背景と目的
毎年,数多くの外国人観光客が日本を訪れており,その数は2012年以降増加し続けています. しかし,日本は数多くの外国人観光客が訪れる国であると同時に,地震や台風などの自然災害が発生しやすい国でもあります.そのため,外国人観光客を対象とした防災支援システムが必要だと考えられます.
しかし,自治体が実施した外国人を対象としたアンケート調査の結果によると,外国人は災害に対する危機意識が低いことが分かります.そのため防災に対する関心が低い外国人観光客にも利用してもらえるように防災システムを設計する必要があります.
そこで本研究では「防災情報にさらされる」というコンセプトで防災システム(Di-sarasu)を開発しています. 現在は,このコンセプトの実現例として経路検索の結果に対応する防災情報を自動で表示しています. 本研究の目的は,防災に対する関心が低い外国人観光客に防災情報を提供することです.
Di-sarasuのシステム構成
Di-sarasuは,「Japan Transit Planner」という外国人観光客向けの経路検索を行うWebサイトで動作するGoogle Chromeの拡張機能です. 図1にDi-sarasuのシステム構成を示します.
- ユーザが目的地までの経路を検索
- Di-sarasuが目的地名を取得し,避難場所の情報が管理されているサーバに送信
- 目的地付近の避難場所の情報を取得
- 取得した情報をもとに防災情報を作成し,経路検索の結果に付加してユーザに提供
図1. システム構成 |
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提供する防災情報
Di-sarasuを適用した状態だと,ユーザは経路検索を行うだけで防災情報を受動的に取得することができます. Di-sarasuがユーザに提供する防災情報は以下の4つです.
(1) 避難場所までの距離
目的地から避難場所までの距離を,緯度・経度から計算して表示します.
(2) 予想される災害
目的地付近で発生する可能性が高い災害を表示します.
(3) 災害に関する知識
「避難場所は災害発生時に,自分の身を守るために避難する場所のことです」などの,災害に関する言葉の意味や,「揺れがおさまっても,余震や火災には気を付けましょう」などの,災害発生時に取るべき行動などを表示します.
(4) 避難場所の位置と避難経路
目的地から最も近い避難場所の位置と,その避難場所までの経路を表示します.
図2に提供する防災情報の例を示します.
図2. 提供する防災情報の例 |
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デモムービー
システムを利用しているムービーです.
発表
- 坂本真輝, 吉野孝, 永井隼人, 佐野楓, ブレント・リッチー :経路検索結果に応じた外国人観光客向けの防災情報提供手法の開発, 電子情報通信学会異文化コラボレーション研究会,AI2017-39,pp.25-30(2018-02).
- 坂本真輝, 吉野孝, 永井隼人, 佐野楓, ブレント・リッチー :外国人観光客を対象とした経路検索結果に基づく防災情報提供手法の提案, 情報処理学会第80回全国大会,5W-08,第3分冊,pp.525-526(2018-03).
連絡先
- 坂本 真輝:s206104 at center.wakayama-u.ac.jp
- 吉野 孝:yoshino at sys.wakayama-u.ac.jp