1 背景と目的
チャットや電子メールのようなPCを用いた遠隔間コミュニケーションツールは私たちの生活に深く浸透していますが, 現在普及しているツールは文字や記号を用いたものが多く, 身振り手振りのようなコミュニケーション時における身体情報(非言語情報)を伝えることが難しいという問題点があります.
このような非言語情報は,コミュニケーション時における相手からのメッセージの隠された情報(心理状態や感情)に 気付くためのアウェアネス情報として,重要な役割を持つと考えられます.
そこで当研究では,日常会話で自然とおこなわれる相槌のような首振りに着目し, 首振り情報を付与することで,PCにおける遠隔間コミュニケーションがどのように変化するのかをテーマとして研究を行っています.
2 AwareCap
AwareCap(アウェアキャップ)とは,ユーザの首振り動作を加速度センサ付き帽子によって検出し, 検出した情報を首振りアバタに反映することで,お互いの首振りの様子を伝達し合うチャットシステムです(図1).
図1. 首振り伝達の流れ |
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表1.図1中の番号に沿った首振り伝達の仕組み |
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①帽子の加速度センサより値を取得 |
②データ転送部で整理したセンサ値をPCへ送信 |
③システム内で動作判定し,自分のアバタに反映 |
④自分の動作やアバタの情報をサーバへ送信 |
⑤相手側ウインドウに表示されている自分のアバタを更新 |
3 AwareCapの発展型新システム
旧システムのAwareCap(アウェアキャップ)の延長・発展型として,以下の要素を組み込んだ新システムを開発中です.
- 帽子といったオプションを付けずに,ユーザの動作を取得する
- 画面を越えて,実空間上の触れる実物でフィードバックを行う
これらの要素を取り入れるため,Webカメラによる画像認識と USB接続の動く小型人形を利用したシステムを考案し, その実現に向けて日々開発を進めています(図2)
図2. 新システムの情報伝達の流れ |
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表2.図2中の番号に沿ったシステムの流れ |
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①カメラでユーザの動作映像を取得 |
②取得映像をPCへ送り解析・動作検出 |
③検出した動作をサーバ経由で相手側へ |
④サーバからの動作情報をUSB人形へ |
⑤USB人形が相手の動作を再現 |
4 新システムの構成
(1) Webカメラによる頭部動作認識
Webカメラで撮影した動画像から,ユーザの頭部の動きをリアルタイムで取得して,動作検出を行います(図3). システム起動時の初期座標(図3中,赤枠)を記憶し,現在の座標(図3中,緑枠)との間の差異を求めて検出します.
(2) USB人形によるユーザ動作の投影
上記のWebカメラによる動作認識で検出されたユーザの頭部の動きに応じて,USB人形がアクションを行うことで,相手の様子を伝達します. USB人形については,「体振り」「羽ばたき」「数種のランプ点灯」といった各種アクションとその組み合わせが可能な 「i-BUDDY」を採用しています(図4).
図3. Webカメラによる自動顔認識 | 図4. USB人形「i-BUDDY」 |
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5 関連情報・連絡先
口頭発表
- 森田大介,吉野孝: AwareCap: キャラクタによる首振り伝達システム, 情報処理学会第70回全国大会講演論文集(4),pp.285-286,(2008).
連絡先
- 森田 大介:s095057 at sys.wakayama-u.ac.jp
- 吉野 孝:yoshino at sys.wakayama-u.ac.jp