背景と目的

看護師の勤務表の作成は,現状,多くの医療現場にて手作業で行われています. また,勤務表は,法律・診療報酬上の勤務条件,個人の希望,労働負荷の公平性,必要人数の確保など,多くの要素を考慮して作成する必要があります. そのため,作成には勤務において多くの時間を要します.

現在,勤務表の作成を自動化するにあたって,いくつものアプローチが提案されています. しかし,完全な勤務表を作成するのは困難とされており,現在も看護師長により手作業で勤務表の作成が行われています.

そこで本研究では,医療現場における勤務表の作成自動化により,複雑な制約条件を満たす公平性が高く,バランスの取れたシフトを作成することを目的とします. 看護師の作成手順を参考にすることで,勤務表を作成することを目指します.

システム概要

本手法の概要を説明します. 本システムは大きく4つの工程で構成されています.

(1) 情報の入力

まず,作成に必要な情報を入力します. これには,祝日などのカレンダー情報,スタッフのスキルレベル,事前に決まっている希望休や夏季休暇などの「固定勤務」が含まれます.

(2) 勤務表の作成

入力された情報を基に,勤務表を自動で組み立てます.
〇 優先配置:影響の大きい「夜勤セット(シフトの組み合わせ)」などを優先的に配置し,ベースを作ります.
〇 人員補充:日勤の必要人数を満たすようにスタッフを割り当てます.
〇 反復修正:制約違反を見つけては修正し,その修正で生じた新たな違反を再度修正するというステップを繰り返します.

(3) 勤務表の評価(達成率の算出)

作成された勤務表がルールを守れているか,3つの軸で定量的に評価します.
〇 全体達成率:月全体で全ての制約を満たしているか.
〇 看護師達成率:各スタッフの視点でルールが守られているか.
〇 日達成率:各日において必要な人員配置がなされているか.

(4) 検証とフィードバック

評価結果に基づき、違反内容を可視化します. 表1のように,法令遵守などの「ハード制約」と,努力目標である「ソフト制約」に分けてチェックを行い,精度の向上を図ります.

表1. 制約分類表
制約分類の表

結果

本システムによって作成された勤務表の例を表2に示します. また,表3に評価結果を以下に示します. 高達成率(ハード制約): 労働基準法などの法令遵守,必要人数の確保といった「守らなければ運用できないような条件」については,100%に近い極めて高い達成率となりました. 課題(ソフト制約): 特定のシフトへのスキル配置や,振替休日の完全な消化といった「質の高さ・公平性」に関する項目については,達成率が低水準に留まりました.

表2. 勤務表の作成例
勤務表の作成例
表3. 達成率のまとめ
達成率のまとめ1 達成率のまとめ2

参考文献・発表

  1. 仲村優, 芝瀧ひろみ, 吉野孝: 医療現場におけるナーススケジューリング問題の解決に向けた検討, 2026年度情報処理学会第88回全国大会.

連絡先

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