背景と目的

近年,SNSやTwitterなどをはじめとするマイクロブログサービスが普及しており, ネットワーク上でのコミュニケーションが活性化しています. しかし,手軽な情報取得・発信が可能となっている一方, 誰もが情報の信頼性を正しく判断できるとは限らず, 流言(十分な根拠がなく,その真偽が人々に疑われている情報)の拡散が起こっています. 流言の拡散は,ユーザ間の適切な情報共有を妨げます.特に災害時などでは,深刻な問題を引き起こす可能性があり, 流言の拡散防止が必要です.

本研究では,流言拡散防止のための,情報確認行動促進システムを構築しました. 本システムは,情報拡散前のユーザに対し,流言に関する気づきを与え,情報の真偽確認行動を促進するシステムです.

Twitterにおける情報拡散行動に関する調査

流言が拡散する原因の一つとして,情報発信前の真偽確認不足が考えられます.そこで, Twitterにおいてリツイート機能を利用する際, ツイート内容の真偽をユーザが確認しているかどうかを調査しました. 調査対象は10代〜50代のTwitterユーザ108人です.真偽確認を行っている人の割合を図1に示します.

ツイートの発信者との親しさに関わらず,真偽確認を行っている人の割合は0.4を下回っています. このことから,Twitterにおける情報拡散時,情報の真偽を確認している人の割合が低いことがわかりました. 悪意のないユーザでも真偽確認を行わず情報を拡散することで,流言を拡散してしまう恐れがあることが考えられます.

真偽確認を行う人の割合
図1. 真偽確認を行う人の割合

情報確認行動促進システム

流言拡散防止のためには,情報拡散前にユーザが流言に気づくことが必要です. 本研究では,情報拡散前のユーザが閲覧している情報に,流言が含まれていることに関する気づきを与え, 確認行動を促進するシステムを開発しました.

(1) 流言の自動判定とテキストの強調表示

システムの構成を図2に示します. 本システムは,ユーザが閲覧中のWebページに流言が含まれる可能性があるかどうかを自動で判別します. 流言が含まれる可能性があると判別された場合は,該当箇所の強調表示を行い, 情報拡散前のユーザに流言が存在することに関する気づきを与えます. 流言の判別には既存の流言情報収集システムを用いました. また,本システムはWebブラウザであるGoogle Chromeの拡張機能として開発しました. これにより,ユーザは本システムを一度インストールしておけば, 能動的に利用せずとも流言に関する情報を取得することができます.

システム構成
図2. システム構成

(2) 吹き出しによる情報提供

強調表示された箇所をマウスオーバーすることで, その内容に関連する情報を含む吹き出しを表示させることができます. 吹き出しには以下の情報が含まれています.

・流言情報:判定された流言の情報

・訂正情報:流言情報に関する訂正ツイート

・訂正数:訂正情報の数

・Web検索:判定された流言情報における名詞をクエリとしたWeb検索ページへのリンク

・詳細リンク:これまでの訂正数と直近一週間の訂正数の推移を表すグラフを確認できるページへのリンク

テキストの強調表示によって流言の存在に関して気づいたユーザに対し, 吹き出し表示による情報提示を行うことで,真偽確認行動を促進します.

吹き出し表示
図3. 吹き出しによる情報提供

デモムービー

参考文献・発表

  1. 柿本大輔, 荒牧英治, 宮部真衣: 流言拡散防止のための情報確認行動促進システムの提案, 第15回情報科学技術フォーラム講演論文集, No.2, pp.107-108(2016).
  2. 柿本大輔, 荒牧英治, 宮部真衣: 流言拡散防止のための情報確認行動促進システムの開発, 電子情報通信学会技術研究報告, Vol.116, No.488, pp.141-146(2017).
  3. 柿本大輔, 宮部真衣, 荒牧英治, 吉野孝: 流言情報に気づきを与えるためのインタフェースの検討, 2017年度 情報処理学会関西支部 支部大会, 講演論文集, B-05, pp.1-5(2017).
  4. 柿本大輔, 宮部真衣, 荒牧英治, 吉野孝: 流言に関する気づきを提供するシステムの開発, 日本災害情報学会 第19回学会大会, 予稿集, P27, pp.246-247(2017)
  5. 柿本大輔, 宮部真衣, 荒牧英治, 吉野孝: 流言拡散防止のための情報確認行動促進システムの構築, ヒューマンインタフェース学会論文誌, Vol.20, No.1, pp.1-12(2018).

連絡先

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