2017.03.28やるからには誰よりも楽しむ

大久保 昌恵さん

株式会社ファースト マーケティング協力5部 係長

卒業学科
和歌山大学経済学部市場環境学科55期卒業
企業サイト
http://www.the-first.co.jp/ 外部リンク
取材者

取材者

平井 未来

和歌山大学経済学部経済学科68期

━ 高校時代について教えてください。

高校時代はバレーボール部に所属していました。何か大会で大きな成績を残したというわけではないのですが、体育が大好きでした。そこから、体育のおもしろさや体を動かすことの楽しさを伝える仕事がしたくて、体育の教師を目指していました。

━ 和歌山大学に入学したきっかけを教えてください。

本当は違う大学を目指して浪人していました。しかし、センター試験の結果から志望校を変えることになり、受けられる大学を探しているときに、自宅から通える和歌山大学を見つけて。実際には住んだことはないのですが、私の本籍地が和歌山だったこともあり、縁を感じて受けることになりました。教師を目指していたので、経済学部は考えたこともありませんでした。

━ 学生時代に力を入れていたことを教えてください。

三つあります。

一つ目はアルバイトです。ベーカリーカフェや、大学で英語の先生のTA(ティーチングアシスタント)をしていましたね。TAは先生に声をかけていただいて始めました。先生の研究室で新聞の整理をしていました。このとき、同じTAをされていた先輩の紹介で、胃がんの研究をされている先生の秘書もしていました。「血液を運んでください」と言われて、森之宮から和歌山まで運んでいました。ちょっと特殊なアルバイトですよね。

いくつかアルバイトをした中でも、海遊館のミュージアムショップでのアルバイトが印象に残っています。あるとき、「キャンドルを好きに陳列していいよ」と言われ、初めは何も考えずに並べていたのですが、気付くとブルーだけがとても売れていたのです。不思議に思って少し場所を変えてみると、今度は売れなくなりました。色々と調べて、消費者心理に辿り着きました。そこからマーケティングに興味を持ちはじめ、大学の授業を履修して、自分でも勉強して販売士の資格も取得しました。これは今の仕事にも繋がっていますね。

二つ目はゼミ活動です。足立ゼミの活動の中で、ぶらくり町でオープンカフェをやっていました。ゼミとは関係ない一般のお客様と関わる中で、イベントの面白さに気付きました。今の仕事でも、イベントの企画・運営もするので良い経験になっています。

三つ目が卒業論文です。大阪市の観光と大阪市を流れる川をテーマにしていました。実際に住んでいる人と観光客と川の捉え方や意識の違いを調べようと、なんばやグランド花月前などの街頭に一人で立って、アンケートをとっていました。いきなり声をかけるから怪しまれたりもしましたね。なかなか数は集まらなかったのですが、中には一時間話してくれるおばあちゃんもいたんですよ。調査っておもしろいなと思いました。今の仕事の中でも調査をするので、とても勉強になりました。

すべて今に繋がっていますね。

━ 就職活動について教えてください。

はじめはどの業界に行けばよいのか全くわからず、ノートに説明会の日程を書き出して、手当たり次第に知っている会社を受けていました。ちゃんと考えずに受けていたので、やはり志望理由が薄くて落ち続けていました。どの会社を受けても通らなかった時に、キャリアデザインオフィスの本庄先生にエントリーシートの書き方のアドバイスをいただき、そこからは書類も通るようになりました。

このままじゃいけないと思い、最終的に自分が何をやりたいのかを考えるようになりました。やっぱり人を喜ばせる仕事がしたい、と思うようになりましたね。そんな時にファーストの会社のホームページをたまたま見つけて説明会に参加しました。

もとから広告志望ではなかったです。足立先生が「広告の仕事っておもしろいよ」とおっしゃっていたこともあり、なんだか楽しそうという印象は持っていました。

同じ業界でも、会社によって雰囲気が全然違いますが、弊社は人と人の距離が近いです。面接のときも緊張していましたが、面接官が大阪の商人!という感じのとてもフレンドリーな方でびっくりしたのを覚えています。同じ日に旅行会社の内定もいただいたのですが、即決でファーストにしました。

