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【開催レポート】【10月16日】第116回浪切サロン”ホントはすごい「通信技術」”

2019/09/30

 【開催レポート】


和歌山大学協働教育センター教授で、千葉工業大学惑星探査研究センター主席研究員、内閣府宇宙開発戦略推進事務局宇宙政策委員会専門委員の秋山演亮先生に講演いただいた。

・宇宙開発と人材について

 現在秋山先生指導の下、大学院生ともにロケット発射などの共同実験を行われているのですが、単に実験を行うのではなく、共同実験を通じて発射に伴う地元や企業との調整を行わせることで、人材育成を行うのが狙いであるとのこと。

こうしたロケットの発射など、ともすれば日本では危ないことをやってはいけないとしがちである。だが重要なのは「危ないことをあぶないままやってはいけない」ということである。

秋山先生は山口県萩の松下村塾を例にとり江戸時代という平和な成長期の終わりには、維新の志士のような動乱期を生き抜く人材が生まれた。現在もまた右肩上がりの成長期ではない。今の時代もまたそういった人材=「危ないことをするが、それは危ないままやってはいけない」とする人材が必要ではないかと指摘されました。

はやぶさ2号機においても、すでに初号機の発射以前の段階から計画はあったが、なかなかゴーサインが出なかった。初号機はまだバブル経済の余韻がありゴーサインが出たが、2号機は不況期にあったため、成功が見込めないような事業はするなというようなことであった。

初号機が見事地球帰還を成し遂げたため、計画が前進したが、このように「成功が見込めないことをするな」=「危ないことをするな」ということではなく「危ないことを危ないままやってはけない」とするべきだろう。

・はやぶさとはやぶさ2

 さて、はやぶさ2号機の「通信技術」だが、初号機のアンテナはパラボラ(放射型)型であった。
今回の2号機は見てのとおりフラット型である。
これは初号機当時から通信技術が進んでいる証拠である。従来は電波を集めるために放射型が必要であったが、現在はフラット型が多い。
このタイプのアンテナはフェイズドアレイ型といい、最近ではイージス艦や気象レーダーにも採用されている。
パラボラ型アンテナは物理的に向きを変えて発信してくる電波に向けて方向を変える必要がある。
一方このフェイズドアレイ型では、複数の微小なアンテナが集合したもので、パラボラ型のように物理的に向きを変えるのではなく、その複数の受信するアンテナを少しづつ時間を変えることで電波を受信するものである。
そのためフラットのまま様々な方向の電波受信を効率よく行える。

この技術は電波望遠鏡にも応用され、チリのアタカマ山のアルマ電波望遠鏡が、日本の電波望遠鏡と連動し巨大な口径の電波望遠鏡を作ることで、ブラックホールの観測などにも利用されている。

これは漫画「宇宙兄弟」の作中に出てくる月面上の電波望遠鏡「シャロン天文台」のお話につながっている。

・新しい通信技術LoRaについて

 秋山先生は、ロケットだけでなく地上数十キロ上に飛翔する高高度気球の実験を行われている。現在日本を離れモンゴルの草原において行ってる。気球は放擲された後高度30㎞上で破裂しパラシュートで落下するようになっている。落下した観測機器は草原上で回収しているが、モンゴルの遊牧民が拾って持って行ってしまうケースもある。
ただその場合でも場所は追跡できる技術がこちらにはある。それが今から紹介する新しい通信技術LoRaである。

 現在紀伊半島において風水害により河川がせき止められることにより水位が上昇し、災害が発生している。その水位測定に様々な機器が用いられているが、紀伊山中の電波の届きにくいところが多く、一般の携帯電話回線では困難であるため、衛星携帯電話を活用した通信が行われている。

しかしこれから衛星の回線使用料も高額であり、通信用発電機の燃料も消費量が多く、たびたび山中にヘリで燃料を運搬せざるを得ないというデメリットがある。
また設置後の災害でその機器自体が壊されることもあり、費用対効果を考えると厳しい。

 そこでLPWA技術(Low Power=省電力、Wide Area=広域エリア)の一種であるLoRaを使うと非常に低コストかつ省電力で一台で8キロ半径の通信が可能になる。
電力消費量が少ないため単三電池2個で数か月で運用ができ、基板も学生でも製作できる簡易なものである。
一方LaRaを組み合わせると600㎞離れた地点でも受信することができる。
また最近ではこれを衛星に乗せ運用範囲を広げる手法も検討されている、衛星に搭載する場合でも従来の通信衛星よりはるかに低コストで軌道に挙げることができる。

こうした技術を応用すると前述した防災、例えば避難所での人数確認や農業その他に応用でき、可能性は非常に大きい。

 秋山先生が取り組まれているハイブリッドロケットと気球の打ち上げについての話や、技術の担い手の育成の課題、日本の構造的な課題などの話題は多岐に渡ったが、参加者からは「たいへん興味深い」や「面白かった」という声が聞かれました。

 

【参加者 53名】

【参加者の声(アンケートより)】

・通信技術の凄さを知られたことがよかった。

・通信技術の進歩で宇宙の観測が進んだり、防災が進むということが学べた。たいへん興味深かった。

・日本が抱える構造的問題や課題にまで亘る話があって面白かった。


 はやぶさ2は地球から遙か彼方、3億kmも離れた場所(光の速さでも30分以上かかる距離!)で活躍していますが、我々はその様子を動画で見ることも出来ます。これらを可能にしているのが、搭載された高度な通信機機です。はやぶさ2に限らず、現在我々の身の回りの豊かな生活を支えているのも、高度に発展した通信技術がベースとなっている事を御存知でしょうか?

本講演では「はやぶさ2」の活躍を紹介すると同時に、惑星探査のみならず身近なIoT分野でもこれからますます活躍する「通信技術」にスポットを当てて、解説を行います。

日時 2019年10月16日(水)19:00~20:30

場所 岸和田市立浪切ホール1階多目的ホール

問合せ先 和歌山大学岸和田サテライト 

     岸和田市港緑町1-1浪切ホール2F

     TEL FAX 072-433-0975

                  E-mail kishiwadastaff@ml.wakayama-u.ac.jp

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