2019.6.3和歌山の観光をよりよくするために

古川龍二さん

和歌山県商工観光労働部
観光局 観光交流課

卒業学科
和歌山大学経済学部経済学科50期卒業
企業サイト
https://www.pref.wakayama.lg.jp/ 外部リンク
取材者

取材者

山本 みくに

和歌山大学経済学部経済学科70期

━ 和歌山大学に入学した理由は何ですか。また、なぜ経済学部を選んだのですか。

和歌山大学経済学部に入学したきっかけは、経済学部が社会の仕組みを知る上で1番適していると考えたからです。私は文系で、国立大学を志望していたということもあり、高校の先生に進路の相談をした際に和歌山大学をお勧めしていただきました。経済というものは非常に幅広いため、勉強しているうちに自分のしたいことも見つかると思い、最終的には和歌山大学経済学部に入学しました。

━ 和歌山大学に入学してよかったことについて何かありましたら教えてください。

私も田舎で育ったので、和歌山の空気が自分に合っていたのかなと思います。ちなみに、出身は島根県出雲市で、大学には1998年に入学しました。大学生活を和歌山で過ごし、2002年に卒業しました。大学から南の方に行くと海があるなど自然に恵まれた土地だと思います。そのような土地で育つということは自らの人格形成にも繋がると思いますし、この場所で生活できたことは非常にいい経験であったと思います。また、島根県から来たということもあり、大学生活の間で和歌山に住んでいる同級生の家にお邪魔するなど、地域の人の温かみに触れられたということもいい思い出です。

━ 学生時代に力を入れていたことは何かありますか。

学生生活自体は楽しく過ごしていました。また、当時はマクドナルドでアルバイトをしていました。高校生の頃はアルバイトなんてできなかったですし、学生の狭いコミュニティの中で生活してきたので、アルバイト仲間や社員の方と関わるといういい経験をすることができました。

アルバイトには多くの時間を割きましたね(笑)。ですが、その方々とは普段の付き合いもそうですし、夜の飲み会も連れて行ってもらいましたね。なんていうか、人生経験ですね。

━ 和歌山大学に在学している間はどのようなことを専門に勉強していましたか。

経済学部だったので、普通に経済学のこと、例えば経済原論などを勉強していました。

━ 和歌山大学では観光のことについて勉強はしましたか。

特にしていなかったです。旅行は好きだったので北海道などに旅行はしていました。大学生の間、観光はレジャー、また楽しいという認識しかなく、学問としては捉えていませんでした。観光はレジャーだけではない、と今の仕事を通して感じています。

━ 学生時代の就職活動での思い出や得られた能力は何かありましたか。

私たちが就職活動を経験した時期くらいは、まだパソコンが入って広がり始めたくらいで、応募がなかなか…。今だったらインターンシップで早くから募集が設けられていますよね。会社って入ってみないと雰囲気が分からないので、先輩の話を聞いたりインターンシップに参加したりするということは非常に大切であると思います。私がマクドナルドを続けてそのまま入ったのは、「(マクドナルドで働くということは)こういうものだ」というイメージが既にあったので入社しました。また、社員とアルバイト(という二つの雇用形態)を経験して、経営に対する視点や責任感は大きく違うというギャップを感じました。社員はアルバイトのように指定された仕事をこなすだけではなく、自分で何かを作り上げるので、部下のモチベーションの管理だとか、考え方の違いだとかはマニュアル通りに進められる事だけではないのです。

━ なぜ公務員のいうお仕事を選んだのですか。

幅広い仕事をして自分のしたいことを見つけたいと思いました。その中で、行政の仕事をしようと決めました。行政って、広いですよね(笑)。経済学部ということもあったのですが、自分の選択肢が広くなるような幅の広い仕事をして、「自分が何をしたいのかということ見つけていきたいな」と思ったことが理由の1つです。

インタビューの様子

インタビューの様子

━ では、行政に深くかかわる仕事である公務員になってから経験したお仕事について教えてください。

入庁して初めの2年は総合交通政策課に勤めていました。ここでは課の庶務を担当していました。私は全体のとりまとめをさせていただき、これが行政の立場で働くということのスタートでした。

次は、2年間県庁で働いた後は出先の方へ行かせていただくことになり、橋本市にある伊都振興局で働かせてもらいました。そこでは土木工事の入札などをしていました。そのあとは総合防災課に勤めました。ちょうどそのころ紀伊半島大水害が起こりました。その時は自衛隊の方々と泊まり込みで、被害状況などの情報集めをして資料を作成するなどをしていました。このような災害を経験した後に東京の観光庁へ出向し、その後観光交流課に勤めることになりました。

━ 東京の観光庁に出向した時に経験したことを教えてください。

和歌山県(以下、県とする)から東京の方へ出向させていただいてまず感じたのは、現場とどう密接に付き合っていくのかということが非常に大切であると感じました。やはり、デスクワークだけではなく、現場と向き合ったりプライベートでも多くの経験をしたりするということが大事です。

また、東京にはたくさんの人がいるので、多くの付き合いができました。たくさん人に会って、多くのことを吸収するということを東京では経験することができました。 そして、東京の観光庁に行ったからこそ経験できたこともいくつかあります。その1つとして、観光に関する計画作りの知識については、和歌山の観光局に戻っても活かせています。

━ 今携わっている仕事について教えてください。

県の観光局には観光振興課と観光交流課に分かれています。私は観光交流課に勤めています。観光交流課では主に「インバウンド」を担当していて、外国人の誘客や受け入れに関する仕事をしています。私が担当しているのは、外国人観光客の受入環境整備を担当しています。例えば、二次交通が分かりにくいとか、Wi-Fiが繋がらないだとか、トイレが汚いだとかの要望に応えられるように環境整備をしています。

