和歌山大学独創的研究支援プロジェクト 紀伊半島における災害対応力の強化

-想定を越える災害への備え-

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高規格道路網の防災機能 SA・PA の防災拠点化を中心に

担当教員

災害情報利活用

災害情報利活用

経済学部 市場環境学科

辻本 勝久

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  1. 高速道路 SA・PA の特性と防災拠点としての重要性*1
    • ・救援活動の動線上にある
    •  ・もともと高速道路沿いにあるため人や物資の移動に有利
    •  ・東日本大震災2週間後の東北道下り菅生PA(宮城県村田町)の例
    •   ・仙台に最も近いPA
    •   ・建機、資材、プレハブ、簡易トイレなどを積んだトラックや自治体からの応援車両が集結、朝一番で仙台や三陸沿岸へ向かった
    • ・広いスペースと施設がある
    • ・独自のライフラインがある
    •  ・SA・PAには高速道路独自の送電ルートがあるため、停電にも強い
    • ・SA・PAの災害復旧拠点としての機能例
    •  ・救援車両の中継点や一時待機場所
    •   ・上記菅生 PA の例
    •   ・東日本大震災時の常磐道四倉 PA(原発対応自衛隊の中継基地)、東北道羽生 PA や長者原 SA(被災地へ向かう消防隊の中継基地)、福島松川 PA(原発避難住 民の輸送中継基地)
    • ・前線基地
    •  ・後述の守谷 SA の例
    • ・食糧・燃料の補給
    •  ・食料や飲料水、燃料などを備蓄するだけでも緊急避難所として機能
    •  ・井戸や非常用電源を備えることで機能が強化される
    •  ・全国からの自衛隊・消防などが SA・PA で食料を調達できれば、その分、被 災地での調達が減って、被災住民への提供が増える可能性
    • ・炊き出し
    • ・トイレ
    • ・入浴施設
    • ・自家発電
    • ・情報の提供
    •  ・被災地情報を集約し提供
    •  ・全国から集結するボランティアへの情報提供拠点として等
    • ・ヘリコプターと陸上網の中継点

    • *1  サービスエリアの防災利用 災害時に役立ったSA・PA 運転席から物流論100 トラックドライバージャーナリスト 長野潤一 2012/04/16 輸送経済
    •  ・ドクターヘリや自衛隊ヘリの離発着
    • ・その他
    • ・国土交通省「高速道路のあり方検討有識者委員会」の緊急提言*2
    •  ・高速道路等と防災拠点や避難場所等を一体的に整備する必要
    •  ・高速道路 SA・PA 等を災害時に計画的かつ積極的に活用
    •  ・高速道路 SA・PA 等を避難・救援拠点として活用するための情報提供機能の充実
    • ・高速道路3社のSA・PAは計約700拠点あり、防災拠点化はSA・PAの新たな役割に
  2. 高速道路会社によるSA・PAの防災拠点化の動き*3
    • 2-1.NEXCO中日本
    • ・「新東名高速道路」のSA・PAにヘリポートを整備
    •  ・東海・東南海地震への対策
    •  ・御殿場JCT~三ケ日JCT間のSA・PA12拠点に防災ヘリ用のヘリポートを 整備
    •  ・駿河湾沼津SAなどには、24時間分の燃料を確保する自家発電装置や、断水時にも使える地下水利用設備を設置
    • 2-2.NEXCO東日本
    • ・新中期計画の柱にSA・PAの防災拠点化を盛り込み
    • ・東日本大震災では、常磐道や東北道のSA・PAが自衛隊や警察、消防隊などの集結基地となった
    • ・しかし現状の設備では通信網や燃料備蓄などに余裕がなく、防災拠点としての機能が不十分
    • ・また、東日本大震災では、全国各地から駆け付けた救援部隊が、被災地の交通網
    • 復旧までの間、待機する場所の重要性が指摘された
    •  ・そこで、新中期経営計画(平成 23 年策定)の柱にSA・PAの防災拠点化を盛り込んだ
    •  ・その代表例が常磐道守谷SA(茨城県守谷市)の防災拠点化
    •  ・守谷SAは中央防災会議で首都直下型地震時の救援部隊の「進出拠点」に指定
    •  ・NEXCO東日本は50億円を投じて防災拠点化

