1 背景と目的

現在,在日外国人数が年々増加しており,日本国内における多言語コミュニケーションの機会が増加しています.また,医療などの高精度なコミュニケーションが要求される分野では,多言語コミュニケーションの支援不足による様々な問題が指摘されています. 特に入院患者については24時間体制で通訳に対応する必要がありますが,医療通訳者が24時間体制で対応することは困難となっています.

そこで本研究では,入院場面における,医療従事者と患者間の高精度な多言語コミュニケーションの支援を行うために,機械翻訳と用例対訳を併用した多言語医療受付支援システムの開発を行っています.

2 ぷち通

ぷち通は,医療従事者と患者による入院生活での多言語対話を支援します.本システムは図1のように構成されます.

ぷち通は,正確性の求められる会話には用例対訳,日常会話には機械翻訳を利用することで,広い範囲の会話に対応します.

AnnoChat2の画面
図1. ぷち通の構成

3 主要機能

(1) 音声翻訳機能

話した言葉を相手の言語へ翻訳し,音声とテキストで伝える機能です.

AnnoChat2の画面
図2. 音声翻訳機能の画面

(2) 場面検索機能

場面検索機能は,対話場面の選択によって用例対訳を絞り込む機能です. クリック操作のみで用例対訳を検索することができるため,文を入力する手間を省くことができます.

AnnoChat2の画面
図3. 場面検索機能の画面

(3) お気に入り登録機能

お気に入り登録機能は,頻繁に使用する翻訳文を携帯端末内に保存し, 2 回目以降に素早く使用できるようにする機能です.

AnnoChat2の画面
図4. お気に入り登録機能の画面

(4) 応答機能

応答機能は,選択された翻訳結果を対話相手に提示した際に,相手から応答してもらうための機能です.

応答機能の画面
図5. 応答機能の画面

(5) 不足用例対訳自動リクエスト機能

不足用例対訳自動リクエスト機能は,自分の伝えたい内容の用例対訳が存在しない場合に, 用例対訳作成のリクエストを自動的にTackPad[1]へと送信する機能である. リクエストによって作成された用例対訳は,Web上の用例対訳データベースへ登録され,ぷち通で使用できるようになります.

AnnoChat2の画面
図6. 不足用例対訳自動リクエスト機能の構成図

口頭発表

  1. 尾崎俊,松延拓生,吉野孝,重野亜久里:携帯型多言語間医療対話支援システムの開発と評価,電子情報通信学会異文化コラボレーション研究会(2011).
  2. 尾崎俊,松延拓生,吉野孝,重野亜久里:携帯端末を用いた多言語間医療対話支援システムの開発,第73 回情報処理学会全国大会.
  3. 尾崎俊,川島基子,松延拓生,吉野孝:ユーザビリティに配慮した携帯型多言語医療対話支援システムの設計,平成22 年度日本人間工学会関西支部大会講演論文集,pp.223-226(2010).

参考文献

  1. 福島拓,宮部真衣,吉野孝,重野亜久里:医療分野を対象とした多言語用例対訳収集WebシステムTackPadの開発, マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム,pp.1030-1036(2008).

謝辞

本研究の一部は,総務省戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)の平成22年度採択課題 「医療現場における利用者適応型多言語間コミュニケーション支援のための基盤技術の研究開発」の補助を受けています.

連絡先

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