大久保 昌恵さん

━ 今携わっている仕事について教えてください。

セールスプロモーション(売り場づくりやキャンペーン、イベント、消費者調査など)を中心にマーケティングの仕事をしています。社内にデザイナーもいるので、デザインから弊社でやっています。要するに何でも屋さんみたいな感じですね。他にもお客様に配るノベルティを作ったり、お客様が対象ではなく、販売員の方のモチベーションアップのためのインナーキャンペーンを行ったりもします。メーカーさんから新商品が出たときに、家電量販店に置いてもらうための商品についての冊子も弊社で作ることもありますね。

什器(店舗などにおいて商品などを陳列・設置・掲示するための器材)を作った時で言うと、プランナーが新商品の商談用の資料を作成し、まず商品を深く理解します。その次にデザイナーが図面をひいた上で試作を進めていきます。他社商品との違いも頭に入れて、差別化を図れるようなものを目指します。店頭に置くのでお客様が危なくないように強度も考え、実際作っている工程も自分の目で見て、何度も試行錯誤した上で完成したものが売り場に置かれています。

基本的にはチームワークで仕事を推進していきます。図面をひくデザイナーや企画書が書けるプランナーがいて成り立つので、私ひとりではできない仕事だなと思います。

雑誌を見て研究したり、誰かになりきって話してみたり、楽しみながら企画やデザイナーとアイデアを出していきます。お菓子を食べながら自由な雰囲気で話していると、案外いいアイデアが生まれるんですよ。見積作成はお金が関わるので、パソコンと向き合って集中します。メリハリも大切ですね。

最近は空調関係のメーカーさんと、海外向けのポップを作っています。これは今一番やっていて楽しい仕事ですね。ずっと国内向けの仕事だったので、海外に目を向けたこともなくて、文化を知らないことも多くて勉強中です。中国・台湾・タイ・インドなどに向けて作っているのですが、文字に苦戦しています。タイ語が全く分からず、文字校正のときにデザイナーと、「ペンギンに似た文字で改行してください」なんて言っています。

━ お仕事は、直接会社に依頼がくるのですか?

メーカーさんから直接声を掛けていただくこともありますが、コンペティションといって他社と競って契約を勝ち取らなければならないことも多いです。コンペは、メーカーさんが何かを作るときに、何社かに声が掛かって、それぞれプレゼンをして、最終的にいい案の会社が採用されるという感じです。コンペに通らないと、見積りや企画など作ってきたものが水の泡になってしまいます。シビアな世界ですよね。メーカーさん側のお悩みやご要望を聞いて提案し、さまざまなものを一緒に作っています。

大久保 昌恵さん

━ 社会人10年の間に転機はありますか?

がらっと変わったのは4年目ですね。それまではずっと先輩の下で仕事をしていて、商談も同行してメモを取るだけという感じでした。その先輩が退職し、私がメイン担当をすることになり、「自分がやらなきゃいけない」と気合が入って、独り立ちできましたね。5、6年目も、目標にしていたコンペが全部取れて、モチベーションが上がりました。

逆に、何を提案しても通らなくて、コンペに落ち続けていたときもありました。仕事に入り込みすぎてしまっていて、消費者の視点を忘れてしまっていたんだと思います。このときクライアントさんからは「安定感はあるけれど、目新しさがない」と言われてしまいました。この仕事向いていないのかな、辞めようかな、と思うこともありました。ですが、これを乗り越えて強くなれました。

モチベーションも仕事の出来で変わってきますね。上手くいかないときはやっぱり落ち込みます。そんなときは、仲良しの同僚たちと遊んだり、旅行をしたりして、気分転換をしています。

━ 11年目に向けてなにか目標はありますか?

毎年、自分の中で目標を立てています。今までしたことのない仕事をしたいと思っていています。メーカーさんの希望を形にすることが多いのですが、こちらからも提案もできるようにしています。

━ 普段の生活のなかで、仕事に繋がっていることはありますか?

