背景と目的

びまん性特発性骨増殖症(DISH)は,脊柱の前縦靱帯に骨化が生じ,まるで一本の骨のようになる病気です. 頸椎までDISH が進展すると,軽微な外傷で重度の脊髄神経障害を引き起こす可能性があります. しかし,DISH は自覚症状がないため,患者が自ら受診することはほとんどなく診断が遅れることが多く, また,人間ドックにおいても,一般的な検査項目に脊柱の画像診断は含まれていません.

一方で,救急外来受診者は全身精査のために全脊柱CT を施行します. そこで本研究では,救急外来受診者の全脊柱CT からセグメント化と機械学習を用い,DISHを自動検出する手法を提案します. 自動検出を実現することで,専門家でなくとも簡便にDISH の診断が可能になります. 早期にDISH を患者自身に知らせることで,転倒リスクを軽減し脊髄神経障害の防止に努めることができます.  

方法

画像アノテーションツール「LabelMe」を使用して,DISHにラベル付けをし,マスク画像を作成しました. 元データとマスク画像をともに医療用のセマンティックセグメンテーション用モデルであるU-Netに学習させ,予測画像を出力します. 概要を図1に示します.

使用データは和歌山県立医科大学附属病院の救急外来患者22名から撮影されたCT画像95枚です. 撮像範囲は全脊柱,胸部,腰部の3種類です.

システム
図1. 本研究の概要

結果

精度評価

評価指標として,正解率,適合率,再現率,IoUの4つを採用しました. IoUとは2つの画像の重なりを表す評価値で,値が大きければ大きいほど高精度といえます. 物体検出においては,正解率,適合率,再現率の値が大きくなってしまうことがあるため,本研究ではIoUを重視して評価します.

評価結果を図2に示します. IoUと適合率が8割ほど,正解率と再現率が9割ほどあったことから高精度に検出できているといえます.

評価値
図2. 評価値

予測画像

DISHの検出結果を図3に示します.脊柱全体の予測画像では,おおよその位置と形状を正確に捉えられています. しかし,胸部と腰部のCT画像においては,DISHでない部分までもが検出されています. これは,画像の白飛びしている部分(過曝部分)がDISHと酷似しているため,誤って検出されたのではないかと考えられます. DISH患者でないCT画像についても同様に過曝部分がDISHとして検出される誤りが発生しました. そのため,今後の課題として過曝部分の補正が挙げられます.

予測結果
図3.予測結果

参考文献・発表

  1. 加藤愛穂,森川大翔,吉野孝,寺口真年: 機械学習を用いた全脊柱CTにおけるDISHの早期発見, 情報処理学会第86回全国大会(6Y-05).

連絡先

研究紹介のページに戻る