1背景と目的
文部科学省による留学生受け入れ 30 万人計画が進む現在,留学生の増加に伴い,教育現場での留学生支援の必要性が高まっています.非母語で行われる講義では,多くの留学生が問題を抱えています.そのなかでも,教員の口頭説明が聞き取れないという問題は,不明瞭箇所の記録が難しく,復習が困難であるという特徴があります.
そこで本研究では,スマートフォンを用いて講義の録音・不明瞭箇所のマーキングを行い,学生の相互聴講補助を支援する講義音声共有システムの開発を行っています.
2システムの構成
本システムは,学生の相互聴講補助の支援を通して,留学生に音声の不明瞭箇所を文字情報にして提供します.
システムの流れを図1に示します.留学生が受講中に記録にした質問情報(講義録音音声,不明瞭箇所のマーキングデータなど)を共有し,他の利用者からの文字回答を募ります.
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図1. システムの構成 |
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3共有情報
(1) 質問情報
本システムでの質問は,以下の4つの情報から構成されています.
録音音声とは,留学生が発話した質問を録音した音声ではなく,講義中の教員の口頭説明を録音した音声を指します.
(2) 回答
本システムでの回答とは,講義録音音声を文字に書き起こしたものや,音声で不明瞭だった単語の解説を指します.
4システムの機能
(1) 受講モード
受講モードは図2に示す録音画面で,講義音声を録音しながら,不明瞭箇所のマーキングを行います.
教員の口頭説明が聞き取れなかったと感じたときに中央のマーキングボタンを押すと,質問情報が記録・アップロードされ,他の利用者とリアルタイムで共有されます.
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図2. 受講モードの録音画面 |
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(2) Q&Aモード
Q&Aモードは,MY QUESTIONタブと,OTHERS QUESTIONタブの2つのタブで構成されています.
また,Q&Aモードでの講義音声の再生は,留学生が聞き取れなかった不明瞭箇所を抜き出すために,マーキングボタンを押した時点(マーキングポイント)の15秒前から再生されるように設定されています.
MY QUESTION タブ
MY QUESTION タブを選択すると,図3の左に示す自分が投稿した質問の一覧画面が表示されます.
質問を選択すると,図3の右に示す質問詳細画面が表示され,この画面で他の利用者から送信された回答の閲覧と,自分がマーキングした講義録音音声の再生ができます.
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図3. MY QUESTION タブの質問詳細画面 |
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OTHERS QUESTION タブ
OTHERS QUESTION タブを選択すると,図4の左に示す他の利用者が投稿した質問の一覧画面が表示されます.
質問を選択すると,図4の右に示す質問詳細画面が表示され,この画面で他の利用者が投稿した質問への回答と,他の利用者がマーキングした講義録音音声の再生ができます.
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図4. OTHERS QUESTION タブの質問詳細画面 |
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マーキングした講義録音音声の再生
マーキングした講義音声の再生は,マーキングボタンを押した時点(マーキングポイント)の15秒前からマーキングポイントまでが再生され,この15秒間のあいだに留学生が聞き取れなかった不明瞭箇所が含まれるように設定しています.講義録音音声の再生の仕組みを図5に示します.
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図5. 講義録音音声の再生の仕組み |
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5実験の様子
実験の際には,留学生に本システムを用いて,受講しながら質問の投稿を行ってもらいました.
図6は,留学生が1人1つずつシステムを手元に置いて,講師の解説を録音しながら聴講している実験中の様子です.
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図6. 実験の様子 |
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6デモムービー
留学生の聴講支援のための講義音声共有システムのデモムービーです.
本デモムービーは,以下の流れで,システム画面を表示しています.
口頭発表
- 今川七海,吉野孝:留学生の聴講支援のための講義音声共有システムの開発,情報処理学会第77回全国大会,1ZE-01,第4分冊,pp.823-824(2015-03).
連絡先
- 今川 七海:s175004 at sys.wakayama-u.ac.jp
- 吉野 孝:yoshino at sys.wakayama-u.ac.jp