1 背景と目的

日本は少子高齢化が進み,年々高齢化率が上昇しています.高齢化に伴い,日常生活に介護を必要とする要介護認定者数も増加傾向にあります.介護が必要となる主な原因としては,脳卒中や認知症,転倒による骨折などがあげられます.寝たきりの期間が長期間つづくと,身体機能が低下していきます.このように,自力では起立できない患者の循環器機能が低下すると,患者の体重計測時に起立性低血圧などが生じる恐れがあります.起立性低血圧とは,循環器機能に負担がかかることにより,意識障害などを引き起こす症状です.このように起立困難な患者にとって,自身の栄養状態を把握するうえで必須となる体重を計測することは非常に大きな負担となります.また,起立困難な患者の体重計測を行うには,患者をベッドスケールや車いす式体重計へ移乗する必要があるため,複数の人手が必要となり,医療従事者にとっての負担が大きいという問題もあります.

そこで,本研究では,起立困難者の体重計測をより簡便に行う手法として,画像を用いた体重推定手法を提案します.

2 システム構成

本システムは,身体部位長より体重推定を行うことができる体重推定式を利用し,画像から取得した身体部位長を基に体重推定を行う簡易的な体重推定システムです.図1にシステム構成を示します.

(1) ベッドの寸法入力・画像の撮影

ベッドの寸法をシステムに入力した後,画像の撮影を行います.この時,撮影時に二つの条件を設けました.

  • ベッドの四隅が画像内に収まるように撮影する
  • 患者をできるだけ真上から撮影する
  • (2) 画像アップロード・部位長選択

    画像をサーバにアップロードし,画像内のベッド端四点と,身体部位長となる画像上の2点を選択する.

    この時得られた身体部位長(幅径)より,各部位の周囲長を推定する.

    (3) 幅径から周囲長の推定

    (2)の手順から得られた各部位長を体重推定式へと代入し,推定体重値を表示します.

  • 患者の性別・年齢により適用する体重推定式を変更
  • システムの構成図
    図1.システム構成図

    3 体重推定式に利用する身体部位

    体重推定式により必要となる身体部位は異なり,本システムで使用する身体部位長を図2に示します.

    図2中にある身体部位のうち,周囲長である,上腕周囲長・腹囲・下腿周囲長は,画像から得られた幅径をもとに周囲長を推定する.体重推定式は,対象者の性別・年齢に応じた体重推定式を利用する必要があるため,本システムでは,対象者の性別・年齢を使用する.

    システムの構成図
    図2.体重推定式に利用する身体部位

    4 システムの利用イメージ

    本システムの利用イメージ図を図3に示します.

    看護師が撮影した患者の画像をもとに,体重推定式を利用して体重推定を行います.

    システムの利用イメージ図
    図3.システムの利用イメージ図

    発表

    1. 田中 希和,吉野 孝,横山 剛志,永坂 和子:起立困難な患者を対象とする画像を用いた簡便な体重推定手法の提案,情報処理学会,第82回全国大会講演論文集第4分冊,4ZE-02,pp.441-442(2020-03).
    2. 田中 希和,吉野 孝,横山 剛志,永坂 和子:起立困難な患者を対象とする画像を用いた体重推定手法の改善,情報処理学会,アクセシビリティ研究会, pp.1-6(2020-03).

    連絡先

    研究紹介のページに戻る