2017.03.28何をするかではなく誰とするか

長野 佳浩さん

株式会社TearsSwitch
執行役員 コンテンツマーケティング事業部長

卒業学科
和歌山大学経済学部経済学科54期卒業
企業サイト
http://tears-switch.com/ 外部リンク
取材者

取材者

福間 敬太

和歌山大学経済学部経済学科68期

━ 和歌山大学への入学のきっかけは何でしたか。

正直言うと、和歌山大学に行きたかった、というわけではないんです。高校の時にラグビーや生徒会などに打ち込んでいたので、内申点だけはよかったんですよ。学校の成績もそこそこ良かったので、和歌山大学の特別推薦を高校の先生に紹介してもらったのがきっかけでしたね。初めは、和歌山か…と思いました。大阪市内に住んでいたので、和歌山大学への通学に片道2時間かかるということもあり、近場の関西大学、近畿大学も考えました。しかし、学費が安いこともあり、母にめちゃくちゃ勧められて和歌山大学に進学しました。なので、自分からというより、たまたまタイミングが重なって進学した先が、和歌山大学でした。

━ 学生時代に打ち込んでいたことはありましたか。

クラブに打ち込んでいました。中学校、高校とラグビー部でしたが、アメフトもしてみたい気持ちがあったので大学では初めにアメフト部に入部しました。ただ、アメフト部の練習が放課後から22時まであり、朝練は8時から始まりました。通学に2時間かかるため、6時に家を出て24時半に家に帰宅する生活でした。クラブと授業以外何もできないマシーンのような生活を1年続けましたね。でも、もっと時間を有効に使って大学生活を楽しみたいと思い、2年生でアメフト部を辞め、朝練がなく練習時間の短いラグビー部に入部しました。ラグビー部は卒業まで続けました。

━ クラブをやっていてよかったと思うことがありましたら教えてください。

クラブやっていてよかったことの一つとしては、生涯の友人が多く出来たことです。大学は高校に比べて横のつながりが薄いので、友人ができにくいんですよね。でも、ラグビー部に入っていたおかげで、10年来の友人が出来たことが、クラブをやっていてよかったと思うことですね。それに当時の友人が、10年後の今ではビジネスパートナーとなり、仕事の幅を広げてくれています。あとは、根性がついたことですね。仕事がつらい時でも、踏ん張り切れる力がつきました。

━ 他に学生時代に打ち込んでいたことはありましたか。

部活動のほかには、3年生でスチューデントリンクという就職活動支援団体を立ち上げて、打ち込んでいました。スチューデントリンクの活動をはじめたきっかけは、3年生で就職活動をはじめたときに、他大学の学生と会う機会が増え、とても刺激的でした。今までの大学生活が、いかに限られた世界で生きてきたかに気づかされました。また、当時の和歌山大学経済学部生の進路が金融業に偏っており、他大学との繋がりも稀薄であったため、もっと和歌山大学生に色々な道が広がれば良いと思い、スチューデントリンクの活動をはじめました。スチューデントリンクの活動としては、大学内で自分たちが来て欲しい企業へ直接アプローチして早期に企業説明会を開いたり、就職活動の終わった4年生が就職活動の始まる3年生に対してグループワークや、直接的な面接対策を行う場をつくったりしました。それと、就職活動情報雑誌も制作し配布していましたね。このように、就職活動が終わった4年生が、就職活動が始まる3年生を支援するサイクル作りをしていました。4年生の最後にスチューデントリンクの活動が学長表彰されたのですが、表彰式の前日に前祝が盛り上がりすぎて、当日寝坊し遅刻して、壇上に立つことができずに泣いたのを覚えています(笑)

長野 佳浩さん

━ 就職活動の際、どういったことに重きを置いていましたか。

実家が卸売業として経営していたので、その経営をゆくゆくは引き継ぎたいと考えていました。当時、一般商店の経営が厳しい環境になってきていたため、企業でビジネスを学び、力をつけてから継ごうと思っていました。なので、短期間でビジネスを学ぶことができ、新人でも仕事を任せてもらえる会社を中心に就職活動を行っていました。受けた企業は大手企業より、ベンチャー、中小企業の方が多かったです。それと、大手企業に行きたくないという反骨精神もありました。

━ 大学を出てすぐに起業しようとは考えなかったのですか。

大学生のときには、アルバイトもインターンもしていなかったので、ビジネスが何なのか全くわかりませんでした。なので、まずは忙しい会社で働き、色々学びたいと考えていたので、起業という選択は全くなかったです。今でこそ、大学生の起業が珍しくなくなってきましたが、当時は大変珍しいことだったので当時は起業という発想すらなかったです。

━ 大手企業の方が、将来的には人脈が大きく広がるイメージがあるのですが、なぜあえてベンチャー企業を中心に就職活動されたのですか。

大手企業だと、研修期間などが長く、先輩の下に付く時間が長いように思っていました。一方で、ベンチャー企業だとすぐに仕事を任せてもらえるというイメージがありました。短期間での成長に重きを置いていた私は、ベンチャー企業の方が魅力的だと感じ、ベンチャー企業を中心に就職活動を行いました。短期間でビジネスを学べるのが、大企業にはない、ベンチャーや中小企業の強みだと思います。

