背景と目的
現在,日本は観光立国を目指して観光業に注力しており,より一層のインバウンド対策が求められます.しかしながら日本は災害大国でもあり,観光において大きな障害となっています. また,訪日外国人が日本での被災時に求められた情報としては,災害の大まかな状況を把握したいといったものが多くを占めており,これらは現地の人々がマイクロブログの投稿などで知る事が可能な情報です.
そこで本研究では「マイクロブログの投稿から災害状況を分析する」というコンセプトで災害状況把握支援システム(D-SAT)を開発しています. 現在は,本システムを運用するにあたってツイートから災害状況を分類する精度を調査しています.本研究の目的は,マイクロブログの投稿から各地の災害状況を分析し,訪日外国人に向けて提示することです.
本システム構成
本システムはWebサービスとして構築しています.図1にシステム構成を示します.
まず,サーバ側が定期実行する動作は,
- 災害に関連するツイートを収集
- 形態素解析によってツイート位置推定
- ツイート文を地名や固有の災害名を省いて分かち書きし,分類器のfastTextで学習
- fastTextを用いて各ツイートを分類して,各地の災害状況を推定
- 各地の災害状況を記録・保持
- ユーザがシステムに災害状況をリクエスト
- ユーザの現在地情報を取得
- ユーザの現在地に基づいて,災害状況を提示
また災害状況とともに,災害状況を推定するのに利用したツイートを翻訳して一覧表示しています.
図1. システム構成 |
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提供する災害情報
本システムを利用することで得られる情報は以下の4つです.
(1) 周辺の災害状況
日本政府の策定した警戒レベルに基づいて推定された災害状況を提示します.
(2) 現在いる日本の都道府県・市町村区
訪日外国人にとって把握が難しい都道府県・市町村区を提示します.
(3) 推定に利用されたツイート
各地域で災害状況の推定に利用されたツイートを翻訳して一覧表示します.
(4) 公的機関の訪日外国人向けサイトへのリンク
より詳細な情報を得たい方のために,日本の公的機関によって作成された訪日外国人向けサイトへのリンクを提示します.
図2に提供する情報の例を示します.
(a)はシステムの開始画面です.中央の「災害状況リクエストボタン」を押すことで,ユーザの位置情報を取得してそれに応じた災害状況を提示します.
(b)は災害状況提示画面です.中央に「周辺の災害状況」を,その下部にユーザが「現在いる都道府県・市町村区」を提示します.
(c)は(b)のフッター部です.「推定に利用されたツイート」および「公的機関の訪日外国人向けサイトへのリンク」を提示します.
図2. 提供する防災情報の例 |
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発表
- 林央也, 吉野孝 :訪日外国人のためのマイクロブログを用いた災害状況把握支援システムの提案, 情報処理学会第82回全国大会, 6ZA-03(2020-03).
連絡先
- 林 央也:s226207 at wakayama-u.ac.jp
- 吉野 孝:yoshino at wakayama-u.ac.jp