和歌山大学独創的研究支援プロジェクト 紀伊半島における災害対応力の強化
-想定を越える災害への備え-
阪神・淡路大震災は、我が国における近代的な大都市を襲った初めての大規模直下型地震でした。この震災では、木造老朽家屋が密集し、道路・公園等のオープンスペースが不足している密集市街地において広範な地域が焼失する被害が発生しました。このような防災上危険な密集市街地は全国に多数散在しており、道路・公園及び諸活動の拠点となる防災拠点施設等の地区公共施設の整備や建築物の耐震不燃化を総合的に推進するとともに、地域の防災力向上のため住民参加のまちづくり活動への支援が求められています。
そのため、防災まちづくりの第一歩として住民が安全性・危険性を点検するワークショップが各地で開催されています。しかし、これまでに用いられる判定方法はGISにデータを入力して計算するなど方法が複雑で、なおかつ専門知識が必要なことから、地域住民が容易にできませんでした。そこで、本研究では、地域住民がワークショップで容易にできる手法を開発し、都市の防災力の評価をまちづくりに活用することを目的としています。
都市災害危険度判定とは、過去の主な地震災害や各種の研究成果において被害との因果関係が概ね明確である市街地の属性について、防災上の観点で都市的なレベル、地区のレベルそれぞれから市街地の属性の現状を評価し、防災性を向上させるためのまちづくりを行う基礎的資料として活用するものです。具体的には、大規模地震で火災と建物倒壊が都市に重大な被害をもたらすという点から、
国土交通省が策定した都市防災実務ハンドブックに掲載されている評価式をもとに、地域住民による実測調査(写真)や手計算で算定可能な評価式の開発を行ないました。
さらに、和歌山県和歌山市今福地区において、ケーススタディを実施しています(図)。1945年7月の空襲により和歌山市の中心部はほとんど焼失しましたが、今福地区の被害は小さかったため、戦前、戦後に建てられた老朽建物が密集しており、幅員4m未満の道路が多く残る戦前とあまり変わらない地区形態を保っています。都市災害危険度を従来の詳細式と新たな評価式で判定し結果を比較することで、開発した評価式で概ね正しい評価ができることを確認しました。