    • *2 高速道路のあり方検討有識者委員会「東日本大震災を踏まえた緊急提言」、平成 23 年 7 月 14 日
      *3 高速道路3社 SA・PA 防災拠点に ヘリポートや燃料備蓄 2012/03/03 日刊自動車新聞
    • 2-3.NEXCO西日本
    • ・津波を想定した避難所を整備
    • ・徳島県と協定を締結
    • ・高速道路の法面に約500人が避難できるスペースを2カ所確保
    • ・SA・PAの防災拠点化も自治体や関係機関と今後協議
  3. SA・PAの防災拠点化事例(1)常磐道上り線守谷SA*4
    • ・守谷SAの商業施設「Pasar(パサール)守谷」
    • ・首都圏の出入り口に位置
    • ・全国各地から駆け付ける救援部隊の前線基地として整備
    • ・首都直下地震を想定した高速道路休憩施設防災拠点化のモデル事業
    • ・守谷 SA のほか、都心部から放射状に伸びる東関東、東北、関越道、中央、東名 の各高速道路に「防災拠点SA」の整備が想定されている
    • ・敷地面積は約1万 7500 平米、建屋は2階建て延べ 2800 平米
    • ・平成 26 年 3 月にオープン
    • ・全国初となる防災拠点機能を兼ね備えたSA商業施設
    • ・平時はフードコートや土産物店が並ぶ休憩施設
    • ・NEXCO 東日本のフラッグシップ SA としての位置づけ
    • ・「恵みの森を全館のコンセプトとし、建物の柱などに木を採用、茨城産品を取り入れたメニューや地元の新鮮野菜などを販売
    • ・大規模災害発生時にはフードコートが「共同災害対策室」となる(全国初)
    • ・フードコート内什器などのレイアウトを即座に変更し、NEXCO東日本、陸上自衛隊、茨城県警察本部、消防庁、DMAT・日本赤十字社、電信電話各社、 NHK、日本道路交通情報センターなどによる対策室を立ち上げることが可能
    • ・フードコート内の大型モニターで、自衛隊ヘリからの被災地映像等を確認可能
    • ・それぞれの機関に入る情報を共有化し、災害活動に生かすことができる
    • ・災害用設備として自家発電装置、太陽光パネル、断水対策の井戸、ヘリポート、軽傷者収容用のベッド、保存食の備蓄等
    • ・ヘリポートは、自衛隊の中型ヘリやドクターヘリなどの離発着を前提にスペースを拡大し、夜間照明を設置したもの
    • ・軽傷者の収容所は、平時は店舗従業員の休憩室として利用

    • *4 役立つ:常磐道守谷SA「パサール守谷」救援部隊の前線基地に2014/10/22 毎日新聞、Timeライン・進化するパーキングエリア・サービスエリア2014/05/09 建設通信 新聞、NEXCO東日本、高速道SAに初の防災対策室機能 2014/04/28 日刊自動車新聞
    守谷 SA の位置
    同一縮尺で見た紀ノ川 SA(左)と守谷 SA(右)
    出典:東日本高速道路(株)管理事業本部防災・危機管理チーム(2014)「常磐自動車道守谷 SA (上り線)防災拠点モデル事業」、『高速道路と自動車』第 57 巻第5号、pp.59-63
  4. SA・PAの防災拠点化事例(2)ボランティア拠点としての活用*5
    • ・東日本大震災における兵庫県の取り組み
    • ・平成 23 年4~5月に、仙台市の PA 付近等に「ボランティア・インフォメーション センター」を設置し、支援に向かう約2千人に現地の状況や道路情報を伝えることで、 ボランティアを受け入れる被災自治体の態勢を補った
    • ・この取り組みを受け、NEXCO東日本は、首都直下型地震を想定し、救援・救護に向か う支援部隊やボランティア向けの情報発信拠点となるエリアを整備
    • ・関西広域連合は大規模災害発生に備え、事前にボランティアの情報窓口を設置できる場 所を選ぶ方針で、西日本高速道路会社などと協議する方向で検討
  5. 和歌山県における高速道路の防災活用
    • 5-1.南海トラフ巨大地震を想定した政府の広域医療搬送訓練*6
    • ・平成 25 年 9 月に実施
    • ・紀ノ川 SA と南紀白浜空港が訓練拠点となった
    • ・紀ノ川SAは、陸路で大阪、兵庫など各地から和歌山入りしたDMATの参集場所とな り、「広域災害救急医療情報システム」(EMIS)を利用した病院被災情報や患者受け入れ態勢などの情報を収集訓練が行われた
    • 5-2.和歌山県と NEXCO 西日本の協定締結*7
    • ・2つの協定
    • ・観光客誘致などに取り組む包括的相互協力
    • ・地域食材を使ったメニューの提供
    • ・県産品の情報発信
    • ・紀ノ川SA、印南SAなどで電気自動車の急速充電器の設置検討
    • ・災害時の連携強化
    • ・SAをドクターヘリ離発着可能とする
    • ・鳥インフルエンザ発生時などの高速道路 IC への消毒ポイント設置 等

