背景と目的

観光客が観光中に被災した場合,土地勘がなく避難するべき場所がわからない,などの要因から被害が大きくなる可能性が高いです. そのため,観光客を対象とした防災支援システムが必要だと考えられます.

しかし,観光客の防災意識を調査した研究によると,観光前に防災情報を自発的に調べ,災害に備えている人が少ないことが分かります. そのため防災に対する関心が低い観光客にも利用してもらえるように防災システムを設計する必要があります.

そこで本研究では「防災情報にさらす」というコンセプトで防災システム(Di-sarasu)を開発しています. 現在は,このコンセプトの実現例として閲覧しているWebページに含まれる観光地付近の防災情報を吹き出しで表示しています. 本研究の目的は,防災に対する関心が低い観光客に防災情報を提供することです.

Di-sarasuのシステム構成

Di-sarasuは,Google Chromeの拡張機能です. 図1にDi-sarasuのシステム構成を示します.  

  1. ユーザがWebで観光情報を検索
  2. 閲覧しているWebテキストを取得し,観光地の情報を管理するサーバに送信
  3. Webページに含まれる観光地名をサーバから取得
  4. Webページに含まれる観光地名を避難場所の情報を管理するサーバに送信
  5. 観光地周辺の避難場所の情報をサーバから取得
  6. 取得した情報をもとに防災情報を作成し,観光情報に付加してユーザに提供
外国人観光客向けに英語で表記されている観光地に対しては,英語で防災情報を付加してユーザに提供します.

システム構成
図1. システム構成

提供する防災情報

Di-sarasuを適用した状態だと,ユーザは観光情報の検索を行うだけで防災情報を受動的に取得することができます.

Di-sarasuがユーザに提供する防災情報は以下の5つです.

(1) 避難場所の名称

観光地から最も近い避難場所の名称を表示します.

(2) 避難場所までの距離

観光地から避難場所までの距離を,緯度・経度から計算して表示します.

(3) 予想される災害

目的地付近で発生する可能性が高い災害を表示します.

(4) 災害に関する知識

「避難場所は災害発生時に,自分の身を守るために避難する場所のことです」などの,災害に関する言葉の意味や,「揺れがおさまっても,余震や火災には気を付けましょう」などの,災害発生時に取るべき行動などを表示します.

(5) 避難場所の位置と避難経路

目的地から最も近い避難場所の位置と,その避難場所までの経路をGoogle Mapを用いて表示します.


図2に提供する防災情報の例を示します.
画面構成
図2. 提供する防災情報の例

デモムービー

システムを利用しているムービーです.

発表

  1. 坂本真輝, 吉野孝, 永井隼人, 佐野楓, ブレント・リッチー :経路検索結果に応じた外国人観光客向けの防災情報提供手法の開発, 電子情報通信学会異文化コラボレーション研究会,AI2017-39,pp.25-30(2018-02).
  2. 坂本真輝, 吉野孝, 永井隼人, 佐野楓, ブレント・リッチー :外国人観光客を対象とした経路検索結果に基づく防災情報提供手法の提案, 情報処理学会第80回全国大会,5W-08,第3分冊,pp.525-526(2018-03).
  3. 坂本真輝, 吉野孝, 永井隼人, 佐野楓, ブレント・リッチー :観光客を対象としたWeb閲覧時に防災情報にさらされるシステムの開発, 情報処理学会関西支部支部大会,C-14,pp.1-3(2018-09).
  4. 坂本真輝, 吉野孝, 永井隼人, 佐野楓, ブレント・リッチー :観光客を対象としたWeb閲覧時に防災情報にさらすシステムの評価,GN Workshop2018論文集,pp.1-6(2018-11).
  5. 坂本真輝, 吉野孝, 永井隼人, 佐野楓, ブレント・リッチー :観光客向けのWeb閲覧時に防災情報にさらされるシステムの開発,和歌山大学災害科学教育研究センター研究報告 ,第3巻,pp.1-8(2019-03).

連絡先

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