和歌山大学の尾久土正己(おきゅうどまさみ)です。
もう何年も同じ写真でのご挨拶です。最近はFacebookでの投稿が多くなり、こちらの挨拶文を丸10年放置していることに気づきました。
この10年の間に色々ありました。前回の挨拶では観光学部の1期生の卒論が完成したと書いていましたが、その彼らは今すでに30代になり、各方面で活躍していることでしょう。私も当時は、学部運営にはほとんど関わっておらず、旧学生自主創造科学センター(クリエ)のセンター長として全学の面白い学生たちの取り組みを支援していました。天文学出身の「宇宙人」が観光学部の中心で活躍することはないと自他とも思っていました。それが、2019年に観光学部長に就任し、2021年度から始まる次の2年も学部長を受けることになりました。
10年の間に、絵空事と思われていた民間人の宇宙旅行も目前になってきましたし、満天の星空の下で夜空を見上げる観光がアストロツーリズム として世界的に認知されるようになりました。今、そのお手伝いとして、前職であるみさと天文台はもちろんのこと、遠く鹿児島県与論町の観光開発のお手伝いをしています。また、アストロツーリズムの研究者になりたいという学生が大学院の扉をたたいてくれるまでになりました。改めて10年の年月を感じています。
この挨拶を書いている今、2020年冬に始まったコロナウイルス感染症の世界的流行が未だにその出口を見通せず、2度目の緊急事態宣言下でオンラインばかりの仕事をしています。観光産業だけでなく、私たち観光学部も受験倍率が下がるなど大きな影響を受けています。しかし、元々、天文学を学んできた私にとって、この地球はまだ何十億年も続くことでしょうし、逆に明日、宇宙から小惑星が落ちてくることも否定できません。天文学的に考えれば、持続可能な世界などありません。その中で起こっている昨今のコロナ禍も宇宙や地球の歴史でみれば小さなことになる一方、せいぜい頑張っても100年しか生きることのできない人間にとって、この1年を超す感染症の蔓延は大きなインパクトになっています。1日でも早く、終息し、元通りの社会生活が戻ってくることを祈らずにはいられません。
ところで、この写真をみて、10年前には感じることがない感情が挨拶を書きながら湧いてきました。この写真を撮ってくれた父はすでにこの世にはいませんが、当時、カメラはフィルムカメラでせいぜい1本24枚のコマしかない中で、このアングルで1964年の3歳だった私を残してくれました。今だとスマートフォンで適当に連写した中で、お気に入りの1枚を選ぶわけですが、現像してみないとわからなかったあの時代に、貴重な一コマとして、この砂浜で遊ぶ私の後ろ姿を撮ってくれた父の愛を感じています。この10年のうちに、2人の孫の祖父になってしまいましたので、余計に小さな子どもを撮る気持ちについて改めて考えたのかなと思います。
では、ここを訪れてくれた皆さん、2021年もよろしくお願いします。
2021年新春(といっても旧暦の正月)
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