1背景と目的

近年,無料でビデオチャットを行えるサービスが普及してきています.しかし,ビデオチャットには相手との距離感を感じてしまうという問題点があります.本研究では,この問題点を解決するためにドア型の専用インタフェースを用いたビデオチャットシステム“ドアコムZ”を開発しました.

「相手の空間に侵入している感覚」を与えるため,ビデオチャットにおいて遠隔空間における物に対する接触と 三次元的な移動が表現可能な仕組みを提案します.

2ドアコムZの概要

ドアコムZは遠隔2地点でビデオチャットを行うシステムです.図1に本システムの構成を示します.ドア操作側のユーザは,ドアを顔の前に掲げてドアを開き,その中からディスプレイを覗くようにして会話をします.両側のディスプレイには,ドア無し側の部屋の映像にドア操作側のドアとドアの内側がオーバラップして表示されます.これにより,ドア操作側とドア無し側の空間がドアによって繋がっているような映像となります.

図1. システムの構成

3提案手法

  • 1.三次元移動表現のための重畳表示手法とは空間における位置関係に基づく重畳表示を行う手法です.Kinectにより深度情報を取得します.深度情報を用いて,使用者や周辺物体の前後関係や前後への移動を認識.前後関係を考慮した重畳表示を行います.

  • 2.重畳表示の仕組み
  • 図2(a)におけるd1はKinectと使用者の距離,図2(b)におけるd2はKinectとドアの距離を表しています.

    ・d1>d2の場合

     ドアによって切り取られたドア操作側の映像はドアなし側の使用者の前面に表示されます(図2(c)).

    ・d1<d2の場合

     ドアによって切り取られたドア操作側の映像はドアなし側の使用者の背面に表示されます(図2(d)).

    図2. 重畳表示の仕組み

  • 3.実際に空間に侵入しているのであれば,指差しだけでなく,その空間にある物に対する接触と移動を行うことが可能です.Kinectにより取得可能な深度情報と骨格情報を用いることによって,「遠隔空間内の物を掴む」や「遠隔空間内の物を動かす」といった表現を実現します.
  • 4デモムービー

  • 1.三次元的な移動表現
  • 2.遠隔空間における物に対する接触
  • 口頭発表

    1. 濱上 宏樹,宮部 真衣,吉野 孝: 部分重畳表示型ビデオチャットにおける三次元インタラクション手法の提案, 情報処理学会第77回全国大会,1ZA-03,第4分冊,pp.251-252(2015-03)
    2. 濱上 宏樹,宮部 真衣,吉野 孝: 遠隔空間内の三次元的移動を表現する: 深度情報を用いた部分重畳表示型ビデオチャットの提案,情報処理学会,インタラクション2015論文集,pp.526-529(2015-03).
    3. 濵上 宏樹, 宮部 真衣, 吉野 孝:部分重畳型ビデオチャットにおける被侵入感の検証,情報 処理学会,関西支部大会,G–11,pp.1–2 (2015-09).
    4. 濵上 宏樹, 宮部 真衣, 吉野 孝:ドアコム Z:遠隔空間内の物に対する接触と三次元的な移動 が表現可能なビデオチャット, 情報処理学会, インタラクション 2016, デモ展示 3B39 (2016-03).

    連絡先

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