーザに応答します. また,(b)流言情報通知機能では,(c)流言情報取得機能で取得した流言情報を一定期間ごとにユーザにプッシュ通知します.

システム構成
図1. システム構成

システムの機能

システムの基本機能

図2(a)にシステムのメイン画面を示します. 流言情報はカード形式で表示しています.左右にスライドすることで,複数の流言情報を確認できます.

また,図2(b)にユーザのメッセージに対するボットの応答の様子を示します. この例では,「漂白剤がコロナに効くらしい」というユーザのメッセージに対して,関連する流言を複数表示しています.

システム構成
図2. システム基本動作例

Webアプリケーションとの連携

ちるもはチャットボットとして動作するだけでなく,Webアプリケーションと連動して様々な機能をユーザに提供します.

  • 図3(a)に流言の詳細情報の機能を示します. 流言情報を表示しているカード(図2(a))の下部にある「もっと詳しく」を押すことで,流言の詳細情報が見られます.
  • 図3(b)に訂正ランキングの機能を示します. 「訂正ランキング」ボタン(図2(a)のメニュー内)を押すことで,流言の訂正数ランキングが見られます. この機能では,1週間のうちで訂正数が多いものを順に最大200件まで表示します.
  • 図3(c)にマイページの機能をに示します. 「マイページ」ボタン(図2(a)のメニュー内)を押すことでマイページの機能が利用できます. マイページでは利用開始日や閲覧した流言の詳細情報の数など,ユーザの基本的な情報が見られます.
  • 図3(d)に流言クイズの機能を示します. 「クイズ挑戦する」ボタン(図3(c))を押すことで,流言クイズに回答できます. クイズは出題された流言のテキストのうち,伏せ字になっている部分に当てはまる内容を選択の中から選ぶ形式です. 表示される4つの選択肢は,形態素解析の結果から毎回ランダムに自動生成しています. 回答すると図3(e)の正解画面でクイズの詳細が見られます.

システム構成
図3.Webアプリケーション動作例

デモムービー

参考文献・発表

  1. 西村 涼太,吉野 孝,平林(宮部) 真衣:情報への危機意識向上のための流言注意喚起ボットの提案,2020年度情報処理学会関西支部 支部大会講演論文集,C-04,pp.1–4 (2020).
  2. 西村 涼太,吉野 孝,平林(宮部) 真衣:情報の信頼性への関心を高める流言注意喚起ボットの開発,GN Workshop 2020 論文集,pp.43–50 (2020).

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