有機化学の研究において、近年強い相互作用から弱い相互作用への展開が注目されています。化学結合等の強い相互作用は有機化合物の骨格を形成します。一方弱い相互作用は有機化合物の微細構造を決定します。またそれらは、物質の高い機能を発現させるのに大きな役割を担っています。私たちは、セレン原子や硫黄原子の関与する電荷移動力のような弱い相互作用を研究しています。弱い相互作用を研究する上で時折、測定器機による検出限界に遭遇します。そこで理論的な背景に基づいた分析が重要になります。また実験結果は、理由を語ってはくれません。そこで私たちは、実験結果をサポートしたり解析するために非経験的分子軌道計算を用いて研究を行っています。 |
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「計算先導」と銘うっている私たちの最近の研究方法を紹介します。「計算先導」とは有機化学を研究する際に計算によって実験を先導していく方法です。通常、有機化学の研究室では、最初に分子設計を行い、標的化合物を合成し、続いて器機による測定及び分析を行います。そうして、実験結論が得られます。一方理論計算の場合には実際合成する全ての化合物の物性や測定値を非経験的分子軌道法を駆使して、算出します。そして解析を行い、理論的な結論を得ます。最後に実験及び理論によって得られたそれぞれの結果をつき合わせて最終結論を導きます。 |
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さて、私たちが研究しているセレン原子等のヘテロ原子を含んでいる非結合相互作用についてお話しします。Zがセレン原子、Xがハロゲン原子の場合を例にとって説明しますと、セレン原子のp性の孤立電子対の軌道は、非結合相互作用に重要な役割を果たします。セレン原子のp性の孤立電子対の軌道は隣接するπ軌道と相互作用します。これは結合経由の相互作用として良く知られているものです。一方セレン原子のまわりの非結合相互作用は、あまり研究が進んでおりません。したがって、私たちは、セレン原子等のヘテロ原子を含んでいる以下のような非結合相互作用の全解明を行うために研究を行っています。またこれらの非結合相互作用を活用して新しい物性や機能性を有する化合物の創生を目指しています。 |
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