2017.12.18興味のないところから人生は線に繋がる

柿花 隆幸さん

リミア株式会社(グリー株式会社100%子会社)
取締役

卒業学科
和歌山大学経済学部経済学科54期卒業
企業サイト
https://limia.co.jp/ 外部リンク
取材者

取材者

西川 紗布

和歌山大学経済学部経済学科69期

━ 和歌山大学に入学された理由は何ですか。

大学に行こうと思った理由は、「大学に行くと縁が広がる」と父に言われたことです。高卒だと18歳までの縁、大学に行くと18歳以上、また社会人になったときにはそれ以上の縁ができる、ということです。それを聞いたとき、大学に行こうかなと思いました。ただ正直、和歌山大学を志望していたわけではありません(笑)。

僕、高校のときに皆さんもびっくりするくらいのとても偏差値の低い高校に通っていたんです。受験生のとき、それまでに受験した大学に全部落ちてしまって、そのとき、国立大学を受けようといきなり思いついたのですが、学校の先生に大反対されました。でも、とりあえず受けてみようということで、推薦入試を受けて合格しました。

━ 和歌山大学の良いところはどんなところだと思いますか。

自然が多いことと、地元が好きで「良い人が多い」ということだと思います。大学4年生で、東京の企業に就職しようとして東京に行く機会が増えました。そこで出会うみんなはギラギラしていて、“将来社長になるんだ”、とか“大きな企業で出世するんだ”、とか希望ではなく「野望」を持った人が多かったです。それに比べ、自分たちの周りには野望を持った人は少なかったですね。“東京に出て一旗揚げてやる”、“こいつをだまして踏み台にしてやろう”、といった人もほとんどいませんでした。良い意味でも悪い意味でも、保守的な人が多いのかな。

━ 和歌山大学に行って良かったと思うことは何ですか。

友達に恵まれたことと、自由な時間ができたことですね。高校までは一匹狼で、友達が一人もいなくて、大学生になったら友達を作りたいと思い、今でも何年も集まっている友達ができました。その友達がとても財産だと思います。

柿花 隆幸さん

━ 学生時代に取り組んできたことは何ですか。

就職活動支援団体を作ったことです。僕が大学生のときには、「ワダイの人プロジェクト」のような活動がありませんでした。本庄先生に出会ったときに、先生も大学に着任したばかりで“いつか立命館大学のスチューデントリーダー制度みたいなものを創りたい”と言っていました。仲間たちと団体を立ち上げ、その延長線の1つがこの「ワダイの人プロジェクト」の活動だと思います。その活動には既にこの「ワダイの人プロジェクト」でインタビューを受けた長野さんも関わっていました。大学の頃は「柿花」というと変なイメージしかないくらい本当にやんちゃで、周りに迷惑をかけ続けていました。なので、最後くらい大学やみんなに恩返しがしたかったんです。

━ 就職活動での思い出はありますか。

人との出会いと、楽天に行ったことですね。大学とは別に外部の就職支援団体にも所属していて、そこには色々な大学の同期と、色々な就職先の同期がいて、そこで知り合ったメンバーと今でも繋がっています。今、30歳を過ぎて仕事でもある程度の権限を持つ年齢になり、他社の人達と仕事ができるようになってきました。“こんなことをしたい”と言うと、他の会社の人とそれが実現できるんです。それは、大学の垣根を超えた就職活動での出会いがたくさんあったからこそですね。楽天に就職したときは、たまたま先生から楽天のお知り合いの方を紹介いただいて、気に入ってもらいトントン拍子で就職が決まりました。今から思うと、自分でもなぜ楽天に就職するのかわからないまま就職し、インターネットの楽天市場のことも正直知りませんでした。入ってからサービスを知らないことに驚かれて、同期の人に激怒されたりもしました。「お前、面白いな」と気に入られて入ったのが楽天です。

西川 紗布

━ グリーに転職されたきっかけは何ですか。

楽天の次に入社したベンチャー企業で、人員整備を受けたことがきっかけです。ベンチャー企業で人員整理を受けて無職になったときに、元楽天で当時グリー執行役員だった方に“事業を立て直したいのだけど入社しない?”と言われ、入社したのがこのグリーです。1つ目の事業を黒字にしてから、“2つ目の新事業の組織が未熟なので立て直してほしい”と言われ、現在のリミアに至ります。

