はじめに
骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)は高齢化に伴い増加し,死亡率にも影響を与える重大な疾患です.初期診断には主に単純X線画像が用いられますが,画像が不明瞭な場合が多いため,診断時の見逃しが発生しています.
新鮮OVFでは,図1に示すように,立位と仰臥位など体位の違いによって椎体形状が変化することが臨床的に知られており,この変化を診断の手がかりにすることができます.
臨床現場において,専門医以外の医師も椎体骨折を診断しなければならない状況が起こりうるため,スクリーニングツールとして画像分類モデルを構築することは重要です.特に新鮮OVFは,体位変化により椎体形状が変化するという特徴をもちます.
本研究では,この体位変化に着目し,異なる体位で撮影されたX線画像ペアから抽出した特徴量を用いて,説明可能な分類モデルを構築します.
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| 図1. 新鮮OVFの特徴 |
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方法
データ概要
使用データは,和歌山県立医科大学附属病院紀北分院で脊椎疾患患者88人から撮影された186枚の単純X線画像(胸腰椎側面像)です.本研究は和歌山県立医科大学倫理委員会の承認を得て実施しました(承認番号: 3915).
手法の流れ
本手法は図2のように,検出フェーズと分類フェーズに分けられます.検出フェーズでは,DeepLabv3+を転移学習して椎体セグメンテーションを行い,入力画像と予測領域の重なり部分を用いてクロップ画像を作成します.これにより輝度やテクスチャ情報を維持したまま椎体領域を抽出します.
図3に分類フェーズの詳細を示します.分類フェーズでは,各患者の異なる体位のクロップ画像ペアを用います.全クロップ画像に対してZスコア正規化を行い,新鮮OVFとその他の椎体(正常,陳旧性OVFを含む)を分類することで段階的に新鮮OVFを判定します.
186枚のうち異なる体位のペアが存在しない画像を除外し,170枚を対象としました.ペア画像中の各椎体を対応付け,体位1・体位2それぞれから特徴量を作成し,XGBoostを用いて椎体ペアごとに一つ抜き交差検証を行いました.
また,パワポで整理した検討事項を踏まえ,患者単位での分割(LOPOCV / LOGOCV)を確認し,患者間の混在によるデータリークの影響を避けるように検証設計を見直しました.
特徴量には,面積・周囲長・Huモーメント・Zernikeモーメントなどを含むVisual patterns特徴量と,ヒストグラムやテクスチャを含むRadiomics特徴量を用いました.評価指標は正解率,感度,特異度としました.
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| 図2. 本手法の流れ |
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| 図3. 分類の流れ |
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結果と考察
椎体検出の評価結果
ピクセル単位でのセグメンテーション正解率は98.9%,mean IoUは81.1%でした.椎体位置および形状は概ね正確に検出できましたが,解剖学的構造の重なりにより境界が不明瞭となる椎体も確認されました.
新鮮OVFの分類結果
椎体ごとの分類では,Table.1に示すように,Visual patterns特徴量とRadiomics特徴量を併用した場合に正解率87.6%,感度54.0%,特異度95.7%となりました.単独特徴量群と比較して,正解率と感度で同等以上の結果を示しました.
また,Table.1において単独特徴量群同士の感度を比較すると,Visual patternsのみを用いた場合(52.4%)はRadiomicsのみ(25.0%)より大きく高く,輝度・テクスチャよりも形状に基づいて分類されていることが分かります.
関連研究との比較では,Yabuらの9CNNs手法と比べて正解率は同等,特異度は上回りました.また,Onoらの3CNNs手法(患者ごと評価)と比較して感度を上回る結果となりました.体位変化に伴う椎体変化を特徴量として扱う本手法の有効性が示唆されました.
関連研究との比較結果は,椎体単位の評価をTable.2に,患者単位の評価をTable.3に示します.
陽性(骨折を有する)患者のみがデータに含まれるため,患者ごとの比較は感度のみで評価しました.
| Table.1 椎体分類の評価結果(椎体ごと) | 正解率 | 感度 | 特異度 |
|---|---|---|---|
| Visual patterns + Radiomics | 87.6% | 54.0% | 95.7% |
| Visual patterns | 87.8% | 52.4% | 96.3% |
| Radiomics | 82.0% | 25.0% | 95.7% |
| Table.2 関連研究との比較(椎体ごと) | 正解率 | 感度 | 特異度 |
|---|---|---|---|
| 9CNNs [1] | 88.0% | 88.1% | 87.9% |
| 本手法 | 87.6% | 54.0% | 95.7% |
| Table.3 関連研究との比較(患者ごと) | 感度 |
|---|---|
| 3CNNs [2] | 53.8% |
| 本手法 | 76.5% |
参考文献・発表
- A. Yabu, M. Hoshino, H. Tabuchi, et al: Using artificial intelligence to diagnose fresh osteoporotic vertebral fractures on magnetic resonance images, The Spine Journal, Vol.21, pp.1652-1658, 2021.
- Y. Ono, N. Suzuki, R. Sakano, et al: A Deep Learning-Based Model for Classifying Osteoporotic Lumbar Vertebral Fractures on Radiographs: A Retrospective Model Development and Validation Study, Journal of Imaging, Vol.9, No.187, 2023.
- 今村文香,吉野孝,寺口真年:椎体の形状変化に着目した単純X線画像による骨粗鬆症性椎体骨折検出手法の検討,第24回情報科学技術フォーラム(FIT2025),G-016,pp.583--584(2025).
- 今村文香,吉野孝,寺口真年:転移学習と幾何学的モーメント特徴量を用いたX線画像からの新鮮椎体骨折検出,情報処理学会 研究報告コラボレーションとネットワークサービス(CN),Vol.42,No.16,pp.1--7(2025).
- 今村文香,吉野孝,寺口真年:単純X線画像からのモーメント特徴量とRadiomics特徴量を用いた分類器による新鮮OVF識別,研究報告コラボレーションとネットワークサービス(CN),2026-CDS-45,No.53,pp.1--8(2025).
連絡先
- 今村 文香:s276031[at]wakayama-u.ac.jp
- 吉野 孝:yoshino[at]wakayama-u.ac.jp


