2019.3.25大事なのはまずやってみること

永井誠さん

エヌ・ティ・ティ・システム開発株式会社
システム部 大阪支店

卒業学科
和歌山大学システム工学部情報通信システム工学科9期卒業
企業サイト
https://www.ntt-ipnet.co.jp/k/ 外部リンク
取材者

取材者

中林 朋夏

和歌山大学経済学部経済学科69期

━ 和歌山大学システム工学部に入学した理由は何ですか。

僕は学生時代から、RPGやアクションなどジャンルを問わずゲームが好きでした。ゲームをつくってみたいという気持ちもあって、プログラムにすごく興味がありました。だからプログラミングを学べるところを探して、和歌山大学に入学しました。

出身は大阪府堺市です。ギリギリ通えるくらいの距離だったので、ずっと実家から通学していました。昔は片道2時間ぐらいかかりましたけどね。(笑)

━ システム工学部でどんなことを学んでいましたか。

プログラミングを学んでいました。そのために入学したので、全力で勉強していましたね。プログラムをつくる課題や授業はもちろんありました。でも、ただつくるだけじゃなくて、システム工学部では基礎的な部分を教えてもらいました。プログラムの世界には、色々な種類の言語があるんですけれど、それぞれがどんな言語であるのかきちんと見分けがつくようになりました。基礎をしっかり学ぶことができたので、とても感謝しています。

和歌山県には組子細工という伝統工芸があります。お客様にプログラムで図面をつくって、完成品を見せられないか、という依頼が大学に来ました。ゼミでは、そのシステムをつくる研究をしていました。どうしたらお客様に見せられるようなものがつくれるのか、試行錯誤していました。

━ 学生時代に力を入れていたことは何ですか。

先程も言ったように、僕はプログラムを学びに行っていたので、それに関連することにはすごく一生懸命でした。大学で、皆、同じ課題が出されるじゃないですか。同じプログラムをつくるにしても、人によって違いが出てくるんです。競争していたわけではないんですが、「あいつには負けたくない」、「あいつのつくるものを超えてやる」というのが自分の中ではありました。仲間の中でも、一番早い、一番正確な動きをする、より美しいものをつくってやろうといつも全力でしたね。どういうものが美しいかっていうと、僕が思うのは無駄のない動きをするものです。プログラムって、つくって終わりじゃないんです。つくってリリースした後も、時代の流れでルールが変わったりすると、修正しなくちゃいけなくなります。美しいプログラムっていうのは、他人が修正する時にそれを見て、何がしたいのかがわかりやすいんです。僕も見やすいプログラムをつくることを目指しています。

永井誠さん

━ 就職活動での思い出を教えてください。

初めの頃は、就職活動をノープラン、ノーリサーチでしていたんです。僕はのんびりしていたので、インターンシップもせずに、3年生の10月頃から就職活動をスタートしました。就職しなければいけないという意識はあったんですが、何も考えていませんでしたね。ただ、就職活動を始めた時から、プログラムに関われる仕事をしたいとは思っていました。

とりあえず、面接のために履歴書を書き始めました。履歴書に証明写真を貼るじゃないですか。1社目の履歴書を書いた時に、スーツの上着を着ないで、カッターシャツだけを着た写真を使ったんです。そしたら面接行った時に、「なんでカッターシャツなの?」って一言目で言われましたね。(笑)「すみません」って言うしかなかったです。(笑)面接が始まってからも、趣味や特技を聞かれた時に「妄想です」って答えました。(笑)大失敗ですよね。この1社目の面接で大コケしたことが、トラウマというか一番の就職活動の思い出です。この苦い経験があったので、2社目以降はそれを元にして軌道修正していきました。大学内での合同企業説明会に参加して、情報収集をしました。僕が参加したのはあまり堅苦しくないもので、楽しかったですよ。その甲斐あってか、なんとか今の会社に就職できました。とりあえず経験してみるとか、事前に準備しておくのはとても大切だと思います。