事例の1つとして、地域のバス事業者の皆さんと協力して熊野古道のバス停の整備などをしました。整理券をとって、運賃表と番号を見比べるというようなことは外国人観光客にとっては非常に難しい作業になります。また、本数が少ないため1本乗り間違えるととても致命的ですよね。それに、同じところに別路線のバス停が2本あることも多々あったので、乗るべきバスを間違えてしまう恐れもありました。そこで、熊野古道を走っているバス会社の方と和歌山大学の辻本先生や北村先生にもお力をいただき、バス停の統合、時刻表の共通フォーマット制作など行いました。また、そのほかは海外の旅行ガイドの方々が来てくださった時に、私たちが県をご案内したり、日程を調整したりするなどのサポートもしています。

━ 観光交流課に勤めてから実現できたことについて教えてください。

各バス会社のバス停の名称や場所を統一したこともその1つです。また、もう1つは昨年にサインを統一したことですね。4社のバス会社とJRの方々とでバス停の名称の統一について、分かりやすいように1冊のガイドブックを作りました。また、多言語のフォーマットを一度すべて作り直して統一するということもしました。本宮大社もバス停が同じところに2つあったのです。屋根のある1つの所に人を集めようということで、一か所にバス停を集めることにしました。

━ 和歌山県が観光に関して力を入れているということは何かありますか。

県の特徴として、関西空港が非常に近いとうことがあります。そこで、大阪や京都などの都市型の観光とは別で和歌山は自然が非常に豊かなので、外国人観光客の旅の行程の中に和歌山県を入れてもらえないかと考えています。そして、和歌山はやはり食が豊かなので、食を魅力の1つとして発信できたらどうかと思います。また、和歌山には鉄道会社や新聞社やといった、魅力を売り出す会社が少ないので、県としてしっかりPRしていくべきです。外国人観光客の面では、欧米の人が和歌山の歴史に非常に興味を持たれているので、企業に商材を持っていくなどの活動もしています。これらに関しては現場に直接行き、地域の人に話を直接聞くことでニーズを知り、新しい売り出し方をするというのが私たちの仕事では必須になってくると思います。また、食品に関しては誰でも旅行に行かれた際にはその地域の食品を食べたいし、買って帰りたいし、味わいたいですよね。観光でいう地産地消はとても重要であると考えています。

インタビューの様子

━ 和歌山の観光の在り方について、古川さんの意見をお聞かせください。

難しい質問ですね(笑)。和歌山ならではの物を多く売り出していくことが大切だと思います。和歌山にしかない歴史だとか食品だとかはまだたくさんあるので、それらを上手く使えばより多くの人に訪れたいと思わせることができるのではないですかね。

━ 仕事のやりがいについて教えてください。

観光以外の仕事を経験して、防災や福祉といった仕事は非常に大切であると思いました。人の命に関わるので、助からなかった場合は当然無力感が残ります。逆に助けることができると、自分の仕事に対するやりがいに繋がるのだと思います。また、観光ではお客様のニーズに応えられるように、様々なコンテンツを打ち出しています。お客様に喜んでいただけるようなプロモーションを作り上げることが私たちの仕事であり、それが成功した時にやりがいを感じます。

━ 和歌山の観光について、私たち学生にできることは何かありますか。

観光学部が開講している観光カリスマ講座への参加や共にプロジェクトを進めること、それに和歌山県庁でのインターンシップに参加することがいい経験になると私は思います。また、仕事をしている時でも「この仕事だったら学生に参加してもらえるんじゃないか」と思うこともあります。ただ、私たちと学生が関わる機会というのがないので、そういう機会をきっかけに学生と私たちとの自然な関わりが増えるといいなと思います。僕がやっていることを皆さん(学生)は知らないし、皆さんがしていることを僕は知らないので、このような交友が増えるとより良くなるのかなと思います。

━ おすすめの書籍があれば教えてください。

私はあまり本を読まなくて、どちらかというと雑誌をよく読みます。雑誌の方が最新の情報を多く掲載していますし、経済や政治のこともファッションのことも幅広い分野を知ることができるので雑誌を読みます。

━ 和歌山大学生になにかアドバイスやエールがあればお願いします。

私自身もそうだったんですけれど、することが見つからなければとりあえず色々なことにチャレンジすることが大切だと思います。授業や仕事においてもそうなんですけれど、後々(考えが)変わることはよくあるので、多くの人と出会って、様々な経験をするといいと思います。また、海外からいらっしゃっている観光客も増えているので、様々な国の文化に触れてみるというのも非常にいい経験になると思います。

取材の感想

取材の感想

今回、私が将来携わりたいと思う仕事をされている方にお話を聞くことができて、実際にどのようなことをしているのかを詳しく知ることができ、非常にいい経験になりました。観光にもさまざまな種類があり、今回の取材では外国人観光客の方を万全の状況で受け入れるためにどうするかを考えているという人の声を生で聞くことができ、私自身の観光に対する考え方が深まりました。

また、私は高校生の頃に外国人留学生に和歌山城を案内するというプロジェクトに参加した経験があります。その際に外国人留学生から和歌山についての質問を受けたのですが、言語はおろか和歌山についてほとんど知らなかったため、彼らの質問に答えられなかったという苦い思い出があります。今回の取材で仰っていたバス停の統一の必要性や食や歴史に関する知識などは、豊富に持つべきであると改めて感じました。

そして、古川さんが今までに経験された防災に関する業務であったり、プロモーションであったりは後々経験として現在の仕事に繋がっていると感じました。私も県に貢献できるような人材になれるように、学生の間に様々なことに挑戦したいと思います。

この度は、お忙しいところお時間をとっていただき、ありがとうございました。

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