2011年5月2日、屋上天文台指導メモ (2011年5月5日、富田晃彦まとめ) ドーム横に設置してある全天モニター (1) 昼夜対応、全天候対応の、魚眼レンズでの全天を一定間隔で撮影している。完全に全天ではなく、天頂から70度程度の角度までの撮影となっている。カメラの絞り、カメラのゲイン(感度)、撮影の露出時間の三者を変えることにより、快晴時から夜間まで、幅広い照度に対応して撮影できる。もちろん太陽像はサチってしまっている(明るすぎて白飛びを超えてしまい、縦筋の流れ出しが出てしまうこと)。透明度の良い、月明かりのない快晴夜では、3等星まで撮影できている(北斗七星やオリオン座の星の並びが確認できる程度)。 (2) ドーム下の待機室にあるPC(Windows XPマシン)で制御している。このPCは連続運転させている。写真はこのPCのハードディスクに収められ、外部からインターネット経由でその画像を見ることができる。URLは(http://133.42.39.10/)。携帯電話からもアクセスできる。なお、このPCはサーバーとしてそんなに能力はないので、上記URLは、天文ゼミ関係者にのみ知らせている。観測結果を吟味する際にその時の天候がどうだったか確認するため、またこれから観測できる天候か検討にするために利用している。天体観測に関係なく、和歌山大学上空の現在の天候の確認のために、いつでも利用できる(したがって、気軽にアクセスしてもらって結構)。 (3) 時々この全天モニターは、写真撮影のエラーを出し、画面が真っ青になる。これを見つけたら、すぐに富田まで連絡を。 天文台ドームの作業 (1) ドーム内の照明について:壁面に2つずつで1組、合計2組ある。うち1組は、階段下からon/offできる。ドームを去る時は、階段下からon/offできない組のものをドーム内で消してから、階段を下りる。階段の上にある照明は、階段下からon/offできる組のもので、これで、どちらの組のものか判断する。ドーム内の作業机の上には卓上ランプが置いてある。卓上ランプは明るさが変えられるスライドバー(上下)がついている。いずれの照明も、切れていないか点検し、切れていればすぐに富田に連絡を。 (2) ドーム内の一方通行:ドームに上がって、反時計回りに回る、と決めておく。帰る時は時計回りに回って階段に向かう。望遠鏡の電源ラックの望遠鏡の間は、機器の配線で使う空間としておく。また、電源ラックのボタンに不用意に触ることがないようにしておく。そのために、この空間は空けておく。長時間の観測で判断力が鈍っても事故を起こさないように、このように杓子定規な決まりを作っておく。 (3) ドームのフック:南側の1ヶ所だけ 付け/外し をすると決めておく。本来なら1ヶ所だけの固定は全体の力のかかり具合から考えて好ましくないが、作業が過度に煩雑になるのを防ぐためと、これも長時間の観測で判断力が鈍っても事故を起こさないための、杓子定規な決まりのひとつ。ドームに入ってフックがかかっていると、誰も観測していないという判断ができ、自分が観測しているということを示すために、フックが外れていることを見せることができる。フックは留め金土台のすぐ横に置いておく。 (4) ドームの電源:ドーム北側の壁に配電盤の箱があり、箱の扉左の小さなボタンをおして取っ手を出し、それを持って扉を開ける。配電盤の中、一番左手にブレーカーがあり、それを上に上げるとドームの電源が入る。電源が入ると、配電盤の扉中央上側のランプが点灯する。夜間の観測ではこのランプがまぶしいので、テープで減光させてある。なお、ドームのフックを取る作業の前にドームの電源を入れてはいけない。万が一ドームが回転しては危険だからである。また、ドームのフックを付ける作業をする際、その前にドームの電源を落とさないといけない。フックの付け/外しの時は、ドームの電源が入っていないことを確認すること。 (5) ドームスリットの開閉:ドームの配電盤の扉を閉め、「開」のボタンを押せば、スリットは開き始める。全開すると自動的に止まる。全開させずに途中で開くのを止めたければ、「停止」のボタンを押す。