１背景と目的

現在，WeblogやSNSなどの，ユーザ同士が情報を発信・共有することでコミュニケーションを行うソーシャルメディアの利用者数が増加傾向にあります[1]． しかし，「情報を発信するための負担が大きいこと」「閲覧者からのフィードバックが少ないこと」から，利用を継続できないユーザが問題視されています[2]． また，近年ライフログ分野の研究が活発に行われています．ライフログとは日々の生活をデジタルデータとして保存することです．

そこで本研究では，ライフログを用いることでソーシャルメディアにおける負担の軽減とコミュニケーションの支援を目指します．"BlogWear"は，日々記録したライフログデータをもとにブログ記事を自動で生成します．

２BlogWearの概要

BlogWearは，iPhoneを用いてライフログを行い，取得したライフログデータをもとにブログ記事を自動生成するシステムです．本システムは，図1のように構成されます．BlogWearは，ライフログデータの取得および記事情報の生成，送信を行うiPhoneと，記事情報の記録および表示を行うサーバ，そして閲覧者に通知を行うライフストリームサービスで構成されています．

システムの構成
図1. システムの構成図

３BlogWearの記事投稿について

(1)iPhone上の処理

まず，記事作成者はiPhoneでBlogWear用アプリケーションを起動します． そして，iPhoneで今から行う行動について文章を入力し，記事投稿を開始します． 記事投稿を開始したあとは，記事作成者がiPhoneを身につけて行動します（図2）． iPhoneはカメラを用いて周辺画像を，GPSを用いて現在地情報を取得します． これらの情報と，あらかじめ記録前に入力した文章を使用して記事情報を生成し，サーバへ送信します．

iPhoneの装着例
図2. iPhoneの装着例

(2)サーバ上の処理

サーバでは，iPhoneから送信された記事情報をデータベースに登録します． 登録された記事情報は，記事としてWebページに公開されます（図3）． Webページでは記事作成者が「何をしているのか」「どこにいるのか」を知ることができます． なお，このWebページはログイン方式を用いており，記事作成者の友人のみが閲覧できるようになっています．

BlogWearの記事一覧の例
図3. BlogWearの記事一覧の例

(3)行動通知の処理

BlogWearでは，Webサイトの記事に対する利用者のアクションを知らせるために，「行動通知」を利用者へ配信します． 行動通知はライフストリームサービスサービスを通じて閲覧者に配信されます(図4)． ライフストリームサービスにはTwitterを利用しています． 閲覧者は行動通知を確認することで，BlogWearにおけるブログの更新や注目されている記事などを知ることができます．

行動通知の例
図4. 行動通知の例

４BlogWearの使用イメージ

図5. BlogWearの使用イメージ

参考文献

  1. インプレスR&D インターネットメディア総合研究所：インターネット白書2012，インプレスジャパン(2012).
  2. 総務省：情報通信政策研究所調べ: 平成19年度ブログの実態に関する調査研究，http://www.soumu.go.jp/iicp/chousakenkyu/seika/houkoku.html（2012年8月24日確認）．

口頭発表

  1. 長田伊織，吉野 孝：iPhoneを用いたライフログ収集システムの開発とライフストリームサービスへの応用，FIT2010 情報科学技術フォーラム，第3分冊，pp.289-290（2010-09）．
  2. 長田伊織，吉野 孝：ライフログ収集システムにおける閲覧者向け情報提供手法の評価，電子情報通信学会技術報告，ライフインテリジェンスとオフィス情報システム研究会，Vol.110, No.282, LOIS2010-41, pp.87-94（2010-11）．
  3. 長田伊織，吉野 孝：ライフログとライフストリームサービスの連携によるコミュニケーション手法の提案と実現，マルチメディア，分散，協調とモバイルシンポジウム（DICOMO2011），pp.1444-1552（2011-07）．
  4. 長田伊織，吉野 孝：ライフログシステムにおけるライフストリームサービスの影響と閲覧者の行動分析，平成23年度情報処理学会関西支部大会（2011-09）．
  5. 長田伊織，吉野 孝：ライフログ公開システムにおける閲覧者の興味を喚起するライフログデータの特徴，グループウェアとネットワークサービスワークショップ2011（GNWS2011）（2011-11）．
  6. Proposal and Evaluation of User’s Actions Distribution Method using Life Streaming Service on Lifelog System, the Eighth International Symposium on Frontiers of Information Systems and Network Applications (FINA-2012)(2012-03).

連絡先

研究紹介のページに戻る