背景と目的
住宅建築において必要な作業に間取図作成という作業があります.間取図作成とは住戸の枠組みにリビングや寝室,トイレ,玄関といった部屋をどのように配置するかを考える作業があります. 間取図は部屋の種類や位置,大きさを分かりやすく示すことが出来るため重要なものとなっています. しかし,間取図を作成するには住戸の大きさや建築基準法,日当たり,生活動線など様々な要因を考慮して設計士が試行錯誤して作成しているため,時間がかかってしまいます.
そこで本研究では,間取図を自動で複数生成し,提案するシステムを開発しています. 間取図を自動で生成し提案することで,間取図作成にかかる負担を軽減し業務の効率化を目指しています.
また,画像生成AIを用いて間取図を生成することで,単純な矩形以外の部屋を含む間取図を提案し,設計士が思いつかなかったような間取りを提案できないかと考えています.
画像生成AIを用いた間取図生成
実際の間取図を学習させ,Stable Diffusionという画像生成AIを用いて画像を生成します.さらに,生成した画像を制約条件によって自動で微調整を行うことで実用可能な間取図を提案します.
システムの構成を図1に示します. モデルファイルをLoRAで作成し,そのモデルファイルとテキストにより画像を生成します. 次に,生成画像を条件によって使える画像と使えない画像に分類します.そして,部屋の位置を決定し,サイズと位置を自動で修正を行います.
また最後に間取図の評価を行い,点数をつけることで評価の高い間取図を複数提案します.
図1. システム構成 |
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システムの流れ
(1) 画像の学習
元の間取図には文字が含まれていることや,異なる色の線が入っているだけであるため,上手く学習させることが出来ません.そのため部屋ごとに矩形を当てはめ,間取図を簡略化することで学習させます.
(2) 画像の生成
図2は画像の学習を行い作成したモデルファイルを適用し,画像を生成した結果です。一番大きな部屋を紫色の矩形,次に大きな部屋を橙色の矩形を当てはめ学習を行ったため,その影響が生成結果にも出ています.
しかし,画像内に含まれる図形が複雑,数が多いという問題があるため,さらに使える画像と使えない画像の2種類に分類し,修正を加えます.
図2. 画像の生成結果 |
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(3) 画像の分類
生成画像から複雑な図形が含まれているものや,図形の数が多いものを排除した画像から部屋の位置を決めます.具体的に洋室,玄関,トイレ,洗面室,ユニットバスの位置を決めます.
図3は部屋の位置を決めた画像から修正を行った例になります.部屋のサイズが合っていないことや,形が合っていなことがあるため最大値と最小値を設定し、修正を行っています.
図3. 画像修正例 |
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(4) 画像の評価
洋室が住戸の中で最も重要な要素であるため,洋室の要素で評価をします.洋室の面積と洋室の形状に着目し,洋室の面積が大きいもので,形状が単純なものを高評価とします.
図4は評価を行った結果になります.洋室に他の部屋が重ならず,綺麗な矩形で面積が大きく取れているものや凹凸が少ないものが高評価に多くなっています.
逆に,洋室に他の部屋が重なり面積が小さくなっているものや,洋室の形が複雑になってしまっているものが低評価に多くなっています.
図4. 画像評価例 |
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参考文献・発表
- 土井颯真,吉野孝: 画像生成AIによる間取画像生成手法の提案, 情報処理学会全国大会(2024),7V-02.
連絡先
- 土井 颯真:s266187 at sys.wakayama-u.ac.jp
- 吉野 孝:yoshino at sys.wakayama-u.ac.jp