背景と目的

災害が多い日本では,多くの防災ゲームが開発されており,防災行動のきっかけづくりに用いられてきました. しかし,従来の防災ゲームの多くは,防災や学習の要素が強く,ゲームであるにも関わらず,楽しさよりも学びに焦点を当てられています. そのため,本来のゲームより楽しさが損なわれている可能性がありました.

そこで本研究では,ゲームに焦点を当てた防災ゲームである「マミリス」の開発を行いました. マミリスは,スマートフォン上で動作し,一人でプレイすることのできる防災ゲームです. 楽しみながら防災学習を行い,防災行動のきっかけを作ることを目指しています.

マミリス

マミリスは,ルールが単純であり馴染みのあるブロックパズルと,知識の獲得に有効であるクイズを組み合わせました. 防災学習をゲームと組み合わせることで,防災を楽しいものにし,複数回の利用を促します.

システムの構成を図1に示します. まず,スマートフォンから利用者に対してブロックパズルが提示されます(図1(1)). それに対してユーザはブロックパズルの操作を入力します(図1(2)). そして,ランダムなタイミングでスマートフォンから利用者に対して防災クイズが出題されます(図1(3)). 提示されたクイズに対して,ユーザは解答を送信します(図1(4)). 送信された解答結果はサーバに保存されます(図1(5)).

システム構成図
図1. マミリスのシステム構成

システムの機能

(1) ゲーム機能

図2に,本システムの画面例を示します. 図2(1)は基本のプレイ画面です. この画面では,基本的にはテトリスと同じルールでブロックパズルをプレイします. プレイ時はランダムなタイミングで,新しいブロックを生成するだけではなく,防災に関するクイズが出題されます. 図2(2)はクイズの出題画面です. クイズはすべて〇か×で答えることのできる問題となっており,問題文の下に表示されたボタンを押して解答します. クイズについては,日本で発生しやすい災害である「大雨」「地震」「津波」に関する問題に加えて,「様々な災害に共通して準備できる備蓄」などの問題をまとめたカテゴリの計4つを用意しました. クイズの解答を行うと,図2(3)のクイズ解説画面に遷移します. 解説画面では,正誤判定とクイズの解説が表示されます.「次へ」のボタンを押すと,図2(4)のイベント画面に遷移します. イベントについては,正誤判定およびクイズのカテゴリによって異なるイベントが発生します.表1にクイズ解答後のイベントを示します. 正解の場合はブロックパズルが有利になるようなイベントが発生し,不正解の場合はブロックパズルが不利になるようなイベントが発生します.

動作画面例1
図2. ゲーム機能の動作画面
表1.各イベントの詳細
カテゴリ
正解
不正解
地震
各列の上二つのブロックが消える
次に落ちてくるブロックがいびつな形になる
津波
下三段が全て消える
下三段が交互に消える
大雨
次に落ちてくるブロックが三回連続でI字ブロックになる
底が一段上がる
事前準備
ブロックの落ちる速度が一定時間遅くなる
ブロックの落ちる速度が一定時間速くなる

(2) ランキング機能

図3(1)に,ランキング機能の画面例を示します. ユーザはゲームをプレイすることでスコアを得ることができます.獲得したスコアのうち最も高いスコアはサーバーに保存することができます. 保存された全ユーザの順位が表示されます.

(3) SNS共有機能

マミリスは,プレイ後にスコアとクイズの正答率をSNSに投稿できます. 投稿できるSNSは,若者の利用率が高いX(旧Twitter)です.

(4) クイズ一覧機能

図3(2)に,クイズ一覧機能の画面例を示します. ゲーム内で出題されたかどうかのクイズ情報は,サーバに保存されます. クイズ一覧機能は,一度解いたクイズを後から見返すことができる機能であり,クイズが出題済みかどうかだけでなく,正解・不正解の情報も保存し,正解したクイズは修了済みになります. 画面下部には修了数が表示されます. 色のついているボタンを押すと,問題文と解説,初回正答率を閲覧できます. 正解,不正解の情報は更新されていくが,それぞれユーザの初回の解答を個別に保存しておくことで,初回正答率を計算します. 初回正答率がわかることで,その問題の難易度が予想できます.

動作画面例2
図3. その他機能の動作画面

デモムービー

参考文献・発表

  1. 井田真実,石橋明大,吉野孝: マミリス:ブロックパズルと防災学習を組み合わせた防災ゲームの提案, 研究報告コラボレーションとネットワークサービス (CN),Vol.2024-CN-121, No.41, pp.1–6(2024).

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