1背景と目的
日本は台風や地震など,自然災害が多い国です. そのため,避難訓練やハザードマップの配布など,地域住民を対象とした防災対策が数多く行われてきました. しかし,外国人観光客を対象とした防災対策はあまりありません. 近年,日本へ訪れる外国人観光客の数は増えており,今後も増加が見込まれることから,外国人観光客を対象とした防災対策も必要です.
外国人観光客は,日本で災害が発生した際に,何が起きたのかを理解できない可能性があり,日本語がわからない場合,情報の入手も困難であると考えられます. そこで,「防災知識提供システム」を開発しました.
本システムでは,災害時にどのような行動をとればいいのか,といった防災知識を,クイズと漫画で楽しく学習できます. 平常時に本システムを利用することで,災害時に的確かつ迅速な対応をとれるようになることを目指します.
2システム構成
本システムは,スマートフォン用のアプリケーションです.
図1にシステム構成を示します.まず,クイズが出題され(図1①),ユーザが解答します(図1②). そして,解答結果をサーバに保存し(図1③),そのデータから正解率の算出を行い可視化します(図1④). 最後に,クイズの解説を漫画表現で行います(図1⑤).
図1. システム構成 |
---|
3システム利用画面
図2にシステムの利用画面を示します. ユーザはクイズに解答し,漫画による解説を閲覧することで防災知識を学習します. その過程で,本システムでは,以下に示す4つの画面を遷移します.
図2. システム利用画面 |
---|
(1) 災害一覧の画面
この画面では,日本でよく発生する災害の一覧をイラストで表しています. アニメーションのあるイラストにまとめることで,イラストをタップしたくなることを想定しています. それぞれのイラストをタップすると,その災害に即したクイズが出題されます.
(2) クイズの画面
災害のイラストをタップすると,ポップアップ・ウィンドウでクイズが出題されます. クイズは,各々の災害に対する防災知識を問うものです. クイズの形式は二択クイズであり,一方が正解の画像,残りが不正解の画像です. 図2のクイズは,台風の防災知識に関するクイズです.
(3) 正否判定の画面
クイズの解答結果を「Excellent!!」「Mistake!!」の文字だけでなく, イラストからも確認できます. また,クイズの正解率(自分が解答したクイズに何人が正解したか)を円グラフで閲覧できます. 正解率の可視化で競争心を持ってもらい,モチベーションの向上を図ります. さらに,「Learn by comics」をタップすると,漫画による解説の画面に遷移します.
(4) 漫画の画面
解答したクイズの解説を漫画で閲覧できます. 図2の漫画の内容は台風のクイズに対応したものであり,台風の時に避難してはいけない場所および避難するべき場所について説明しています.
4現在支援している災害
現在支援している災害は,図3に示す「台風」「火山」「地震」「大雪」「津波」の5つです.
図3. 災害一覧 |
---|
5デモムービー
システム利用中の画面遷移の様子です. 台風→火山→大雪→地震→津波の順番に見ていきます.
発表
- 志垣沙灯子,吉野孝,永井隼人,佐野楓,ブレント・リッチー: 漫画表現とクイズを用いた外国人観光客向け防災知識提供システムの開発,電子情報通信学会 信学技報IEICE Technical Report AI2017-36,pp.7--12(2018-02).
- 志垣沙灯子,吉野孝,永井隼人,佐野楓,ブレント・リッチー: 漫画表現とクイズを用いた外国人観光客向け防災知識提供システムの提案,情報処理学会第80回全国大会,3ZC-02,第4分冊,pp.577-578(2018-03).
連絡先
- 志垣 沙灯子:s195028 at center.wakayama-u.ac.jp
- 吉野 孝:yoshino at sys.wakayama-u.ac.jp