ちなみに、自分が新卒で入社した会社は、2017年現在では東証1部上場しているので、ラッキーパンチというか、ベンチャーから大手になるまでの過程を経験できました(笑)

━ 就職活動の際、業種や職種へのこだわりはありましたか。

業種にも職種にもこだわりは一切ありませんでした。しかし、人へのこだわりがありましたね。何をするかではなく、誰と仕事をするかに重点を置いて就職活動をしていました。この考えは、ラグビーで培われたものです。

高校時代、ラグビーは弱小高校だったんですが、卒業する3年生の時に10人制で花園に出場することができました。自分が高校1年生の時は部員も少なく、スキルもない、経験もないという、ないない尽くしからのスタートでしたが、いい仲間と巡り合い成し遂げれたという経験が大きいです。

━ 人にこだわって就職活動を行ったとおっしゃられましたが、就職活動の時点でどのようにして会社の人を見ていたのですか。

会社説明会だと社員の方は誰でもいい顔をされます。なので、会社の人をみるために、内定をもらった会社は人事の方にお願いしてオフィスを見せてもらいました。なぜなら、人事の方にオフィス見せてくださいと頼んで行った時には、会社説明会の時とは違い事前の準備がないため社員さんの素の顔を見ることができるからです。実際、私はオフィスを見せてもらった時に一番反応のよかった人材派遣の会社に就職しました。

長野 佳浩さん

━ 今までに、2回転職されているとお聞きしましたが、1社目の会社について教えて頂けませんか。

1社目は人材サービスを行っているセントメディアという会社に就職しました。就職した当時は、社員が約50人、拠点が2つと、少し大きめのベンチャー企業でした。私が辞める頃には全国に約40拠点まで増えていました。8年間勤めて辞めましたが、企業の成長を肌で感じることが出来たので良い経験になりましたね。

━ 先ほど、ゆくゆくは実家の商売を継ぐためにベンチャー企業に就職されたとおっしゃられていましたが、なぜ実家の商売を継がずに8年間セントメディアに勤められたのですか。

単純に仕事が面白かったんです。会社の人が本当に面白かったんですよね。社員全員が熱くて向上心があったので、こんな良い会社を、成長途中で辞めるのはもったいないなという気持ちがありました。それに、実家の商売もたたむ方向になってきて、8年間、仕事で色々なビジネスをみてきた経験から、今さら実家の商売に手を出しても先がないことが分かっていました。なので、今の会社を成長させる方が楽しいと思い、実家の商売は継ぎませんでした。結果的には、昨年に実家の商売はたたみました。

実を言うと、会社を辞める決意を何度も固めたこともありました。それでも辞めるという意思を伝える度に、可愛がってくれていた役員の方が、「お前には、まだ早い!」と本気で止めてくれました。こんなに本気でとめてくれる会社もそうはないので、頑張ろうかなって気持ちになりましたね。結局、23歳から30歳まで8年間働きました。

━ 次に、2社目への転職のきっかけと会社について教えてください。

大学のときに一緒にスチューデントリンクを立ち上げた友人に、ベンチャー企業のイノーバというWeb会社に誘われたのが転職のきっかけでした。次に就職するならWebの会社がいいと考えていて、いいタイミングで誘ってもらえたのでセントメディアを辞めてイノーバに転職しました。イノーバは、入社当時は社員が約20人でしたが、6ヶ月後には約80人に増えていました。しかし、その1ヶ月後には約40人が解雇されました。衝撃でしたね。入社半年で、会社存続の危機を迎えました。ベンチャー企業の勢いと恐ろしさを見ましたね。

━ なぜ、次に就職するならWebの会社がいいと考えていたんですか。

大学時代にオンラインゲームに熱中していたこともあり、昔からインターネットが好きでした。なので、Webに興味があり詳しくなりたいという気持ちが強かったので、次に就職するならWeb!と決めていました。あとは、実家が商売をしていたんですが、アナログすぎる業態なので今の時代に即していないなという気持ちもありました。

営業を1社目で学んだからこそ、飛び道具ではないですが新たなスキルが欲しかったんです。なので、給料は新卒の新入社員ぐらい低かったですが、お金ではなく経験を得るためにWebの知識は全くないままイノーバに転職しました。

━ Webの知識がなくても、Web会社で働いていけるのですか。

気合いでいけますよ。お客様の信頼を得るなどのビジネスの基本は同じであるので、セントメディアでの経験も活かすことができました。違いがあるとしたら、知識がないという点でしたが、実は知識が一番スキルとして身に着けるのが簡単なんですよ。なぜなら、勉強すれば終わりですから。なので、半年間で必死にWebの知識をつけました。間違ったら自分の指を折る! 位の覚悟でしたね(笑)必死でやれば半年後には、なんとかついてけるようにはなりました。