その状態で止まり、自動的に閉まりなおすことはない。ドームスリットを閉めるときは、「閉」のボタンを押す。閉まりきると、自動的に止まる。閉まっている途中の状態で止めたければ、「停止」のボタンを押す。夜間の観測の時は、全開で問題ない。もちろん、降雨があれば、即ドームを閉める。後述するように、本来なら対物のカバーを付けてからドームを開閉すべきだが、降雨といった緊急事態なら、対物カバーをかける前にドームを閉める。ドームの回転方向によっては、「閉」ボタンを押してもドームが閉まらないことがある。その時は、ドームを右か左に少し回転させると、閉まるようになる。開くときも、同じように、ドームの回転がある方向だと「開」ボタンがきかないことがある。 (6) ドームの左右回転:「右」あるいは「左」のボタンを押しているときだけ、ドームが回転する。ドームスリットの開閉の時はもちろんだが、特にドームの左右回転の際、ドーム近くに人が近寄っていないことを確認すること。万が一ローラーにはさまれたり巻き込まれたりすれば、大事故になる。ドーム内で複数人が作業しているなら、「ドームを回すよ」「いいよ」と声を掛け合うことが必須。声を出しての確認は、事故防止にも大変有効。 (7) ドームはなぜあるか:雨天の際に迅速に雨をよけられる、迷光を遮断する(特に大学内のナイター設備や市街光)、風をよける。風よけは大事で、強風なら望遠鏡が振動しかねない。振動は、写真撮影の大敵(星像がブレる)である以前に、機器にとってよくない。夜露を必要以上につけさせない効果もある。またドーム内の観測者に快適な作業環境を提供する。 (8) ドーム内通気の必要性:ドームは、外気との温度差(これがあれば局所的に乱気流をつくり、写真撮影の際の星像の悪化を招く)を作るという観測上の難点も持ち合わせている。そのため、観測に先立ち、ドームスリットを全開にして外気をよく通しておくことが必要である。これには最低1時間を要する。一方、昼間からドームを開けていてはいけない。ドーム内が日射でよくあたたまり、夜間にも外気より高温になりつづけては元も子もない。もちろんドームスリットを閉めておいてもドーム内はある程度あたたまってしまう。それを低減させるために、ドームは反射性の素材(一般に、鏡状または白色)で覆われている。だいいち、望遠鏡の精密機器には日射は大変過酷な環境になる。以上から、日没少し前にドームスリットを開けるのがよいとされている。もちろん高シーイング(星像がよく落ち着いた状態)が必要なければ、観測直前にドームを開けても問題ない。 望遠鏡について (1) 望遠鏡は対物レンズ(凸レンズ)ないしは主鏡(凹面鏡、一般に放物面)によって像(実像)を作る機器である。凸レンズで像を作るものを屈折望遠鏡、凹面鏡で像を作るものを反射望遠鏡と呼ぶ。いずれの型でも、眼視の際は接眼レンズを用い、これは鏡ではなくてレンズである。接眼レンズがレンズであっても、最初の像の作成で凹面鏡を使っていれば、反射望遠鏡である。 (2) レンズと違って鏡であれば、片面だけの研磨だけで済む、枠でなく背面全部で支持できる、薄くして軽くすることができることから、大型の望遠鏡では反射望遠鏡が採用されている。屈折望遠鏡の方が作りが簡単のため、小型の望遠鏡でわざわざ反射望遠鏡が採用されることはあまりない。だいたい口径20-30 cmくらいより大きなものは、まず反射望遠鏡になる。 (3) 屈折望遠鏡は筒先に対物レンズを付け、筒の手元に接眼鏡を付け、筒内が密閉されている。光路は直進的である。反射望遠鏡は筒の根元の主鏡で光を受け、筒先の副鏡で光路を折り曲げる。光路の折り曲げ方で、ニュートン式、カセグレン式、クーデ式といった形式名がついている。屋上天文台のものは、カセグレン式の反射望遠鏡である。屈折望遠鏡と比べて反射望遠鏡は、光路の折り曲げのために、筒がずんどうである。どの形式であっても反射望遠鏡では筒先が開放されている。このため、反射望遠鏡は屈折望遠鏡と違って筒の内外で空気の流れができ、筒内外で温度差があれば、局所的な乱気流を作ってしまう。そのため、反射望遠鏡はドーム内の通気と同じように、観測に先立って対物のカバーを取り、筒内の空気をよく入れ替えておかないといけない。 (4) 像ができる位置に検出器(ここでは2次元(=面状という意味)の、光を感じる機器)を置けば、そのまま像を記録することができる。この場合、望遠鏡は巨大なカメラレンズとなる。CCDカメラ(ST-9EやSTL-1001Eといったもの)で撮像する際は、このような方法を取っている。一方、実像ができる位置に目を持っていっても、目には一面ぼやけた光を感じるだけで、形あるものとしては見えない。像ができるところから少し離れてなら、その像を見ることならできる。せっかくなのでその像を拡大して眼視したい。拡大するのは、接眼レンズである。検出器を置く場合、接眼レンズを用いた像の拡大は必ずしも必要ない。記録した像を、後で機械的に拡大すればいいからである。もちろん接眼レンズを通して見える虚像(「スクリーンなどに映し出せる像」は実像であるが、「通して見える像」は虚像である)を、一般のデジカメ(携帯電話のカメラ)で撮影することもできる。眼球の場合もそうだが、虚像を見る際、レンズを通して検出器あるいは網膜上に実像ができている。 (5) 像を記録する検出器として、かつては、写真乳剤を化学的に「日焼け」をさせ、現像という「湿った」作業を必要とした写真フィルムが使われていた。現在は半導体を用いた「乾いた」CCDカメラを用いている。縦横に細かく区画分けされた半導体のピクセル(画素)に光子が当たると、電子が飛び出す(光電効果)。強い光ほど発生電子数が多くなり、その電子数を電気回路的に読み出している。なお、CCDとは本来、この読み出しの方式の種類名のことである(CCD方式以外の読み出し方がある)。CCDカメラで得られた画像は、そのままPCで読み書きできる電子データである(写真フィルムの時は、現像した写真をスキャナーで読み込ませていた)。 (6) 対物レンズあるいは主鏡が作る像が、望遠鏡の実力を表している。像は明るい方が、また解像度が高い方が優秀である。これは対物レンズあるいは主鏡の口径に依存している。屋上天文台の望遠鏡の反射望遠鏡の口径は60 cm、屈折望遠鏡の口径は15 cmである。口径が大きい方が像は明るい(口径の2乗に比例して明るくなる)。口径が大きい方が、分解できる最少角度は小さくなる(分解能が高くなるとも表現でき、口径に比例して高くなる)。口径と分解能の関係は、光は波動の性質を持っていることから起こる「指向性」から来ている。この分解能は光の波長に反比例する。したがって、電波のようなとても長波長の電磁波では指向性がとても悪くなる。 (7) 対物レンズあるいは主鏡が作る像の大きさは、対物レンズあるいは主鏡の焦点距離に比例する。焦点距離が長い、「度の弱い」ものであれば、像は大きくなる。しかしそれにともなって像の明るさは落ちていく。口径が同じであれば、焦点距離が変わって像の大きさが変わっても、像の分解能は変わらない。屋上天文台の望遠鏡の反射望遠鏡の焦点距離は7800 mm、屈折望遠鏡の焦点距離は1800 mmである。反射望遠鏡に(接眼レンズなしで)CCDカメラを取り付けて撮影すれば、7800 mmレンズ(像を作るのは鏡であるが)を持ったカメラで撮影した、ということである。 (8) 接眼レンズは、像を拡大する役目を持っている。だから「度の強い」レンズのほうが眼視の際の拡大率は大きくなる。度の強いレンズは、焦点距離が短いものである。焦点距離は接眼レンズにmm単位の数値として書かれている。また焦点距離の短いものほど接眼レンズのサイズが小さくなるので、一般に大きな接眼レンズは低倍率、小さな接眼レンズは高倍率のものに対応している。倍率は、対物レンズあるいは主鏡の焦点距離を接眼レンズの焦点距離で割った値になる。主鏡の焦点距離7800 mmのものに、焦点距離60 mmの接眼レンズを取り付ければ、倍率は130倍ということになる。このように望遠鏡の倍率は可変である。だから「この望遠鏡は何倍ですか」という質問はおかしい。「今は何倍ですか」なら質問として成り立つ。望遠鏡の実力は口径で測る。もちろん口径に応じた適正倍率がある。有効最高倍率は、口径をmm単位で表した数値程度である。