和歌山大学システム工学部Vision and Robotics Laboratoryで開発されたシステム
背景
カメラを用いた物体の運動計測技術は,生体の行動観測,ゲーム,CGからロボット制御の分野まで,多肢にわたる分野で必要とされる基本的技術である. 高速,高精度で,しかも簡便で広範囲に3次元位置計測できるシステムが求められている.
従来法の問題点
- 特殊なマーカーを使用しなければならない.
- 計測可能範囲が限定される.
原理と特徴
そこで,ここでは以上の問題を解決した,小型ステレオカメラを用いた3次元位置計測システムを構築した.
- 特殊なマーカーを使わず,マーカーは色のついたマーカーを用いる. 多色の色マーカーをロバストに検出するため和田[1]が開発した高速な最近傍識別器を用いている.
- 計測範囲を広げるために,小型ステレオカメラをパンチルトユニットに搭載し計測対象を追跡する. 運動する計測対象を追跡するために,大池ら[2]が開発した能動カメラ制御法を用いている. また,追跡時に画像取得に同期して,能動カメラのパン・チルト角度を計測する装置を製作した.さらに,カメラ座標系での計測結果を簡単に世界座標系の計測値に変換するために,ステレオカメラを視点固定型カメラとなるように小型ステレオカメラをパンチルトユニットに装着している.
システム構成図
図1に提案システムのシステム図を示す.ステレオカメラとして,Point Gray Research社のBumblebeeを用いた.このカメラは,2眼式平行ステレオカメラで,カメラキャリブレーションは出荷時に行われており,IEEE1394インターフェースの搭載されているPCに接続するだけで,簡単かつ高速(30fps)に画像の入力が行える.左右のカメラからの入力画像のサイズは640×480である.
3次元位置計測
以下のような特徴を持つ,色マーカーの3次元位置計測ソフトウェアを開発した
- 最近傍識別器による色ターゲット検出法により,ロバストで高速な色検出が行える.
- ターゲット色の教示が瞬時に行え,未検出・誤検出部分をインタラクティブに再教示することができる.
- ターゲット色は最大15種類指定できる.
- VGAサイズの2枚のカラー画像に対して30fps以内で,ターゲット領域検出,重心計算,3次元位置計測ができる.
- トリム平均により検出ノイズの影響を抑制することができる.
本ソフトウェアは,潟rュープラスより,3DPositionMeasurementSDK(3DPM)として発売されている(3DPMのカタログ).
結果
- 壁につるしたボールの運動を計測している様子(動画1(色検出),動画2(3次元位置計測))
応用事例
参考文献
- 和田俊和:最近傍識別器を用いた色ターゲット検出、情報処理学会トランザクション「コンピュータビジョンとイメージメディア」Vol.44, No.SIG17-014, 2002.
- 大池洋史ら:高速追従型アクティブカメラ,MIRU2004 ProceedingsT,pp. 111-112, 2004.
- 飯塚ら:ステレオカメラによるリアルタイム3次元位置計測システム,MIRU2004 ProceedingsT,pp. 111-112, 2004.(資料)(宣伝用ポスター)
- 飯塚ら:視点固定型パン・チルトステレオカメラによるリアルタイム3次元位置計測システム,MIRU2005.(資料)(宣伝用ポスター)