長野 佳浩さん

━ 3社目への転職のきっかけと会社について教えてください。

実は、イノーバに転職したのと同時期に、友人のFacebookでチャンバラ合戦-戦IKUSA-という遊びをやっている団体があるのを知り、参加し始めました。やっていくうちにどんどんチャンバラの魅力に惹かれ、運営側にまわるようになりました。参加当初は活動の規模も小さく、休日を中心に活動していました。次第に規模も大きくなっていき、平日でも活動を行うようになりました。平日の活動にも参加していたのですが、イノーバを休まなければならず、申し訳なさを感じていました。そんな時、実はチャンバラ合戦-戦IKUSA-の理事長もWeb制作会社(株式会社TearsSwitch)を経営しながら二足の草鞋でやっていたので、合意して入社することになりました。

━ 何か事業を起こそうと思ったことはありましたか。

祖父が社長だったので、いつかは起業して社長になるものだと思っていたので、何度か本当に起業をしようとしました。しかし、色々と仕事をしていく中でチャンバラと出会い、今では、1から何か事業を始めるよりもチャンバラを大きくしたいという気持ちが強いです。今は、チャンバラ以上のものはないと思っています。

━ 今後のキャリアビジョンを教えてください。

TearsSwitchはWebとチャンバラ、オンラインとオフラインの180度違うビジネスを行っている会社です。チャンバラ合戦-戦IKUSA-を日本全国の市町村に取り入れてもらい、子どもに日本の古き良き文化に触れてもらい、成長してほしいと思っています。チャンバラは誰にでも出来る参加型のコンテンツとして、地域活性化の可能性があると思っています。地域活性化は、多くの場合、国や地域の補助金を財源にしているため、市長などが変われば補助金が減らされる可能性があります。それにより、長期的なプランを組むことができません。なので、補助金をもらわずに、一つの事業として確立できているチャンバラ事業は、長期的なプランを組むことが出来るという強みがあります。

自分が夢中になれるチャンバラ事業に一生懸命取り組んでいれば、報酬や役職は後からついてくると考えているので、今はチャンバラ事業Web業に全力を注ごうと思っています。

━ 社会はどんな人材を求めていると思いますか。

機械的な作業しかできない人は、もう社会に求められなくなってきていると感じます。なので、決まった作業が出来ることは重要ではなく、既存のものを組み合わせ、新しいアイデアを形成出来ることが重要だと思います。1つ事に専門的に特化した人よりも、マルチに動け、柔軟に対応出来る人が評価される時代になると思っています。

長野 佳浩さん

━ 長野さんの強みは何ですか。

人を巻き込む力ですね。自分が何かをやりたいと思った時に、周りの人を巻き込んで形にし、最終的に上手く着地できるところですね。グチャグチャでも、最終的に着地する力は誰にも負けないです。何とかする力・着地力には自信があります。

━ 上手く着地するコツはありますか。

責任感を持つことです。物事を自分事化して、他責にならずに自分の責任だと思い定めることです。気持ちの持ちようで、その後の行動が大きく変わります。そうすれば、滅茶苦茶な失敗はしないと思います。

━ お薦めの書籍があれば教えてください。

北方謙三の三国志です。いろんなビジネス書がありますが、正直いうと、読んだビジネス書で覚えているのは、1ページぐらいです。北方謙三の三国志は、男としての生き方を学べるので生きるということに影響を与えてくれた一冊であり、バイブルになっています。

━ 最後に、大学生のうちにしておくと良いと思うことは何ですか。

大学4年間を通じて、自分がやりたいことをやり続けることが重要だと思います。ただ、4年間を通じて好きなことだけをするのとはまた違います。例えば、「サッカーが好きなのでヨーロッパまでサッカー見に行きました」はチャレンジではなくて、単に好きなことの延長線上です。やったことがなく、自分のためになるようなことにチャレンジすることが大切だと思います。

取材の感想

取材の感想

私は今回の取材を通して、転職への価値感と仕事を選ぶ際の視点が変わりました。今までは転職に対して、諦めや逃げといったようなマイナスなイメージがありましたが、今回長野さんのキャリアを取材させていただき、転職はスキルアップの一つの手段であると感じました。そのため、転職することにむやみに臆病になる必要もなく、現代では転職が当たり前になってきているように思います。

取材前には、先のキャリアを考え、業種、職種へのこだわりが強かったです。しかし、長野さんの仕事への姿勢や仕事の選び方をお聞きし、自分が心から楽しめる仕事ができるのであれば、業種、職種は関係ないと感じました。また、業種を初めから絞ってしまうことは視野を狭めてしまうことになりかねないと感じました。どんな仕事をしていても、自分次第で先の道は開かれるのだと実感しました。

長野さんにアドバイスを頂いたように、残りの大学3年間で何かに全力でチャレンジしていこうと思います。

今回は、貴重なお時間をとって頂きありがとうございました。

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