背景と目的

店内の客の行動を把握することで,店内のレイアウトの改善や品揃えの改善につながります.そこで,客の行動を詳細に把握する方法として, 客動線分析という手法があります.客動線分析とは客の購買行動を実際に記録し,データ化することで店舗内の問題点を洗い出す手法です. しかし,実際に客の購買行動の軌跡をたどって記録をすることはコストが高いです.

そこで,自動で客の購買データが蓄積され,多くの店舗が収集しているが,十分に活用されていないID-POSデータに着目しました.ID-POSデータとは 「誰が何を購入した」というデータが記載されているデータです.

本研究では,ID-POSデータのみを使用し,客の購買経路を再現した結果を可視化するシミュレーションシステムである「POSパワー」を 開発しています.本システムは,客の行動を可視化させることで,簡単に客動線分析を行うことを目的としています.

POSパワーのシステム構成

本システムは入力と出力の2つの画面に分かれます.以下に詳細を記します.  

  1. 入力
  2. 顧客の購買リストの情報が与えられている ID-POS データを入力する.ID-POS データから各顧客の一回分のレシートデータの特徴抽出を行い,システムに入力する.抽 出を行う特徴は,顧客 ID と購入する商品の部門,AU,クラス,ライン,購入日時である.
  3. 出力
  4. 抽出された特徴をシミュレーションシステム内のエージェントに付加され,購入する商品を認識し,購買経路を探索し,購買行動を再現する.エージェントの購買行動が 終了するとレジへ向かいエージェントは消える.店内の経路でエージェントが通った数を可視化するためにヒートマップが出力される.

システム構成
図1. システム構成

システム機能

POSパワーは2つの主要な機能があります.

(1) シミュレーション画面

図2にシミュレーション画面を示します.シミュレーション画面では,エージェントの購買行動の再現を行います.図2(2)の入口から入店し, 図2(5)のエージェントが購買行動を行います.購買行動を終了すると図2(3)のレジへ向かい退店します.

シミュレーション
図2.シミュレーション画面

(2) 設定画面

図3に設定画面を示します.設定画面では,商品登録を行います.図3(1)の操作モードでシミュレーション画面と設定画面の切り替えを行います. 図3(2)の設置モードで商品の登録・削除を行います.図3(3)で商品登録を行った情報を登録します.

設定
図3. 設定画面

デモムービー

システムを利用しているムービーです.赤い点がエージェント(客)を表しています.シミュレーションの最後にヒートマップを付加しています.

発表

    中村綾乃,酒井航太,吉野孝,松山浩士,貴志祥江,大西剛:ID-POS データを用いた客動線分析方法の検討,情報処理学会関西支部支部大会,D-6,pp.1--3(2020-09).

連絡先

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