和歌山大学独創的研究支援プロジェクト 紀伊半島における災害対応力の強化
-想定を越える災害への備え-
ダムは、河川の氾濫を防ぐ治水、電力や生活用水を確保する利水など、我々の生活にとって重要な役割を果たす社会資本です。しかし、近年多発する台風や集中豪雨などの気候変動に伴う堆砂物や流木などの漂流物がダム貯水池に流入する問題が生じています。これらのダム流木は、ダム管理上の障害となるため、適宜引き上げられ、一部は有用物として利活用されたのち、残りは一般廃棄物として焼却等により処分されるのが一般的です。県内に甚大な被害を及ぼした平成23年の台風12号では和歌山県内で18,600トンの流木廃棄物が発生し(ダム流木5,900トン)、その処理費用は2億4千万円にのぼりました。
ダム流木を管理する上では、ダム流木の堆積状況を定量的に把握することが有効です。ダム湖面の流木量を面的に把握するには、湖面の真上から直投影で撮影した画像をもとにダム流木部分の画素数を計量する方法が考えられますが、それを定時観測することは困難です。そこで、ダム湖畔から撮影した斜投影画像を直投影画像に画像変換する方法を開発することを目的として、ダム湖の縮小画像を用いた室内実験を行い、より精度の高い変換方法について検討しました。
ダム湖面の写真をA0サイズに出力した用紙上に、流木に見立てた矩形物を置き、それを囲むように点をプロットし、ダム湖岸道路からダム湖中央を臨む俯角に相当する約8℃の角度から撮影した画像を平面射影変換(homography)し、変換後の矩形物の画素数の、直投影画像の画素数に対する比率を求めることにより、射影変換による再現性を評価しました。変換には画像変換等に適したプログラミングソフトopencv上で動作するプログラムを用いました。
分析の結果、一定数のプロットをもとに変換することで、再現性を確保できることを確認しました。現在、ダム湖畔道路上に設置したインターバルカメラによる定点観測を行っており、今後は、実際のダム流木画像の射影変換を実施する予定です。