背景と目的

学生の質問行動は,講義内容の理解度を深める上で非常に有益である一方で, 学生にとって,質問を始めとする自主的な発言には少なからず心理的な抵抗感があるとされています. 原因として,気恥ずかしさや,周囲から自身の能力を低く見られることを恐れることなどが挙げられます.

これらを解決する手段の一つとして,情報技術を用いた教員と学生間のコミュニケーションを支援する試みがあります. 特に,Web サービスや専用のアプリケーションを通じたコュニケーションは, 匿名性や非対面性により意見発信の抵抗感が軽減されることが大きな利点とされています

しかし,こうしたシステムではほとんどの質問を教員が回答しており, 有意な質問数の増加に伴う教員の負担増加が問題視されている傾向にあります. そのため,講義における質問数を減らすことなく,教員の負担を軽減するためのシステムが必要であると考えました.

本研究では,大学講義における学生の質問行動を促進することを目的としたチャットボット「SUSAN」を改良することで, 学生の質問の一部を自動回答にて解決し,教員の負担軽減効果を検証しています.

SUSANは,LINE上で利用できるチャットボットで,教員と学生の質疑応答を仲介し,学生がより手軽に質問できることを目指しています. また質問者は匿名化された上で,質問内容を他の学生にも共有することで, 自分だけでは気づけなかった理解不足箇所を見つけたり,新たな気づきを得ることができると考えています.

SUSAN

SUSANはLINE上で動作するチャットボットで, スマートフォンやPCにインストールされているLINEアプリケーション上から利用できます.

システムの構成を図1に示します. ユーザによって入力されたメッセージは,(a)質問対応機能によって入力解析と応答メッセージの生成が行われます. 質問文が入力されると,匿名で教員に回答依頼を行います.

また質問および回答は,(b)質問共有機能によって他のユーザも自由に閲覧することができます. こちらはユーザ自身が能動的に質問を一覧で確認できるだけでなく, 教員が質問に回答する際に,重要な質問が投稿されたと判断したものを全ユーザに一斉通知することもできます.

システム構成図
図1. SUSANのシステム構成

システムの機能

(1) 質問投稿機能

図2(a)はシステムのメイン画面です. LINEアプリケーションのトーク画面から,対話形式で利用することが出来ます. システムからの応答には文を入力するだけでなく,ショートカットボタンを押すことでも返答が可能です.

図2(b)は質問を入力した際の動作画面例です. 質問文を入力すると,確認の後,匿名で教員に回答依頼を送ることができます.

動作画面例1
図2. 基本機能の動作画面

(2) 質問共有機能

図3(a)は質問回答画面です. Webアプリケーション上では教員と1対1でのやり取りも可能になっており, 画像を交えた質問や,それに対する教員からの回答などを得られることができ, より質問が解決しやすくなる仕組みなっています.

図3(b)は質問一覧画面です. このように過去に投稿された質問はすべて閲覧可能となっています. Webアプリケーションとの連携により,LINEトーク画面からシームレスに表示される専用ブラウザを利用しています.

動作画面例2
図3. 質問一覧と質問詳細の動作画面

(3) 自動回答機能

図4(e)はシステムが実際に自動回答を行った例です. 質問の際,プログラム関係の質問など自動回答が可能であると判断された質問に関しては, 教員を介することなくチャットボットが自動で質問に回答し,解決を試みます.

講義に関する質問や課題に関する質問など,システム側で解決できない質問と判断された場合, チャットボットは学生に教員への質問送信を提案し,教員へと質問回答依頼のメールを送信します.

動作画面例2
図4. 自動回答の例

連絡先

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