楽天で長期コンサルタントに従事し、新しいマーケティング知識を得るため、ベンチャー企業に再就職しました。そこでは営業責任者をしていて、会社もどんどん大きくなっていきました。しばらく上手くやっていたのですが、あるとき、人員整理が入り、そのとき部下と一緒にクビになりました。それまでは自分が一番になればそれで良いと思っていて、協調性なんて無くて、どんな手を使ってでも一番になりたい、という気持ちが強かったんです。だけど、クビになったときに今までやってきたそういうことが因果応報というか、、、跳ね返ってきた気がしました。そのときに立ち止まって、自分のことよりも部下のことを考えようと思い、3ヶ月間無職で、部下のお仕事探しを一緒にしたりしていました。部下のことを想うというのは、今の僕の仕事のベースにもなっていますね。

━ 現在のお仕事のやりがいは何ですか。

やりがいは、部下が成長することですね。部下が成長する瞬間を見るとき、とてもやりがいを感じて、自分は部下が失敗したときに、責任を持ってあげる勇気と決断がなければならないと思っています。様々な場面で、その決断をするときにやりがいを感じます。その決断があるから部下は成長できるし、その先に事業の成長もあるんだと思います。事業の成長ばかりみていると、事業は成長しても人がボロボロだったりします。そうならないためにも、その人の成長、特に顔ですね。どういうふうな顔をして仕事をしているかを見ています。僕は、毎日アルバイトから社員まで色々な人と話します。ある意味、話を聴くことが仕事ですね。

柿花 隆幸さん

━ グリーの良いところは何ですか。

社員と経営者との距離が良い意味で近いことです。大学生同士が、“これ面白いからしようよ!”と言っているような距離感で話しています。25歳の若手社員を社長とのミーティングに連れて行ったり、そういうときは若手社員も質問、会話もします。大きな上場企業のオーナー社長とこうして話せるタイミングは無く、それはとても良いことだと思います。あとは、社長が本当にインターネットが大好きだということです。社長が本気でインターネットが好きだからもうちょっと働いても良いかな、と思うし、大企業の社長がこんな新規事業のひとつのところにこんなに熱を入れるのか、というほど熱心に取り組んでいます。そこは今自分が働いている理由かもしれないですね。

━ 柿花さんが一緒に仕事をしたいと思う人はどんな人ですか。

各論より総論を話せる人ですね。大きな物事でとらえた上で、小さく考えられる人。より物事をシンプルに話せる人ということですね。地頭がいい人ということですかね。

━ 柿花さんの仕事に対するポリシーは何ですか。

人を裏切らないことです。来るもの拒まず去る者追わず。今まで、人に裏切られたことがあったからこそ、過去自分が裏切ってしまったからこそ、人をもう裏切らないと決めています。来る人は拒まずに歓迎し、去る人には憎しみを持たずに去らせてあげる、ということです。でも、その去った人たちもほんとは戻りたい、とかそういったときにはちゃんともう一度受け入れてあげる。これはどんな経営者にも、学生にも、仲間にも同じことを話しますね。

僕は基本的にマネジメントする立場として、人のために頑張りたいと思っています。自分が偉くなりたい、と思うと誰もついてこないです。でも、人のために頑張っていると、部下のみんなは偉くなってほしいと思うんです。求め過ぎず、人のために頑張ってやっていると勝手に偉くなるし、頼られます。様々な経営者に“お前は社長になった方が良い”とよく言われますが、そんなのには興味はありません。すごい一番手になりそうな人物だけど、限りなくみんなの二番手でいることが、僕のポリシーであったりもしますね。

━ おすすめの書籍を教えてください。

「金持ち父さん 貧乏父さん」「ユダヤ人大富豪の教え」この2つの本は結構良いと思います。世のビジネスの概念というものが載っています。和歌山大学の子に多い、保守的な考え方をする人がしないようなことが載っていたり、世の中の成功している人たちというのは、そういう考えでやっているのだ、とかリスクをとるとは何なのか、というような教えが載っています。今は分からないかもしれないけれど、今その本を読むのと年を重ねてから読むのはその都度その都度感じることが違うので、これはずっと持っていても良い本ですね。初めて読んだのは去年です。だから、もっと早く読んでおけばよかったと思います。