    • *5 SA・PA活用 道路会社が計画 兵庫県の事例参考に 高速道に災害時拠点燃料供給やボランティア情報 2012/02/09 神戸新聞朝刊
      *6 南海トラフ想定 広域搬送訓練 命のリレー待ったなし=和歌山 2013/09/01 大阪読売 新聞 朝刊
      *7  観光客誘致と災害時連携 県と西日本高速が協定=和歌山 2011/07/06 大阪読売新聞 朝刊
    • 5-3.印南町が印南 SA 付近に防災広場を整備*8
    • ・「いなみ防災広場」を印南SA近くに今後10年近くかけて整備
    • ・海抜約 50m、広さ約 10ha
    • ・大規模災害発生時に、自衛隊の活動拠点、救援物資の集積所、住民の避難場所などとして活用
    • ・非常電源用の太陽光発電設備、仮設トイレ、食料や飲料の備蓄倉庫などの設置も計画
    • ・平時は住民が公園として利用できるように芝生化することも検討
  6. IC の防災拠点化事例:佐伯南IC*9
    • ・佐伯市が、東九州自動車道佐伯南 IC 一帯を東南海・南海トラフ巨大地震や風水害に備 えた「防災基地」とする計画
    • ・佐伯市は津波で市中心部を含めた沿岸部の大部分が浸水の予想
    • ・仮設住宅用地となる「防災広場」や大規模な備蓄倉庫を整備
    • ・隣接する市総合運動公園と合わせ、多数の避難者が長期生活できる2次避難所となる
    • ・市総合運動公園は県の広域防災拠点に指定されており、避難所として使える体育 館や武道場、生活用水として使用できる温水プール、トイレあり
    • ・面積は約5 ha
    • ・IC近接性を生かし、市外から来る自衛隊やボランティアの受け入れ拠点や、高速道路 から搬入された救援物資の分配所としても活用
  7. 三重県における道路結節点への後方支援拠点の整備*10
    • ・三重県が災害時に復旧活動の拠点となる「広域防災拠点」を北勢地域に整備
    • ・応援部隊や物資を集約して復旧作業を円滑に進めるための「後方支援拠点」と位置付け
    • ・東日本大震災の経験
    • ・支援活動で「どこに行けばよいのか分からず戸惑った」「情報を集約している場所 があればスムーズな支援ができた」などの意見
    • ・内陸部の岩手県遠野市が自衛隊やボランティア、救援物資の集積地(後方支援拠 点)となり、円滑な活動を支えた
    • →高速道路等の交通網が結節する三重県北勢地域に、「後方支援」の役割を有する防 災拠点を整備
    • ・被災時は全国からの消防や警察、ボランティアなどの応援部隊や物資、情報を集約し、 県内の被災地のニーズを調整した上で、各拠点に分配