━ 今のお仕事を選んだ理由は何ですか。

繰り返しになりますが、僕はプログラムに関わる仕事がしたかったんです。あと、大学で学んだことを生かせる仕事に就きたいと職種を絞っていった結果、システムエンジニア(以下、SE)という職業に就きました。学んだこと全てが仕事に役に立っていると思います。SEは、社会を上手く回すためのシステムを生み出す、要は裏方作業ではあるんですけどね。実感することはあまりないですが、人の役に立てる仕事です。SEになって良かったなと思いますね。

━ 現在、携わっておられるお仕事について教えてください。

完成した大きなシステムをお客様に使っていただいているんですが、使っていく中で、色々な要望が出てくるんです。その要望に合わせて、大きなシステムの一部をカスタマイズしていくというのが主な業務内容です。今あるシステムをお客様のやりたい、欲しがっているような形に近づけていく作業をしています。お客様の会社の運用やルールが変わったりすると、システムを変えなければいけなくなります。その度に、システムをカスタマイズしていきます。

もちろんお客様と話すことはありますが、僕はシステムのカスタマイズをメインに仕事をしています。何を求めているのかお客様に話を聞く人もいれば、聞いてきた話を基に設計・開発する人もいます。僕が主にしているのは、設計・開発ですね。どちらもSEの仕事ですが、皆で自分の得意なことを役割分担しています。

永井誠さん

━ SEになるにはどんな能力が必要ですか。

資格を持っているとか、プログラミングに関する色々な言語がわかるとか、知識があるのはもちろんいいことです。知識的なことも大事なんですけれど、SEに一番必要なのはコミュニケーション能力なんですよね。ここでいうコミュニケーション能力は、誰とでも仲良くなれるとか、誰とでも楽しく話せる能力のことではありません。自分が伝えたいことを相手にしっかり確実に伝える力、そして相手が伝えたいことを自分がしっかり汲み取る力。相手にその汲み取ったことが合っているかどうか、ポイントごとに確認できる力が必要だと思います。もし、お互いのスタートラインが違っていたら、余計な作業が増えてしまいます。ゴールが違っていたら、誰も喜ばないものをつくることになってしまいますよね。普段の仕事の中でも、お客様とのコミュニケーションを大事にしています。

僕も今、コミュニケーション能力を模索しながら磨いてるところです。まずは人の話をよく聞くことだと思います。人の話をよく聞いて、何を言っているのかしっかり受け止めることですね。伝えることに関しては、言葉だけじゃなくて、資料を有効に使うことも必要だと思います。どうしても、言葉だと聞くだけになってしまうので、相手の中に残りにくいんですよ。だから言葉だけじゃなくて、伝えたいことを事前に資料にするんです。そうすれば、視覚からも伝えることができます。そしてそれをいつでも確認することができます。実際にやるのは難しいので、初めは上手く話を汲み取れなかったり、伝えられなかったりするかもしれません。でも、何回も経験していくと、上手くコミュニケーションが取れるケースが出てくると思います。それをテンプレートにして、経験を積むことがコミュニケーション能力の向上に繋がると思います。

あとは、求めている答えを出す手順を、より細かく分割できる力ですね。過程を自分で筋道立てていく力というよりは、実際あることをきれいに箇条書きにしていく力です。これができると、よりプログラムがつくりやすいと思います。

知識的な面でいうと、資格は持っている方がいいです。国が認定している資格なんですけれども、基本情報技術者試験は受けてみたらいいと思います。その上には応用情報技術者試験、プロジェクトマネージャー試験などたくさんの資格の種類があります。これらの国が認定している資格は、持っているとステータスになると思います。僕自身は学生時代に取得した資格はありません。仕事をしながら勉強して取得できるものなので、焦って勉強しなくてもいいと思います。

英語の能力もあった方がいいと思います。現場に外国籍の方もよくいらっしゃいますが、今の職場で英語を話す機会はありません。でも、プログラムって基本的に英語で書かれているんです。単語がわかれば、そのプログラムが何をしているのか理解しやすいと思います。

