本プロジェクトは、平成23年度宇宙教育研究所研究教育助成「宇宙を利用した防災事業」に採択されたものです。
紀伊半島は東南海・南海地震が発生すると、もっとも早いところでは地震発生後数分で津波が襲ってくるといわれています。
津波避難で重要なことは、標高が高い安全な場所へ速やかに避難することです。そのため、普段から生活の場の標高を確認しておくことは重要なことです。
しかし、自宅や学校の標高、避難経路の標高、避難場所の標高を実感することは難しいものです。
そこで、日本が打ち上げた準天頂衛星「みちびき」を利用して、身近な場所の標高を調べる『準天頂衛星「みちびき」を利用した街の標高Check!プロジェクト』を和歌山大学防災研究教育センターと宇宙教育研究所とで共同して立ち上げました。
準天頂衛星「みちびき」からの電波を受信する専用受信装置を使うことで、誰にでも簡単に標高を測定することができます。また、標高だけでなく緯度・経度も測定することができますので、海岸からの距離も調べることもできます。普段から身近な場所の標高や海岸からの距離を意識することで、津波へ備える意識が高まります。
カーナビや携帯電話など、人工衛星を用いた測位情報は、私たちの日常生活に密着して利用されています。代表的なシステムとして、米国によって運用されているGPS(グローバル・ポジショニング・システム)があります。
しかし、従来のシステムを用いた場合、日本国内のビル街や山間部では、建物や山に遮られて信号をうまく受信できず、測位が不能になったり測位結果に大きな誤差が出るというケースがたびたび生じてきました。
このため、日本のほぼ真上(準天頂)を通る軌道を持つ人工衛星を複数組み合わせた「準天頂衛星システム」によって、建物や山などの障壁物の影響をなるべく軽減し、高精度で測位できる場所や時間を拡大しようという取り組みが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって進められています。
「みちびき」は、準天頂衛星の初号機として、2010年9月11日に打ち上げられました。2011年6月より、測位信号の提供が開始されています。
「みちびき」からの信号は、従来のGPSの信号とほぼ同一の形式となっており、GPS信号と組み合わせて測位結果を補完することで、結果の信頼性を向上させることができます。
今後、「みちびき」1機による技術実証・利用実証の結果を評価した上で、追加2機を打ち上げてシステム実証が行われる予定です。初号機「みちびき」を含めた3機の衛星の組み合わせによって、日本の準天頂に常に衛星がある状態が確保され、測位精度や速度の大幅な向上が見込まれることになります。