1背景と目的
現在,文部科学省は教育の情報化を推奨していますが,実際には小学校のICT環境は不十分です.配備されているコンピュータは扱いが困難であり,授業では有効活用されておりません. それに加えて,小学校における児童の生活習慣の乱れが問題となっています.学校で実施されている健康診断だけでは対応出来ていません.
そこで本研究では,児童一人一人にiPod touchを持たせた学習環境を提案します.児童の学力の向上,及び健康を支援することを目的としています.
2児童の学習及び健康支援システムの構築
本システムでは児童に携帯情報端末iPod touchを持たせ,児童の学習と健康情報の収集を支援します.本システムの構成図を以下の図1に示します.児童が持つiPod touch内には,本システム専用のアプリケーション「iGenki」が導入されています.このiGenkiを用いて学習を行うと,その学習情報がサーバに集められます.健康情報を入力するとその情報もサーバに収集されます.収集された情報は教員及び保護者が確認して,児童への教育や健康支援に活用することができます.教員はiGenkiで使うための教材を,自分で作ってサーバに送る事できます.
図1. システムの構成図 |
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3iGenkiで行える学習
iGenkiでは,「宿題」「クイズ」「デジタル教材」の3種類の教材を使って学習を行うことが出来ます.iGenkiで学習すると,その学習情報がサーバに収集されます.
(1) 「宿題」
「宿題」は,締め切りが設けられた問題群で,従来の紙による宿題をiGenki上で再現したものです.問題形式は,以下の2通りがあります.
- 「音声問題」: 用意された音声に関する5択問題
- 「手書き問題」: 解答をタッチ操作で書いて行う問題
図2は,手書き問題の解答の様子です.
図2. 「手書き問題」のデモムービー |
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(2) 「クイズ」
「クイズ」は,「合格条件」が設けられた問題群です.「合格条件」とは,「クイズ」によって学習成果が満足に得られたかどうかを判断するためのものです.「クイズ」の問題形式は以下の2通りがあります.
- 「○×問題」: 真偽で解答する2択問題
- 「和歌山クイズ」: 和歌山の名物に関する説明を見ながら問題に答える5択問題
(3) 「デジタル教材」
「デジタル教材」は,児童が小学校で教わる知識や技術について説明する教材です.授業中や家での自主学習などで,教科書のように利用してもらうことを目的としています.図3は「デジタル教材」を使用している様子です.
図3. 「デジタル教材」のデモムービー |
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4iGenkiで行える健康情報入力
iGenkiでは,「睡眠」「食事」「体重」に関する情報を入力することが出来ます.児童が入力した健康情報はサーバへ収集されます.
(1) 「睡眠情報入力」
図3は睡眠情報の入力画面です.毎日の起床時間,及び就寝時間を入力します.教員や保護者は児童が夜更かしをしていないか,十分な睡眠を得られているかなどを確認できます.
図3. 睡眠情報入力画面 |
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(2) 「食事情報入力」
図4は食事情報の入力画面です.毎日の朝食,昼食,間食を入力します.児童がバランスの良い食事を摂っているか,間食を摂り過ぎていないかなどを確認できます.
図4. 食事情報入力画面 |
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(3) 「体重情報入力」
図5は体重情報の入力画面です.毎日の体重を入力します.教員や保護者は児童の肥満度の確認や,体重の推移などを確認することができます.
図5. 体重情報入力画面 |
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参考文献・発表
- 長田 伊織,東 拓央,吉野 孝:携帯情報端末iPod touchを用いた児童の自主学習支援システムの開発,情報処理学会第72回全国大会,第4分冊,pp.601-602 (2010-3).
- 東 拓央,長田 伊織,吉野 孝:携帯情報端末iPod touchを用いた児童の健康支援システムの開発,情報処理学会第72回全国大会,第4分冊,pp.221-212 (2010-3).
連絡先
- 長田 伊織:s125010 at sys.wakayama-u.ac.jp
- 東 拓央:s125045 at sys.wakayama-u.ac.jp
- 吉野 孝:yoshino at sys.wakayama-u.ac.jp
本研究は,株式会社サイバーリンクスの「和歌山市子ども元気アップ大作戦」の一環として行われています.