━ SEにはコミュニケーション能力が必要とおっしゃっていましたが、永井さんご自身はどうですか。

実は僕、人と関わるのがあまり好きではないんです。(笑)学生時代から人と話すことが苦手でした。なんとか克服しようと、アルバイトには塾講師を選びました。塾講師は人にものを教えないといけないので、当然話をするのがメインの仕事です。バイトを通してでも、コミュニケーション能力を培いたかったんです。大変でしたが、良い経験になりました。就職してからも、コミュニケーション能力を磨こうとしてきたので、学生時代よりは伝える力もあると思います。今も、コミュニケーションを取るのは得意ではないですね。でも、お客様とお話をする中で、しんどいと思うことはないです。当然、僕は伝えたいことを伝えようとします。反対に、お客様のほうもやっぱり伝えたいことを伝えようとしてくれますからね。お互いに、伝えたいことはちゃんと伝えたいし、相手が伝えたいことを汲み取ろうという姿勢で話ができています。

━ 経済学部からでもSEになることができますか。

一般的に、SEは理系出身で、男性で、プログラムの技術力がものすごく高い、みたいなイメージがあると思うんです。確かに男性の社員は多いですが、うちの会社は理系出身と文系出身の比率は4対6くらいです。理系か文系かは関係なく、皆業務内容もほぼ変わりません。仕事をしていく上で、プログラムの力は必要です。でも、必要なプログラムの技術っていうのは、作業をしていたら自然に身に付いていきます。僕も高校時代は、プログラムの入り口すらわからない状態でした。大学からでも全然間に合いますし、理系、文系は関係ないと思います。先程も言ったように、コミュニケーション能力がある人が向いているので、技術的なことは後からでも大丈夫です。もちろん、入社してからは、先輩がちゃんと教えてくれます。皆、積極的に教えてくれるので、どんどんステップアップしていけます。

今から独学でプログラムを学びたいなら、一番簡単なものでいいので、プログラムをつくってみてください。インターネットには、プログラムを勉強したり、つくる参考になるサイトがたくさんあります。一つでもプログラムをつくってみることで、きっと入り口が開けます。その後はやればやるほど、どんどんプログラムがつくれるようになると思います。知識を付けるよりも、数をこなして経験した方がいいと思います。まず、やってみることが大事です。

永井誠さん

━ お仕事のやりがいは何ですか。また大変だと思うことはどういうことですか。

僕は業務上、お客様のところに行って作業することが多いです。月に1・2回、お客様が使っている大きなシステムが時間のかかる処理をするんです。その時に処理に立ち会って、不正なデータは僕が書き換えることもあります。またこの時にアクシデントが起こって、データが壊れたりしたら、お客様の業務が止まってしまいます。そうなると可能な限り、大至急で元に戻さなければいけないんです。仕事先に行って何か起こったら、それに対してその場で考えて対処しなくてはいけないのが大変ですね。これまでの経験を少しずつ蓄積していけば、ある程度は対処できます。でも、全く新しいことが起こると本当に大変ですね。

SEはプログラムに関われるし、陰ながらですが社会貢献もしています。大変なこともありますが、この職業が嫌だと思ったことはないですね。何か問題が起こった時に、お客様はすごく困るんですよね。それをちゃんと解決してあげると、安心した表情に戻るんですよ。そういう時に、やっぱりこのシステムは必要で、人の役に立っていると実感します。普段の日々の業務の中では、直接的に役に立っているという実感はあまりないかもしれないですけどね…

━ 永井さんがご自分で決めている仕事に対するポリシーは何ですか。

ポシリーや信念的なものじゃなくて、心構えになりますが、「人は必ずミスをするものだ」っていうのを心の隅に置きながら仕事をしています。何年も同じシステムを使い続けているお客様が、システムを破壊してしまって、電話をかけくることがあるんです。元から人間はミスするものだと思っておけば、落ち着いて対応することができます。「何でそんなことをしたんだ!」と責めるのではなく、これからどうするのかを考えるんです。もちろん、ミスの原因がわからないと根本的な解決にはなりません。でも、一番にするべきなのはミスの原因を探すことじゃなくて、どう解決していくかを考えることだと思います。

