高品質なみかんを大量・安定生産・販売するための
「見せる化」「見る化」技術の開発と有田地域調査

背景

 和歌山県は,日本一のみかん産地であるが,ここでも価格低迷による農家所得の不安定さ,高齢化や後継者不足等が大きな課題になっている.これらの問題を解決するために,複数の農家が資金と農地を出し合って,高品質なみかんを栽培し,収穫,加工,販売する会社組織のみかん農園を運営するという試み[1] がある.この会社では,独自の栽培技術を開発し,高品質なみかんを安定して生産することで,みかんの超高級ブランド化に成功し,一定の成果を上げている.しかし,後継者不足の問題は未だに解決されていない.そこで,未だに残ったこれらの問題を解決するために,農業のICT 化という取組がいくつかなされている.それらの取組では,熟練者のノウハウをデータベース化し圃場の状態に合わせて適切な作業指示をするシステムを構築する試みや,ICT 利活用による栽培の効率化を図る試みなどがなされている.

従来法の問題点

 現状では,葉のしおれ具合や樹勢と呼ばれる果樹に勢いがあるかどうかを示す直感的な指標を熟練者が見て判断している.また,これ以外にも,高品質なみかんを収穫するために様々なノウハウが存在する.これまでのICTシステムにおいて生育状態を記録しているが,生育状態を全て手書きで記録している.

提案する解決策

本研究では,ICT を駆使して,みかん栽培におけるノウハウを定量化・モデル化して,高度な知識が必要とされる作業を新規就農者でも行えるようなICTシステムを構築して,高品質なみかんを安定して収穫できるようにすることを主な目的とする.

を開発・試作する.

現在までの研究成果の概要

 本研究では,高品質なみかんを栽培・収穫するために,複数種類の計測装置から構成されるセンサシステムを構築し,栽培環境情報(土壌水分,温度,照度,植物の外観や3次元形状)を収集して,水やり,肥料やり,摘果のタイミングや剪定,摘果の場所を自動診断する試作システムを開発している.また,また,みかんの生産量と気象の過去の事例を統計的に分析することにより,日照・温度・雨量・台風・干ばつ・対策を入力として,みかんの生産量を推定するモデルを作成した.さらに,農家の所得向上,新規栽培者の参入・定着,新たな商品開発と販売チャンネルの拡大を目指して実施されている和歌山県の柑橘作物農業の6次産業化について調査研究を行った.

試作中のシステムの例




みかんの木の3次元計測システム




みかんの木の生育状態観測システム




みかん販売に関するモデル化



栽培ノウハウの情報提示システム

応用事例

などの分野にも応用が可能.

発表文献

  1. 中村 恭之:”高品質なみかん栽培のためのセンシングシステムの開発,”
    ロボティクス・メカトロニクス講演会‘14(発表予定),2014.
  2. 上野美咲,足立基浩:中心市街地再生における都市農業の可能性― 7 次産業化の時代 ―
    和歌山大学経済学部紀要2014年3月号
  3. 上野美咲:耕作放棄農地に対する処方箋〜農地の最適ポートフォリオに関する一考察〜
    和歌山大学経済学部紀要2014年6月号(発表予定)
  4. 上野美咲,足立基浩,佐藤直樹:中心市街地再生におけるプロジェクトマネジメント -リピーター率向上を基軸としたリスク管理-
    プロジェクトマネジメント学会2014年度春季研究発表大会
  5. 大西敏夫:ゆずが育む地域産業の形成−「古座川ゆず平井の里」(高橋信正著
    『「農」の付加価値を高める六次産業化の実践』筑波書房,2013.12,第7章所収)
  6. 山根絵美・藤田武弘「地域農業の新たな継承方法に関する考察−和歌山県有田
    市宮原町「株式会社早和果樹園」を事例に(日本農業市場学会・大会個別報告,
    2013.7,新潟大学)

研究指導

 本研究に興味があり,情報交換・共同研究を試みたい方は,中村 (ntakayuk@sys.wakayama-u.ac.jp)までメールで御連絡下さい.