1はじめに

2010 年までに訪日外国人旅行者1,000万人を目指すビジットジャパンキャンペーンなど,国外からの旅行者獲得に向けた様々な事業が広く展開されています.これにより,日本を訪れる外国人旅行者の数は年々増加傾向にあります.

現在,訪日外国人旅行者の日本での活動を支援する団体や施設はあるものの,対応できる場所や人員が限られており,外国人旅行者の要求にその場で対処することは困難だと考えられます.また,言語の壁も外国人旅行者支援において大きな問題となっています.

本研究では,機械翻訳等を利用して,外国人旅行者の旅行活動を支援することを研究のテーマとしています.

2システムの設計方針

(1) 地域住民による外国人旅行者支援

外国人旅行者の抱く疑問や要求は多岐にわたるため,旅行者を支援する人には幅広い知識が要求されます.そこで,旅行者が訪れている地域の住民による回答が最も望ましいと考えました.地域住民は,母国に関する一般常識だけでなく,その地域独自の知識も持ち合わせているため,旅行者の多様な疑問や要求にも柔軟に対応できると考えられます.

(2) 機械翻訳の利用

本システムで送受信されるメッセージは,言語グリッドを介して,機械翻訳の対応している言語に翻訳されます.これにより,ユーザの利用言語に応じた情報提供が可能となるだけでなく,旅行者と地域住民がお互いの母国語でコミュニケーションが図れるようになります.

3Travo

Travoは,TravoMobileならびにTravoSNSの2つのサブシステムから構成されています.図1はTravoのシステム構成図です.2つのサブシステムを各旅行段階に応じて適用することで,外国人旅行者の一貫した支援が実現でき,従来にはないサービスの提供が実現できると考えています.

Travoの構成図
図1. Travoの構成図

3.1 TravoMobile

TravoMobileは,旅行中の旅行者の疑問や要求に対して,携帯端末を利用し,インターネットを通じてその場で回答を求めるシステムです.画像情報ならびに位置情報,GoogleEarthを利用することで,旅行者と地域住民間で送受信される情報の補足を行っています.図2はTravoMobileの利用例です.携帯端末から送信された質問はGoogleEarth上で共有することができます.

TravoMobileの実行画面
図2. TravoMobileの利用例

3.2 TravoSNS

TravoSNSは,旅行前の情報収集ならびに旅行後の情報共有を支援するための多言語SNSです.旅行前の情報収集に関しては,Q&A機能で支援しており,旅行後の情報共有に関しては,日記機能やコミュニティ機能により支援しています.また,地域住民による外国人旅行者支援を促進するための機能として,支援ポイントの付与や支援状況のランキング表示などを行っています.図3はTravoSNSの実行画面です.TravoMobileはSNSのコアエンジンとしてOpenPNEを利用しています.

TravoSNSの実行画面
図3. TravoSNSの実行画面(中国語)

口答発表

  1. 長野 優一朗, 吉野孝: 地理情報システムGoogleEarthを用いた外国人旅行者向け地域情報共有システム, 電子通信情報処理学会技術研究報告, Vol.106, No.339, pp.13-18, 2006.
  2. 長野 優一朗, 吉野孝: 外国人旅行者向け観光地情報収集システムiTravelEの開発, DICOMO2007, pp.371-377, 2007.
  3. 長野 優一朗, 吉野孝: TravoSNS: 外国人旅行者のための地域住民参加型多言語SNS, 情報処理学会第70回全国大会, 6ZE-5, 2008.

連絡先

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