屋上天文台の反射望遠鏡の場合、口径は600 mmなので、600倍程度まで上げられる、ということになる。600倍というのは、対象までの距離が600分の1になる、ということである。 望遠鏡の準備 (1) 望遠鏡の電源は、ドームの電源とは別にある。電源ラックがあり、左下に鍵を差し込むところがある。そこに鍵を縦に差し込み、鍵を横に倒し回し、スイッチをonに倒せば望遠鏡本体に電気が通る。反射望遠鏡の筒内のファン(筒内の空気を積極的に流すための工夫)をはじめ、独特の音がする。いつもの音はどんな音か、覚えておく。いつもと違う音、異様な匂い、めったにないが、異様な発熱を感じたら、すぐに電源を落とす。電源を落とすのは、スイッチをoffに倒すだけ。鍵を抜くなら、横に倒した鍵を縦に回し戻し、抜けばよい。異常を発見したら、すぐに富田に連絡を。 (2) 反射望遠鏡は、観測に先立って筒内の空気をしっかりと入れ替えておかないといけない。ドーム内の通気と同様の問題である。 (3) ドームスリットを開閉する際、望遠鏡の筒に何かの物を落とす危険がある。そのため、ドームスリット開閉の際は、反射望遠鏡(そして使うのであれば、屈折望遠鏡の)の筒先のカバーは付けたままにしておく。ドームスリットを開けてから筒先のカバーを取る、逆に筒先のカバーを付けてドームスリットを閉める、という順番である。なお、降雨になったなどの緊急事態の際、対物カバーをかけることより、すぐにドームスリットを閉めることを優先させる。 (4) ファインダー(これは小型の屈折望遠鏡)と主望遠鏡の反射望遠鏡、副望遠鏡の屈折望遠鏡は互いに平行に設置され、いずれも同じ方向を向くようになっている。ファインダーは第一次の視野確認のために、観測装置は主望遠鏡に取り付け、観測中の視野の細かな確認は副望遠鏡で行う。しかし写真フィルム時代と違ってCCDカメラはその場での視野確認が容易なため、副望遠鏡の出番がめっきり減ってしまった。とはいえ、観望会の際、副望遠鏡があることは望遠鏡が2台あることと同じ効果を持つので、役目がないわけではない。 (5) 写真撮影であれ、眼視であれ、焦点を出す(ピントを出す)ことをしなければならない。もっとも鮮明に見えるところが、ピントが出たところである。それは像が一番小さいところであり、もっとも暗い星まで見えたところである。像が小さいということは、淡い光の星の光も各点各点に集まることであり、背景のノイズに打ち勝って見えてくるようになる。写真撮影では、対物レンズあるいは主鏡が作る焦点面(焦点という点ではなく、面である)にカメラの検出器を置くようにすればいいので、ピントの位置は機械的に決まってくる。眼視の際は、それぞれの目の遠視/近視のピントずれのために、各人でピントの位置が少しずつ違っている。だから、各人ピントを合わせなおさないといけない。これは積極的にやる必要がある。逆に言えば、どんな遠視/近視の人も、望遠鏡のピントをきれいに出すことができる。望遠鏡観望にピンボケはないのである。また接眼レンズには目をしっかり近づけた方がよい。その方が視野広く見ることができる。そのため、眼鏡をかけている人は、眼鏡を取って直接接眼レンズをのぞきこむ方がよい。もちろん、眼鏡をかけたままでも見えることは見える。しかし、眼鏡のレンズ面を接眼レンズの枠にあてて、レンズ面を傷めることが心配である。 (6) 接眼レンズを焦点距離の短いものに変えて高倍率にすれば、天体の見える明るさはその分、暗くなる。像の分解能は望遠鏡の口径ですでに決まっているので、高倍率にしたからといっても、像が大きくなった分だけ、細かいところが見えてくるわけではない(細かなところが見えやすくはなっているだろうが)。なお、接眼レンズの焦点距離の数値の前に書かれているアルファベット(KやOrなど)は、接眼レンズのレンズ組の型である。原理的にはレンズ1枚でいいのだが、1枚のレンズはさまざまな収差(視野全体でしっかりと焦点を結ばないこと)があり、複数のレンズ組で収差を軽減させているのである。実際の使用の際、レンズ組の型の違いを気にすることはない。焦点距離の長い接眼レンズではK(ケルナー)、短い接眼レンズではOr(オルソ)といった型がよく用いられる、ということだけである。 