一般のお客様に見ていただくものを多く作っているので、消費者の気持ちを持ち続けるためにも、休みの日は仕事を忘れて遊ぶようにしています。買い物に行ったときには、こんな商品ほしいな、こういう売り場いいな、と思って色々と見ています。

━ 働きはじめて感じたギャップを教えてください。

働き始めるまで、毎日定時に帰れると思っていました。今日は映画を観て帰ろう!なんてウキウキしていたのですが、現実はそう甘くなくて…。守らなければならない納期があるので、定時に帰れないことが多く、驚きました。

社会人は学生と違って、自分の時間を作るのが難しいです。学生の頃から、時間ができると資格の勉強をしたくなるタイプなのですが、今は時間がなくてあまりできていません。何か新しいことを身に付けよう、勉強しよう、と思うと寝る時間を削るしかないんですよね。それでも、化粧品会社さんとの案件がきっかけで、パーソナルカラーについて勉強したり、色彩検定を受けたりと、頑張って勉強する時間を作っています。試験の申し込みをした後に、やめておけばよかったなんて後悔することもありますが、やると決めたことはやりきろうと頑張っています。

大久保 昌恵さん

━ 大久保さんにとって、人に負けない・負けたくない自分の強みを教えてください。

同じ仕事をするんだったら楽しまないと!と思うので、誰よりも楽しみたいと思っています。やると決めたら最後までやり抜く気持ちだけは負けたくないですね。

会社なので、やりたいことの希望が必ず通るわけでもなく、適性なども見て全く違うチームに入れられることもありますし、全く知らない分野の仕事もしなければならないです。当初、空調関係のメーカーさんの担当は希望ではなかったのですが、やっているうちに楽しくなってきて、普段あまり行かない家電量販店に行くようになって、こういうポップある!なんて面白くなってきて。はじめは思ってもいなかったところに入っても、やっているうちに楽しくなってくるところは、大学に入学したときと同じかもしれないですね。

━ おすすめの本を教えてください。

取り立ててこれというものはないのですが、今まで読んでよかったと思っているのは、効率のよい段取りの仕方について書いている本ですね。今の仕事が複数のものを同時に進めなければならず、はじめは上手くいかなくて苦戦していたんです。それで、何冊か読んで自分にあった上手な段取りを探しました。仕事は効率や段取りがとても重要で、社会人になる前に身につけておきたかったなと思っているので、今のうちに身に付けておく方がよいと思います。

━ 最後に学生に向けてアドバイスをお願いいたします。

学生のうちにしかできないことを楽しんでほしいです。社会人になると連休がなかなか取れないですし、休みの日や旅行中に仕事の電話が入ることもあります。時間のある大学生のうちに色々なところに行っておくことをおすすめします。

あとは、もっと勉強しておけばよかったと思っていますね。大学生は時間に余裕があるというのが一番の強みだと思います。勉強できる時間も楽しんでほしいです。旅行もおすすめです。

取材の感想

取材の感想

お話を伺う前から広告の仕事に興味があったのですが、仕事内容については漠然としたイメージしか持っていませんでした。ですが今回の取材で、インターネットや本では得られない実際の現場のお話を伺うことができ、より広告の仕事に惹かれるようになりました。

大久保さんの楽しそうに仕事について話す姿がとても印象に残っています。取材前は、希望の業種に就くこと、やりがいのある仕事ができることが一番だと思っていました。しかし、興味のなかったところからでも、おもしろさややりがいを見つけ、仕事を楽しむという姿勢や、大学進学や就職活動中のお話を伺う中で、少し考えが変わりました。今いる場所に不満を抱くのではなく、どう良くしていくか、自分なりに楽しむ方法はないかと考えながら過ごすことが大切だと思いました。

大久保さんのアドバイスにもあったように、限られた大学生活を有意義に過ごせるよう、何事にも挑戦していきたいと思います。

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