1背景と目的
1996年に文化庁,通商産業省(当時),自治省(当時)が中心となり,日本における「デジタルアーカイブ」が開始しました.しかし,2009年に国立国会図書館によるアンケート調査では,文化・学術機関4,302機関の26.6%がデジタルアーカイブを実施・運営していると回答し,11.1%が計画中と回答しています.つまり,回答のあった機関のうち約60%は,デジタルアーカイブの作成を実施・運営しておらず計画もされていません.ただ単にデータを収集し,閲覧可能にするだけでは,デジタルアーカイブの収集や利活用は促進されません.そこで本研究では,教育や観光利用を想定した,パノラマ画像を用いたコンテンツ作成支援システム「フォトリート」を開発しました.
本研究ではシステム利用者にもコンテンツの作成に参加してもらいます.本システムの目的は,デジタルアーカイブに収蔵されているデータをコンテンツとして公開し,利用者に閲覧してもらうとともにデジタルアーカイブの付加データとなりえるデータを利用者から収集することです.
2パノラマ画像を用いたコンテンツ作成支援システム フォトリート
フォトリートは,Webブラウザ上で動作するアプリケーションです.本システムの開発には,HTML5.0とJavaScript,PHP5を用いています.保存されたパノラマ画像を閲覧し,自由にアノテーションを付けることができます.アノテーションとは,注釈として付与されたデータのことを指します.アノテーションによってパノラマ画像に何が撮影されているか,それがどういったものなのかがわかりやすくなります.付与したアノテーションは他人も見ることができます.
図1. アノテーションが付けられたパノラマ画像の一部 |
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3システムの特徴
フォトリートの主な機能は下記です.
(1) 閲覧機能
パノラマVRを用いて,パノラマ画像を撮影された場所に訪れた時の視点で閲覧します.操作はスクロールで行います.
(2) アノテーション追加機能
本機能では,閲覧しているパノラマ画像にアノテーションを追加できます.追加できるアノテーションは3種類で,撮影されたものへの好感を示す「いいね」,撮影されたものへの疑問を示す「これなに」,自由記述の「コメント」です.操作はダブルクリックで行います.
図2. 追加できるアノテーションの種類 |
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(3) アノテーション表示機能
表示されるアノテーションによってパノラマ画像内の情報を得ることが可能になります.表示されるアノテーションは,追加できるアノテーションと同じく「いいね」「これなに」「コメント」の3種類です.操作はマウスオーバーで行います.
4デモムービー
参考文献・発表
- 藤原 佑歌子,吉野 孝: 教育や観光利用を目的としたパノラマ画像を用いたコンテンツ作成支援システムの開発, 情報処理学会第76回全国大会,2ZB-6,第4分冊,pp.199-200(2014-03).
連絡先
- 藤原 佑歌子:s155041 at sys.wakayama-u.ac.jp
- 吉野 孝:yoshino at sys.wakayama-u.ac.jp