柿花 隆幸さん

━ 柿花さんが本を書くならどんな本を書きますか。

「ゴールは決めるな」という内容の本ですかね。なぜなら、ゴールを決め過ぎてしまうと人生楽しめないと思うからです。私はこれです、と決めている人はいるけれど、そのまま上手くストレートにゴールにたどり着ける人はなかなかいないと思うんです。例えば、野球選手。野球人口が多い中で、甲子園にいける人数は少なくて、またその中でプロになれる人も少ないですよね。ということは、その目標を達成するためにはずっと一つの技術を磨かなければならない、ということです。でも、甲子園に行けなかった人、プロになれなかった人は、野球以外で生きる術を学ばなければならないです。でも、そこに「野球」というゴールを決めてしまった瞬間、一握りの人はいけるかもしれないけれど、じゃあ後の人たちはどうするの?ということです。上手くいかなかったときの対応の仕方とか、裏切られたときの自分の自己処理の仕方、自分が裏切ってしまったときや信頼を失ってしまったときの事後処理の仕方等、失敗したときどうすべきか、そういう本を僕は書きたいですね。

━ 後輩に向けてアドバイスをお願いします。

今の大学生は、もっとビジネスの中心に出ていくべきだと思います。一番どこを目指すか考えて、遠いところをみて、総論をみて各論を落としていくような感じで世界を見ていくべきだと思います。アメリカに落とすのか、東京に落とすのか、大阪で頑張るのか、和歌山で頑張る!というのか、まずは大きいところを見ていくべきだと思います。“関西が好きなんです”とか言っている人もいるけれど、実は関東に出る勇気が無いだけだと思います。一度ビジネスの中心を見てみて、働いてみたりとか人と触れ合ってみたり、話してみたりしたときに、自分との差分が生まれると思います。そのときに、自分はその人たちとの差分を埋めるべきなのか、そうでないのかを考えてみるといいと思います。それは勉強も就職も変わらないと思います。基本的にお金が動いているのも東京で、次に大阪、福岡、名古屋、仙台、と決まっているわけです。これは今のところ変わりません。そういうときに自分たちはどう出るのか考えるべきですね。僕からのコメントは「がんばれ!」、というよりは和歌山大学にいるからこそ分かること、東京だからこそ分かること、を感じてほしいですね。もったいないと思いますね、和歌山大学には良い人材がたくさんいると思います。和歌山でのアルバイトは限られているじゃないですか。でも東京には和歌山ではできない仕事がたくさんあります。なので、夏休みの間だけでもインターンに行ってみるべきだと思います。外に出ることによって人生は変わります。戻ることは簡単だから。出ることは難しいんです。僕は元々東京で働くことは全然決めていなくて、岸和田に住んでいたので東京に出ることは祭りを捨てることになり、嫌でした。外を知らず、外に出るのが怖かったんです。岸和田から出ていくとき、親は引き止めず送り届けてくれました。それは良い環境だったと思います。今一度、自分で意思決定することが大事だと思います。ずっと同じところにいるのではなく、一回見てきます、が大事だと思います。自分で見てきて、その差分を埋めるか埋めないか、決めればいいと思います。そして自分の未来を考えると良いと思います。

取材の感想

取材の感想

私が今回、このインタビューを行なって驚いたことは柿花さんたちの活動が自分たちの活動に繋がっているということです。私たちがこうして「ワダイの人プロジェクト」に関われるのは、柿花さんたちが大学時代に立ち上げてくださった団体があったからこそだと思います。私も、柿花さんが立ち上げてくださったこの「ワダイの人プロジェクト」のように、自分自身が大学時代に関わったことが後輩たちのためになるようなことを、大学生活の中でやっていきたいと思いました。そして、柿花さんの話をきいていると“目標がなく感覚でやってきた”というところは今までの私と似ていて、私も“大学でこれがしたい!”と決めて入学したわけではありません。でも、大人になったときには私も今回柿花さんにインタビューさせていただいたように、自分の人生について強く語りたいし、仕事をしながら伝えたいことがはっきりできればいいなと思いました。また、自分が将来働く場所には柿花さんのような部下想いの上司がいる職場で働きたいと強く思わされました。柿花さんのアドバイスのように、外に出ることを恐れずに自分の可能性を信じて、これからの大学生活を有意義に過ごしていきたいと思います。今回はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

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