夜空の背景光 (1) 夜空はほんのり明るい。これは、空のきれいな山の中で、月明かりのない、透明度の高い暗夜であっても、周りの木や建物は真っ黒に見えても、空はほんのり明るく見える経験からわかるだろう。空の明るさの原因は、(1) 大気中のちりが都市光のような人工的な光を反射させている、(2) 地球大気の分子・原子が発光している、(3) 地球大気圏外でも天然の背景光がある、の三者に分けられる。(1) は都市光から逃れることで、(2) は大気圏外に出ることで、避けることができる。 (2) 地球大気の発光は、昼間に太陽光(特に紫外線などの波長の短い光)を浴びて励起した分子・原子が、時間をおいて脱励起することで起こっているものである。いわば、天然の夜光塗料である。目ざまし時計の夜光塗料の場合と同様、夜間、時間をおいてこの夜光の明るさは減じていく。太陽活動の盛んな時は、夜光が明るくなる。夜光は日によって少しずつ違っている。大気中の微粒子(小さな固体の粒子)が多いときは、都市光の反射だけでなく、大気の透明度も落としてしまう。雨が降った後、大気中の微粒子が洗い流されて透明度は上がる。しかしこういう時は往々にして、気流が整然としておらず、シーイングが悪い(望遠鏡で星を見ると、星がよく「踊って」いる)。 望遠鏡の粗動と微動 (1) 望遠鏡の架台は、方位(水平方向)と高度(上下方向)の2方向に振るための軸をもった経緯台(けいいだい)と、日周運動方向(赤経方向)とそれに垂直な方向(天球の南北、赤緯方向)の2方向に振るための軸を持った赤道儀(せきどうぎ)の2種類がある。屋上天文台の望遠鏡は、赤道儀という架台に乗っている。赤道儀の中でも、フォーク型とよばれる赤道儀である。 (2) 屋上天文台の望遠鏡は、赤道儀の粗動(目標天体のだいたいの方向へ高速で動かすこと)は手動である。日周運動方向の軸には時角目盛(天の子午線を基準に経度方向に張った座標)、赤緯方向の軸には赤緯目盛が読めるようになっている。赤緯目盛は、望遠鏡粗動の操作の際、手元近く見える。0度は天の赤道方向を示している。赤緯方向をそこに固定し、日周運動方向(赤経方向)に望遠鏡を振ると、地平線真東から地平線真西を通る、春分・秋分の日の太陽の動きと同じものが見える。赤緯目盛で負の数は天の南天を示し、正の数は天の北天を示している。+90度は天の北極(北極星は+89度にあって、ほぼ天の北極の目印になっている)を示しており、その方向に望遠鏡を向けると、日周運動方向に望遠鏡を回しても、望遠鏡の指し示す向きは一定である。 (3) 和歌山大学は北緯34度に位置しているので、北極星(ここでは天の北極の意味で)は地上34度の高さにあり、屋上天文台の望遠鏡の赤道儀は床面から34度の傾きを持っており、望遠鏡の赤緯目盛+34度に向ければ、望遠鏡は天頂を向くことになる。 (4) 日周運動のため、望遠鏡で天体を見ると、すぐにその天体は視野から逃げていくはずである。それを追いかけるのが、追尾である。夜空の星は、23時間56分で天球一周となっている。23時56分で望遠鏡の日周運動が一周するように歯車を回しているのが追尾のモーターである。望遠鏡の電源ラックに、追尾のon/offスイッチがある。なお、太陽は24時間で天球一周する(均時差というものを考えると、太陽が子午線通過から翌日の子午線通過まで、24時間を平均値として年間で若干増減している)。 (5) 望遠鏡は巨体だが、手で簡単に粗動ができる。これは軸の上にバランスよく乗せていることと、歯車の噛みがよいこと、ベアリングがしっかりしていることが原因だろう。製造業者の三鷹光器(みたかこうき)の製品が優秀だからである。もちろん、光学系も優秀で、星像も非常によい。 (6) 粗動のクランプは、赤経方向(RA)、赤緯方向(Dec)それぞれに押し引きのスイッチがある。押し込むとクランプがかかり、もう一度押して引き出すとクランプが解除になる。クランプのon/offの時、独特の音がする。この音をよく覚えておく。RA方向のクランプのon/offに動作不良がある。