    *8「防災広場」整備へ 高速道路のSA近くに 印南町 2014/06/12 紀伊民報
    *9 佐伯南ICに防災基地 2013/06/16 大分合同新聞 朝刊
    *10 北勢地域の広域防災拠点 応援部隊や物資を集約 後方支援の役割担う 県、候補地 選定進む 2012/10/09 中日新聞朝刊 地方版(三重版)
  8. 避難所としての高速道路の活用
    • 8-1.近畿地方整備局の取り組み*11
    • ・東海、東南海、南海地震などが起きた際、近畿一円の高速道路のSAや、国道沿いの「道の駅」を一時避難所として活用することなどを盛り込んだ防災対策の基本方針を発表
    • ・この方針は同局と12府県市、高速道路4社の合意に基づいたもの
    • ・SAやPA、のり面などを避難場所として整備
    • ・災害時に「緊急輸送道路」として優先利用される道路の耐震補強や、海岸線から離れた 道路網の整備も実施み
    • 8-2.三重県の事例*12
    • ・紀伊長島IC近くの田山地区
    • ・紀勢道が津波からの避難場所となっている
    • ・標高 30m の本線まで避難路が延びる
    • →工事車両が本線に出入りするために使っていた側道を活用
    • ・「避難先の選択肢が増えるのはありがたい」(区長)
    • 8-3.和歌山県の事例*13
    • ・すさみIC―太地IC間
    • ・高台の代わりに高速道路に避難できるように、避難路を約1キロ間隔で設置
    • 8-4.三陸沿岸の事例
    • 出典:国土交通省東北地方整備局道路部「復興道路・復興支援道路の概要について」、『高速道路と自動車』第 55 巻第 9 号、平成 24 年 9 月、pp.26-30

    *11 高速道SA 避難所に 近畿一円 災害時活用 2012/02/03 大阪読売新聞 朝刊
    *12 紀勢道 東紀州へ 3・24紀伊長島IC開通 (下) 高速道路の防災機能
    2013/03/24 中日新聞朝刊 地方版(三重版) *13 近畿道紀勢線、海側ルートへ 避難所利用も期待 /和歌山県 2012/08/02 朝日新聞朝刊
  9. 道の駅の防災拠点化*14
    • ・高速道路 SA・PA の事例ではないが、類似するので紹介しておく
    • ・東日本大震災を踏まえ、防災機能を備える道の駅が倍増(国土交通省)
    • ・主要道沿いにあるため物資を集めやすい
    • ・大きなトイレや広い駐車場などを備えている
    • ・レストランなどに食料の備蓄がある
    • ・道の駅は全国に 1014 カ所(H25.10現在)
    • ・うち非常用発電機(約2千万円)、貯水槽(約1千万円)、非常食や毛布の備蓄 倉庫な どの防災機能を有するものが 143 カ所
    • ・近畿では兵庫県2、滋賀県1、和歌山県1
    • ・自治体が道の駅を避難所や防災支援拠点に定め、国交省が整備資金を拠出・補助
    • ・宮城、岩手両県は県管理道路沿いの道の駅の大半を防災拠点化する方針
    • ・高知、徳島、静岡県なども整備を急ぐ方針
    • ・和歌山県も、道の駅を道路利用者の一時的な避難場所と位置づけ、避難施設や非常用 電源などを整備する方針
    出典:近畿地方整備局資料「東海・東南海・南海地震を想定し、紀伊半島沿岸部の道路啓 開の進め方を策定」(平成24 年 2 月 6 日)

    *14 道の駅、災害へ備え加速 発電機・貯水槽など 東日本震災後に倍増 2013/12/03 朝日新聞 夕刊
  10. 紀ノ川 SA の活用意義と可能性
    • ・和歌山県の入り口に位置
    • ・高規格道路網が結節
    • ・三重県の北勢地域のような「後方支援拠点」にできないか
    • ・ただし紀ノ川 SA は京奈和自動車道とは接続しない
    • ・和歌山北 IC を使えば紀ノ川 SA 下り→和歌山北 IC で折り返し→京奈和自動車道への ルートは取り得る

    ・・・など次回の検討課題とします。

    出典:和歌山河川国道事務所パンフレット「国道24号京奈和自動車道紀北西道路」

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