永井誠さん

━ 社会人になるために学生時代に身に付けておくべきことは何ですか。

人の話をよく聞く姿勢っていうのは重要だと思いますね。僕も新人の頃は、先輩方から色々なアドバイスをもらいました。アドバイスを素直に聞いてはいたんですが、自分なりに考える中で、それは違うだろうっていうアドバイスも正直ありました。違うと思ったら、自己流で作業を進めたりもしていました。でも、今同じことをするんだったら、先輩がアドバイスしてくれた方法を取ると思います。どういう意図があって言ってくれてるのか、それはどういう効果を狙ってアドバイスしてくれてるのかを聞くことが大切だと思います。あとはちゃんと素直に受け入れて考える姿勢ですね。とりあえず一旦自分の中に吸収しておこうっていう姿勢が大事だと思いますね。素直に聞いて、考えてみて、やっぱり自分のやり方の方が良いと思うなら、それで良いと思います。

今の現場にはあまり後輩はいないのですが、アドバイスする立場ではあるので、できるだけ伝えるようにしていますね。僕は上から指示したり、強制されたりするのは嫌いです。「こういうやり方があるよ」っていう提案の仕方をするように気を付けています。あとは、どんな意図を持って提案しているのかをきちんと伝えるようにしています。圧倒的に間違っている時は、理解してもらえるまで説明します。僕のアドバイスを聞いてくれなかったとしても、その人にはその人なりの考えがあって、その人の観点で正しいことをやっているので構いません。上からものを言ってしまうと、あんまり勉強や成長にならないですからね。今、僕は2年目の社員の教育係をしています。その子に対しては、悩み事をきいてくれるおっちゃんっていうスタンスで接していますね。(笑)年次によって新人の子に必要な能力っていうのは変わってきます。先を見据えた上で、必要な能力が身に付くように、それとなく促してあげられればいいなと思っています。

━ 学生におすすめの書籍があれば教えてください。

『はたらく細胞』というコミックです。アニメにもなっていますよね。コミックだとか、ライトノベルは楽しむために読むものだと思います。でも今は、ただ楽しい、面白い、だけではなくて、読めばプラスアルファで知識がついてくるコミックが色々と出版されています。そういうプラスアルファで知識を得られるようなものであれば、コミックでもライトノベルでも啓発本でも、どれも良い本であると僕は思います。小説も読まないことはなかったですが、学生時代もよく読んでいたのはコミックでしたね。その時から、プラスアルファで知識もつくようなものを好んで読んでいました。今も『漫画でわかる心療内科』や『ダンベル何キロ持てる?』を読んでいます。

━ 和歌山大学の学生に向けてアドバイスやエールをお願いします。

大学生のうちは何事にも一生懸命に取り組める時間だと思うんですよ。勉強、研究、趣味、遊びなど、今だったらそこに全てを注ぎ込めるはずです。「その一生懸命やった」、「自分はこれをやりきったぞ!」という経験はその後の成長の糧にもなるだろうし、物事を考える時の核になり得る経験だと思うんですね。思い付かないだけかもしれませんが、僕は学生時代にやり残したことはありません。どんな方面でもいいので、無茶するくらいの勢いで、何でも全力でやっていただければと思います。

取材の感想

取材の感想

私はSEに興味があるのですが、正直まだまだ勉強不足であると痛感しました。ですが、永井さんのお話を聞いて、まずは何事も挑戦してみることが大切なのだと思いました。何も知らないまま、経済学部だからとか、やったことがないからといって諦めるのはもったいないことだと思いました。新しいことを始める時は不安も付いてきますが、やり切ることで、どんな経験もこれからの自分のためになるのかなと思えました。今後はプログラミングをしてみるだけではなくて、興味を持ったことに全て挑戦していきます。永井さんのおっしゃっていた、まず人の考えやアドバイスを受け入れる姿勢は、今からでも重要なものだと思うので、心掛けていきたいです。

今回のインタビューを通して、SEのことだけでなく、仕事に対する心構えなどたくさんの刺激を受けました。大学生活も残り半分になろうとしているので、貴重な時間を何に使うのかを改めて考えるきっかけになりました。

お忙しい中、お時間を割いていただき、本当にありがとうございました。

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