赤道儀横に、カム機構を備えた歯車をむき出しにしているところがある。これはRAクランプ機構の一部である。RAクランプスイッチを押し引きしてもいつもの音がしないとき、この歯車に少し手を添えて回転させようとすると、思い出したように動く。くれぐれも指を挟まないように。 (7) 粗動を助けるものに、赤経赤緯表示器(アストロスケール)がある。スイッチを入れたところが、赤経0時、赤緯0度にリセットされて表示される。望遠鏡の方向の絶対値は拾っていないが、粗動の際の相対値は返してくる。1等星を視野に入れて、赤経・赤緯を入力するという較正(というより、零点出し)を行えば絶対値を表示させることができる。ただし、粗動を速く行えば、相対値を時々読み違える(動かした分に対応する発生電気パルスの読みで、サバを読むからか?)癖がある。赤緯方向に至っては、正負逆の極性で出力される。そのあたりの癖を知ったうえで、使ってほしい。 (8) 粗動が済んだら、ハンドボックスで微動。ハンドボックスにH/L(高速/低速)の切り替えスイッチがある。望遠鏡の筒から出ているバンドボックスと電源ラックについているハンドボックスの両方でLに倒せば、Lになる。しかしLはとても遅い。実際の使用ではHにする。 望遠鏡を通した天体像 (1) 恒星はどんな高倍率をかけても、点像である。これは恒星があまりに遠方にあるからである。原理的には高倍率をかけていけば、いずれは円盤像が見えるはずである。 (2) 惑星は、あっさりと円盤像に見える。これは惑星が構成に比べて極端に近距離にあるからである。 (3) 肉眼で恒星を見ると、またたいている。望遠鏡を通しても、同じである。このまたたきの激しさがシーイングであり、シーイングが良いとは星像があまり動かないことである。またたきは、地球大気によるものである。気流が整然としているかどうかで、シーイングの良しあしが変わってくる。肉眼で惑星をみると、あまりまたたいていない。これは天球面上、点像でなく、円盤像だからである。各点像からの光はまたたくが、円盤像は多くの点像の積分と考えると、それらが相殺し合って、またたきが抑えられることになる。もっとも望遠鏡でも惑星の円盤像は、しっかりと踊っているので、惑星観望でも高シーイングは必須である。 (4) 望遠鏡を通すと、星の色が良く見える。人間の視力は、暗いところでは色覚が働かず、明暗や形を見分ける力の方を発揮させるからである。肉眼でも、1等星や惑星のような明るいものに限って色が見える。望遠鏡は大きな口径で、人間の瞳(最大で直径7 mmといわれている)よりずっと大きな集光力を持っており(口径60 cmなら、瞳に比べて集光力は約7300倍ということになる)、これで人間の色覚が働くまで明るく見せれば、色づいて見える。 (5) 地平線近くの天体を見れば、大気分散がかかって、地平線に垂直方向に虹色に分解されつつ像が伸びる。 (6) 土星は、衝(太陽、地球、土星が一直線に並ぶ)の時でない限り、土星本体が作る影が、土星の輪のどちらかの側に落ちる。土星を立体的に見せる、美しい効果もある。なお、土星の輪は土星の赤道面を示しており、地球の場合と同じく、公転面からいくらか傾いている。そのため、地球から見れば、土星の輪を北から見下ろしたり、真横になって見えなくなったり、南から見上げたり、ということを周期的に繰り返すことになる。今は、土星の輪を真横から見るときが終わったばかりで、まだ輪は細く見えている。土星は衛星が多く、実際、たくさん見える。その中でもタイタンは太陽系最大級の衛星で、ひときわ明るく見える。とはいえ、タイタンの円盤像まではさすがに屋上天文台で見ることはできない。 眼視での全天での星空案内 (1) 春は北斗七星と、春の大曲線。 (2) 夕方は、太陽の沈んだ方向から西を知り、北極星を見つけて北の方角と北緯のだいたいの値を知る。 (3) 黄道十二星座は、わかりやすいものと、わかりにくいものがある。 (4) 和歌山大学構内からは、天の川はまず見えない。 (5) 誕生星座は、誕生時に太陽が宿っていた星座というのがもとの意味。 (6) 星空案内では、ネタは1つか2つで十分。10人相手で、ネタ1つで1時間持つ。